+構造
VFW II対空自走砲の車台はパンター戦車のコンポーネントが多く用いられており、足周りの構造も同様であった。
転輪は片側8個の大直径転輪をオーバーラップ(挟み込み)方式に配置しており、前方に起動輪、後方にやや小直径の誘導輪を配していた。
サスペンションはトーションバー(捩り棒)方式で、2本のトーションバーを束ねて用いる「ダブルトーションバー」という新しい方式を採用していた。
パワープラントは、当初の設計案ではレオパルト軽戦車のものを流用することになっていたため、マイバッハ社製のHL157P V型12気筒液冷ガソリン・エンジン(出力550hp)と、ZF社製のAK7-120変速機(前進7段/後進1段)を組み合わせていたが、後にパンター戦車用のパワープラントを用いるよう設計変更されたため、マイバッハ社製のHL230P30
V型12気筒液冷ガソリン・エンジン(出力700hp)と、ZF社製のAK7-200変速機(前進7段/後進1段)の組み合わせに変わっている。
当初の設計案ではVFW II対空自走砲の車体上面はフラットになっており、中央に8.8cm高射砲を剥き出しの状態で搭載していた。
主砲の前方には牽引型からそのまま流用した大型防盾が取り付けられ、主砲の左右と後方は起倒式の装甲板で囲まれてオープントップの箱型戦闘室を構成した。
戦闘時には、左右と後方の起倒式装甲板を水平に展開して射撃を行うようになっており、起倒式装甲板は砲操作員の射撃プラットフォームとして用いるようになっていた。
しかし1944年初めに製作された木製モックアップでは、VFW II対空自走砲の設計は大幅に変更されていた。
このモックアップでは車体上面はフラットではなく、前方の操縦室と後方の機関室が一段上に張り出しており、その間に8.8cm高射砲FlaK41を搭載するオープントップ式の大型砲塔を配していた。
この砲塔は装甲板を複雑に組み合わせた独特のもので、前方から見ると算盤球のような形状になっていたが、これは砲塔内容積を確保しながら、砲塔リング径をなるべく小さくするように考慮した結果だと思われる。
砲塔は全周旋回が可能で、主砲の俯仰角は0~+90度となっていた。
主砲に採用された74口径8.8cm高射砲FlaK41は、ラインメタル社が「ゲレート37」(37兵器機材)の試作呼称で1941年に開発したもので、最大射高14,700m、最大射程19,800m、発射速度22~25発/分となっていた。
使用弾種は対航空機用の時限信管付榴弾(砲口初速1,000m/秒)と、対戦車用の徹甲弾(砲口初速980m/秒)が用意されていた。
徹甲弾を使用した場合は射距離1,000mで192mm厚のRHA(均質圧延装甲板)を貫徹可能であり、対戦車砲としても絶大な威力を発揮した。
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