トータス重突撃戦車 (A39)
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+概要
A39「トータス」(Tortoise:陸ガメ)はドイツ軍戦車を撃破できる主砲を搭載し、敵の弾幕をものともせずに突撃するために開発された重突撃戦車である。
ドイツ軍が破竹の進撃を続けていた1942年、当時装備されていたイギリス軍戦車は北アフリカ戦線でドイツ軍の戦車と対戦車砲に手酷く痛めつけられていた。
これに影響されて提出された新型戦闘車両の開発案が、トータス重突撃戦車の出現をもたらした。
設計を担当したバーミンガムのNMA社(Nuffield Mechanizations and Aero:ナフィールド機械・航空産業)は、固定式の密閉戦闘室に32ポンド(94mm)戦車砲を限定旋回式に搭載し、ドイツ軍の装備する8.8cm高射砲を含む、あらゆる種類の対戦車砲に耐えられる最大装甲厚225mmの重突撃戦車の設計案をまとめた。
主砲として搭載する62口径32ポンド戦車砲は3.7インチ(94mm)高射砲から発達したもので、砲口初速は930m/秒、イギリスで開発された第2次世界大戦最強の対戦車砲であった。
トータス重突撃戦車は、ドイツ軍のティーガーII重戦車とヤークトティーガー重駆逐戦車の存在が確認された1944年末、これらの戦車に対抗するために「A39」の戦争省制式番号を与えられて開発が開始された。
本車は6両の試作車が発注されたが、試作第1号車が引き渡されたのが大戦終了後の1945年8月となったことなどから、1947年に計画はキャンセルされた。
トータス重突撃戦車の戦闘室は周囲が一体鋳造で、上面は鋼板の溶接構造となっていた。
装甲厚は前面225mm、側面152mm、後面76mmで、サイドスカートですら50mmであった。
限定旋回式の主砲はボールマウント式砲架に装備され、旋回角は左右各20度ずつ、俯仰角は−10〜+18度であった。
副武装としては、戦闘室前面左上のボールマウント式銃架に7.92mmベサ機関銃を1挺、戦闘室上面に搭載された銃塔にも2連装の7.92mmベサ機関銃を備えていた。
乗員は車長、操縦手、副操縦手、砲手、機関銃手、装填手2名の計7名であった。
搭載されたエンジンは、クロムウェル巡航戦車などにも用いられたダービーのロールズ・ロイス社製のミーティア V型12気筒液冷ガソリン・エンジン(出力600hp)であったが、30tクラスの車体ならともかく79tにも達する本車の重量に機動力を与えるには非力で、本車の実用化の妨げとなった低機動性をもたらした1つの原因ともなった。
サスペンションはトーションバー(捩り棒)方式で第1、第3、第6、第8転輪に油圧式のショック・アブソーバーを備えた片側8個の転輪と、シングル・ドライピン、マンガン鋼製の914mm幅の履帯が車体を支えていた。
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<トータス重突撃戦車>
全長: 10.058m
全幅: 3.912m
全高: 3.048m
全備重量: 79.1t
乗員: 7名
エンジン: ロールズ・ロイス ミーティア 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 600hp/2,550rpm
最大速度: 19.31km/h
航続距離: 72km
武装: 62口径32ポンド戦車砲Mk.I×1 (60発)
7.92mmベサ機関銃×3 (7,500発)
装甲厚: 35〜225mm
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兵器諸元
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<参考文献>
・「パンツァー2020年2月号 AFV(アホデ・ファニーナ・ヴィークル)(12)」 M.WOLVERINE 著 アルゴノート社
・「パンツァー2004年2月号 イギリス陸軍のトータス超重戦車」 三崎道夫 著 アルゴノート社
・「パンツァー2013年1月号 重突撃戦車”A39”トータス」 久米幸雄 著 アルゴノート社
・「グランドパワー2012年11月号 イギリス重突撃戦車 A39トータス」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2020年2月号 世界の無名戦車(西欧編)」 齋木伸生 著 ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(1) 装軌式自走砲:1917〜1945」 デルタ出版
・「第2次大戦 イギリス・アメリカ軍戦車」 デルタ出版
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 齋木伸生 著 光人社 ・「写真集 世界の無名戦車 西欧編」 齋木伸生 著 芬蘭堂
・「戦車名鑑 1939〜45」 コーエー
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