TM-800戦車は1994年にルーマニアが公表した新型MBTで、ルーマニアが1970年代に旧ソ連製のT-55中戦車の発展型として開発したTR-580戦車の輸出向けヴァージョンといわれるが、写真等で見る限り相違点も多く詳細ははっきりしない。 現在のところ、試作車が製作されただけである。 TM-800戦車の車体、砲塔を見る限りは、TR-580戦車よりもTR-85戦車から派生しているように思える。 車体後部の機関室が延長されており、エンジン排気口が車体左側面から車体後部に移動している特徴があるからである。 車体側面のスカートは補強用のスリーブの入った鋼製だが、これはTR-85戦車のものとも異なる。 足周りはTR-580戦車と同じく片側6個の転輪を持つが、転輪の間隔から見るとTR-85戦車の車体のようである。 主砲はT-55中戦車と同じ56口径100mm戦車砲で変わらないが、FCS(射撃統制システム)がレーザー測遠機や弾道コンピューターが組み込まれた新型となっており、距離150mから4,000mまでの正確な射撃データが得られるようになっている。 なお車体、砲塔には防御力強化のため複合装甲が採用されているというが、これがどのようなものか詳細は不明である。 これらの改良の結果戦闘重量は45tに増大し、それに合わせてエンジンも強化されている。 エンジンはTR-85戦車と同じドイツ製の8VS-A2T2 V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力830hp)が搭載されており、路上最大速度64km/h、路上航続距離500kmと機動性能はまずまずである。 TM-800戦車の開発作業はすでに終了しているが、現在までのところルーマニア軍にも採用されておらず、具体的な輸出成約も無いようである。 また本車のファミリー車両としてTER-800戦車回収車も開発されており、売り込みが図られている。 |
<TM-800戦車> 全長: 9.00m 車体長: 6.74m 全幅: 3.30m 全高: 2.35m 全備重量: 45.0t 乗員: 4名 エンジン: 8VS-A2T2 4ストロークV型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 830hp/2,300rpm 最大速度: 64km/h 航続距離: 500km 武装: 56口径100mmライフル砲A308×1 (40発) 12.7mm重機関銃DShKM×1 (500発) 7.62mm機関銃PKT×1 (3,500発) 装甲: 複合装甲 |
<参考文献> ・「パンツァー2003年7月号 現用のT-54/55戦車近代化型」 鈴木浩志 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2000年9月号 ルーマニアのT-55改良型」 齋木伸生 著 アルゴノート社 ・「世界AFV年鑑 2002〜2003」 アルゴノート社 ・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー |