+構造
VBC戦闘偵察車の車体は圧延防弾鋼板の全溶接構造となっており、避弾経始を考慮して全体に傾斜装甲を採用している。
ただし装甲厚は6~13mmと薄いため、本車の装甲防御力は車体前面で旧ソ連製の14.5mm重機関銃弾の直撃、その他の部分で7.62mm機関銃弾や榴弾の破片に耐える程度である。
車内レイアウトは車体前部が操縦室、車体中央部が全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室、車体後部が機関室となっている。
操縦手は操縦室内の左側に位置し、右側には主砲の予備弾薬25発を収容する弾薬庫が設置されている。
操縦手席の周囲は3方を防弾ガラス製の窓で囲まれており、視界は良好である。
本車は開発コストを抑えるため、駆動系統のコンポーネントにはVAB装甲車のものが流用されている。
パワーパックは、ルノー車両工業製のMIDS-06.20.45 直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(220hp/2,200rpm)と、同社製の376自動変速・操向機(前進5段/後進1段)を組み合わせている。
エンジン、変速・操向機、燃料タンクは車体後部に配された機関室に収められ、車体後面に設けられた左開き式の大型ドアを介して容易にメインテナンスが可能となっている。
サスペンションにはオーソドックスなトーションバー(捩り棒)方式が採用されているが、各車輪には油圧式ショック・アブソーバーも取り付けられている。
この足周りによってVBC戦闘偵察車は路上最大速度92km/h、路上航続距離1,000kmの機動力を発揮する。
ただし、VAB装甲車にあった車体後部のウォーター・ジェットが廃止されたため、水上浮航能力は無い。
VBC戦闘偵察車の基本型であるVBC-90は、ヴェルサイユのGIAT社(Groupement Industriel des Armements
Terrestres:陸上兵器企業連合、2006年にネクスター社に改組)が開発した52口径90mm低圧滑腔砲CN-90-F4を装備した、同社製のTS-90砲塔(2名用)を車体中央部に搭載している。
TS-90砲塔は圧延防弾鋼板の溶接構造で、砲塔内には主砲を挟んで左側に車長、右側に砲手が位置し、それぞれに後ろ開き式のハッチが備えられている。
砲塔上面の前方には、換気用のヴェンチレイターが設けられている。
主砲の左側にはPH-9A白色光サーチライトが同軸装備され、砲塔前部には車長が操作する2つ目の白色光サーチライトが設けられている。
車長用ハッチの周囲には7個(M556が3個、M554が4個)のペリスコープ、砲手用ハッチの周囲には5個(M556が3個、M554が2個)のペリスコープが備えられている。
砲手席の前方には主砲の照準のために、GIAT社製のM563望遠照準機(倍率5.9倍)が装備されている。
砲手はまた、ディジョンのSOPELEM社製のTJ-N2-90A昼/夜間照準機(倍率6倍)を使用することもできる。
主砲の使用弾種はHE(榴弾)、長射程用HE、HEAT(対戦車榴弾)、APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、発煙弾で、通常の携行弾数は45発(28発とする資料もある)である。
主砲弾薬は20発が即用弾として砲塔内(4発が砲塔バスケット内に、16発が砲塔後部のバスル内)に、残りの25発が前述のように予備弾薬として操縦室内に収容される。
また副武装として、主砲の左側に7.62mm同軸機関銃を1挺装備しているが、7.62mm機関銃弾の携行数は4,000発(1,000発とする資料もある)である。
主砲と同軸機関銃の俯仰角は、-8~+15度となっている。
VBC戦闘偵察車の武装は、基本型のVBC-90以外にも様々なものが提案されたが採用には至らず、実際に生産されたのはフランス国家憲兵隊とオマーンに採用されたVBC-90のみである。
国家憲兵隊に採用されたVBC-90Gには当初から、TCV-107レーザー測遠機とTJ-N2-90A昼/夜間照準機を組み合わせた、マシーのSFIM社製の「SOPTAC」FCSが装備されており、主砲の命中精度が向上しているが、オマーンに輸出されたVBC-90の内の4両にも、このFCSが装備されている。
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