TH-400戦闘偵察車は、旧西ドイツの中堅車両メーカーであったティッセン・ヘンシェル社(現ラインメタル・ラントジステーム社)が、海外への輸出向けとして1980年代初期にプライヴェート・ヴェンチャーで開発した6×6型の重装輪式装甲車で、威力偵察および火力支援任務を実行する車両を目指していた。 1984年初頭に試作車が公開され、同年3月末までに5,000kmを超える走行試験を完了している。 車体と砲塔は圧延防弾鋼板の溶接構造を採用しており、7.62mm弾の直撃や榴弾の破片から乗員を防御することが可能である。 車内レイアウトは車体前部が操縦室、車体中央部が全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室、車体後部が機関室という戦車と同じレイアウトになっている。 本車の特長は、何といっても重武装と大機動力である。 武装はフランスのFCB社製のFL-20砲塔に、レオパルト1戦車の主砲と同格の105mmライフル砲を搭載している。 この砲は最新型の低反動構造であるため、戦闘重量24.5tのTH-400戦闘偵察車でも搭載することができる。 当然、敵がレオパルト1クラスのMBTであっても待ち伏せ攻撃すれば撃破できる。 メーカーによれば本車はレオパルト2戦車の主砲と同格の120mm滑腔砲を搭載することも可能だというが、実用上は難しいと思われる。 車体後部に配された機関室にはダイムラー・ベンツ社(現ダイムラー社)製のOM422LA V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力465hp)と、ZF社製の6HP-600自動変速機(前進6段/後進1段)を中心とするパワーパックが収められており、走行試験では105km/hという路上最大速度を記録した。 燃料搭載量は800リットルで、路上航続距離は1,000kmに達する。 砲塔を装備しない基本車体の重量は16.4t、サスペンションは全輪独立懸架式で前輪にはパワーステアリング機構が備えられ、さらにタイア空気圧中央調整装置も備えられている。 メーカーでは105mm砲搭載型以外にも、フランスのイスパノ・スイザ社製の30mm対空機関砲HSS831Aを連装装備するトムソンCSF社(現タレス社)製の「サーブル」(Sabre:サーベル)砲塔を備える対空型も提案している。 しかし本車は高性能な反面装輪式装甲車としては高価であるためか、現在までに海外からの発注は無い。 |
<TH-400戦闘偵察車> 車体長: 6.203m 全幅: 2.98m 全高: 2.083m 全備重量: 24.5t 乗員: 4名 エンジン: ダイムラー・ベンツOM422LA V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 465hp 最大速度: 105km/h 航続距離: 1,000km 武装: 51口径105mm低反動ライフル砲×1 装甲厚: |
<参考文献> ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー ・「新・世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 |