ワルシャワ条約機構の加盟国であったルーマニアは、他の加盟国と同様長らく旧ソ連製の兵器を運用してきたが、1970年代に入ってから兵器の国産化を積極的に進めるようになった。 最初は旧ソ連製兵器のライセンス生産からスタートしたが、次第に独自の改良型の生産へと歩みを進めていった。 装輪式装甲車の分野では、まず1960年代終わりに旧ソ連製のBTR-60PB装甲兵員輸送車のライセンス生産権を取得し、これに小改良を加えたものを「TAB-71」(Transportorul Amfibiu Blindat Model 1971:水陸両用装甲輸送車両1971年型)の名称で1970年から生産を開始した。 一般には、1972年8月にルーマニアの首都ブカレストで開催された軍事パレードで初めて公開されている。 TAB-71装甲兵員輸送車は、基本的にはBTR-60PB装甲兵員輸送車とほぼ同じ車両であるが、エンジンが原型の出力90hpのガソリン・エンジン2基から、出力140hpのガソリン・エンジン2基にパワーアップされており、路上最大速度が原型の80km/hから95km/hに向上する等、機動性能が強化されている。 また発展型のTAB-71M装甲兵員輸送車では、ルーマニアで独自にデザインされた新型砲塔が装備されるようになった。 ただし新型砲塔といっても基本的な形状はBTR-60PB装甲兵員輸送車のものと同じで、武装も原型と同じく旧ソ連製の14.5mm重機関銃KPVTと7.62mm機関銃PKTを同軸に装備している。 主な相違点は砲塔の左側にやや大型の照準サイトが新設された程度であるが、オリジナルな砲塔を作り上げたことには違いない。 TAB-71M装甲兵員輸送車はエンジンも出力132hpのディーゼル・エンジン2基に換装されており、燃料に引火する危険性が低下したため乗員の生残性が向上している。 TAB-71装甲兵員輸送車とTAB-71M装甲兵員輸送車は1990年までに合計で2,073両が生産され、現在もルーマニア陸軍の主力8輪装甲車の地位を占めている。 なおTAB-71/71M装甲兵員輸送車は海外への輸出も行われており、これまでに旧ユーゴスラヴィアにTAB-71装甲兵員輸送車が40両、モルドヴァにTAB-71M装甲兵員輸送車が161両輸出されている。 |
<TAB-71装甲兵員輸送車> 全長: 7.22m 全幅: 2.83m 全高: 2.70m 全備重量: 11.0t 乗員: 3名 兵員: 8名 エンジン: サヴィエムSR-225 V型8気筒液冷ガソリン×2 最大出力: 280hp/3,600rpm 最大速度: 95km/h(浮航 10km/h) 航続距離: 500km 武装: 14.5mm重機関銃KPVT×1 (500発) 7.62mm機関銃PKT×1 (2,000発) 装甲厚: 6〜10mm |
<参考文献> ・「パンツァー2001年9月号 ルーマニアの軽装甲車 TABC-79」 斎木伸生 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2011年10月号 現代のルーマニア軍」 鹿内誠 著 アルゴノート社 ・「世界の最新装輪装甲車カタログ」 三修社 |