フランスの装輪式装甲車のメーカーとしてGIAT社、ルノー社に次ぐパナール社の製品の中でも、一番種類も生産数も多いのがVBL装甲車のファミリーである。 ちなみにVBLとは、”Véhicule Blindé Léger”(軽装甲車両)の頭文字を採ったものである。 フランス陸軍がVBL装甲車の仕様を提示したのは1978年のことで、偵察や情報収集と、ミラン対戦車ミサイルを搭載する戦車駆逐車の双方の役割を務められる、重量3.5t以下の装輪式装甲車という内容だった。 VBL装甲車の要求に対しては5社が入札し、パナール社とルノー社との間で競争試作を行った結果、1985年2月にパナール社の案が選ばれた。 VBL装甲車の先行生産型15両は1988年に納入されたが、その前にすでにレバノン派遣部隊での実戦試験が行われている。 生産型のフランス陸軍への納入は1990年末に始まり、小柄な割に多用途に使用できる優れた特徴から、今日までにフランスを始めとする15カ国向けに1,400両余りが生産され、今も各種の派生・改良型の開発と生産が続いている。 フランス陸軍向けの最終的な生産数は、1,585両になると思われる。 VBL装甲車は装甲ジープ的な性格の軽快な装甲車両で、実際5~11.5mm厚の装甲と重量はともかく、外寸は本家ジープとあまり変わらないくらいにコンパクトである。 ホイールベースに対して車体を極力小さくまとめ(AOAとAODが極めて大きい)、機関室を車体前部に配している。 なるべく民間向けコンポーネントを流用してコストを削減する方針の下に開発され、例えばエンジンはプジョー社の乗用車505や605と同じ、XD3T直列4気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジンを採用している。 95hpの出力で95km/hの路上最大速度を得ており、タンク内の燃料では600kmまで、車内に積み込まれる追加燃料缶の分を使用すれば路上で最大800kmの航続距離がある。 変速機は、ドイツのギア専門メーカーZF社(Zahnradfabrik Friedrichshafen:フリードリヒスハーフェン歯車製作所)製の全自動変速機で前進3段/後進1段、トランスファーは2段切り替えである。 VBL装甲車の車体はTHD鋼板の溶接構造で、操縦室の前面と左右のドアには厚さ33.5~44mmの防弾ガラス製の窓がある。 全周に渡っておおむね小火器弾と、至近距離からの榴弾の破片に対する防御力を持っている。 操縦室内の左側には操縦手が、右側には車長が位置し、それぞれの席の天井にはハッチが設けられている。 車体後面には左開き式のドアが備えられており、防弾窓が付いている。 武装は7.62mm機関銃を車体上部のリング・マウントに装着し、ミラン対戦車ミサイルの発射機は車体上部後端に取り付けられる。 タイアはミシュラン社製の9.00×16ランフラット・タイアで、空気圧調整装置が装備されている。 この軍用タイアは穴が開いても、30km/hの速度で50kmの距離を走り続けることができる。 VBL装甲車は標準装備でも、2分間の準備で河川を浮上して渡ることができる。 水上では車体後部に取り付けた小型スクリューで推進され、速度は4.5km/hになる。 ただし輸出型では浮航装備はオプションになり、NBC防護も選択品目になる。 フランス陸軍向けのVBL装甲車は3名乗りのミラン対戦車ミサイル搭載型と、2名乗りの偵察/斥候型がある。 輸出向けには合わせて22以上の型があり、アメリカ陸軍向けのULTRA-V M11は12.7mm重機関銃と40mm自動擲弾発射機を持つ。 VBL装甲車にはホイールベースを2.7mに延長したストレッチ型もあり、乗員は最大4名に増え、車体上面には4つのハッチが付く。 フランス陸軍では100両のストレッチ型を発注しており、納入は1997年7月から開始されている。 その一部は、RASIT地上レーダーを搭載する指揮車型になる。 また6×6にした兵員輸送用のスーパーVBL装甲車の案もあるが、まだ実際には作られていない。 |
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<VBL装甲車 偵察/斥候型> 全長: 3.87m 全幅: 2.02m 全高: 1.70m 全備重量: 3.59t 乗員: 2名 エンジン: プジョーXD3T 直列4気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 95hp/4,150rpm 最大速度: 95km/h(浮航 4.5km/h) 航続距離: 600km 武装: 7.62mm機関銃F1×1 (3,000発) 装甲厚: 5~11.5mm |
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<VBL装甲車 対戦車ミサイル搭載型> 全長: 3.87m 全幅: 2.02m 全高: 1.70m 全備重量: 3.59t 乗員: 3名 エンジン: プジョーXD3T 直列4気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 95hp/4,150rpm 最大速度: 95km/h(浮航 4.5km/h) 航続距離: 600km 武装: ミラン対戦車ミサイル発射機×1 (6発) 装甲厚: 5~11.5mm |
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<参考文献> ・「パンツァー2005年10月号 独自のポリシーで開発されたフランスの野戦車 VBL」 三鷹聡 著 アルゴノート 社 ・「パンツァー2002年10月号 サトリ2002に展示されたVBL野戦車シリーズ」 アルゴノート社 ・「パンツァー2001年1月号 トルコの小型装甲車 コブラ」 二木巌 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年5月号 フランス陸軍の現用戦闘車輌」 アルゴノート社 ・「パンツァー2000年9月号 SATORYにおけるVBL野戦車」 アルゴノート社 ・「パンツァー2001年12月号 海外ニュース」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021~2022」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2019年11月号 フランス戦車発達史(戦後編)」 齋木伸生 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2004年9月号 EUROSATORY 2004」 ガリレオ出版 ・「世界の戦闘車輌 2006~2007」 ガリレオ出版 ・「世界の最強陸上兵器 BEST100」 成美堂出版 ・「世界の最新陸上兵器 300」 成美堂出版 ・「世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の軍用4WDカタログ」 三修社 ・「世界の軍用4WD図鑑PART2」 スコラ |
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