+概要
ゾルファガール戦車は、それまでイラン軍が装備していた旧ソ連製のT-54/T-55中戦車や、アメリカ製のM60戦車が旧式化したため、その後継としてイランが初めて国産開発したMBT(主力戦車)である。
なお「ゾルファガール」(Zolfaghar)という呼称は、イスラム教シーア派の初代指導者である、アリー・イブン・アビー=ターリブが使ったという剣「ズルフィカール」に因む。
本車の存在が公表されたのは1994年のことで、1996年に試作車が完成し、1997年から量産に移行したとされている。
しかし、性能諸元等の詳細は未だに公表されていない。
イランは1993〜95年にかけて、ロシアとポーランドからT-72戦車シリーズを約200両購入しており、現在はT-72B戦車の輸出仕様である、T-72S戦車のライセンス生産も行なっている。
このためゾルファガール戦車には、T-72戦車のコンポーネントが一部流用されているものと思われる。
ただし車体、砲塔共に角張った溶接構造が採用されており、鋳造砲塔を持つT-72戦車とはかなり印象が異なる。
ゾルファガール戦車の車内レイアウトはごく一般的なもので、車体前部が操縦室、車体中央部が全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室、車体後部が機関室となっている。
主砲は、初期の試作車ではM60戦車と同様に、アメリカのウォーターヴリート工廠製の51口径105mmライフル砲M68を装備していたが、生産型ではT-72戦車と同様の51口径125mm滑腔砲2A46に換装されており、T-72戦車と同じく自動装填装置を装備していると思われる。
そのため装填手は搭乗せず、砲塔は2名用で砲塔内右側に車長、左側に砲手が位置しているようである。
なお、主砲の同軸機関銃は装備されていない模様である。
イラン側の発表によると、FCS(射撃統制装置)にはレーザー測遠機が含まれており、砲安定装置も装備されているという。
エンジンは、T-72戦車と同じV-46系の出力1,000hpのディーゼル・エンジンが搭載されており、車体後面にはエンジンの排気管と思われる2個の丸い開口部が見える。
サスペンションは一般的なトーションバー(捩り棒)方式で、転輪を含むパーツはM60戦車のものと良く似ている。
路上最大速度は70km/hとされており、機動力は高い。
イラン側の発表によると、ゾルファガール戦車の戦闘重量は40tとされており、これが本当だとすると、装甲防御力はT-72S戦車よりも大きく劣る可能性があり、戦後第3世代MBTのレベルには達していないと思われる。
ただし、40tというのは初期の生産車の戦闘重量であり、後期生産車では52tに増加しているという。
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