T30重戦車
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+概要
T30重戦車は、T29重戦車と同じく1944年9月14日にアメリカ陸軍から開発要求が出されたもので、T29重戦車がドイツ陸軍の新型重戦車ティーガーIIへの対処を目的として開発されたのに対し、T30重戦車は同じ車体を流用した火力支援型として開発された。
T29重戦車とT30重戦車はそれぞれ2両の試作車が発注されたが、T30重戦車の試作車はT29重戦車に少々遅れて、1948年4月にメリーランド州のアバディーン車両試験場に到着した。
すでに第2次世界大戦が終了していたため、アメリカ陸軍はT29/T30重戦車への興味を失っており、完成した試作車は、戦後の戦車開発のデータ収集に用いる試験用車両に転用されることになった。
T30重戦車は当初T29重戦車と同じく、ミシガン州ディアボーンのフォード自動車製のGAC V型12気筒液冷ガソリン・エンジン(出力770hp)を搭載することになっていたが、様々な機関系をテストするため、完成した試作車には異なるエンジンが搭載された。
T30重戦車に搭載されたパワーパックは、アラバマ州モービルのコンティネンタル自動車製のAV-1790-3 V型12気筒空冷ガソリン・エンジン(出力810hp)と、インディアナ州インディアナポリスのGM(ジェネラル・モータース)社アリソン変速機部門製の、クロスドライブ式自動変速・操向機CD-850(前進2段/後進1段)の組み合わせで、これは後にアメリカ陸軍の戦後第1世代MBTである、パットン中戦車シリーズのパワーパックとして採用された。
このためT30重戦車は、機関室上面のレイアウトとマフラーがT29重戦車と異なっていたが、それ以外はT29重戦車と車体の構造はほぼ同じで、砲塔もT29重戦車のものがそのまま用いられていた。
T29重戦車の主砲には、対装甲威力に優れた65口径105mm戦車砲T5が搭載されたが、T30重戦車は歩兵の火力支援に用いるため、大口径榴弾を発射できる40口径155mm戦車砲T7が搭載された。
砲架も、T29重戦車に用いられたT123砲架に替えてT124砲架が用いられた。
155mm砲弾は、砲塔内と車内合わせて34発が収容された。
主砲左側の同軸機関銃はT29重戦車では、ユタ州オグデンのブラウニング火器製作所製の12.7mm重機関銃M2を上下に2挺装備していたが、T30重戦車では1挺に減らされている。
またT30重戦車の試作第1号車は、T29重戦車と同じく車体前面右側のボールマウント式銃架に、ブラウニング火器製作所製の7.62mm機関銃M1919A4を装備していたが、試作第2号車では廃止されていた。
T30重戦車に搭載された155mm戦車砲T7は、榴弾の射撃を前提として開発されたものであり、弾種は榴弾しか用意されておらず、対戦車戦闘に用いることはできなかった。
しかし砲口初速こそ2,300フィート(717m)/秒と低いものの、榴弾に充填された炸薬量は43.4kgと、105mm戦車砲T5が用いたT30E1榴弾の15.2kgと比べて3倍近いため、榴弾射撃には極めて大きな威力を発揮した。
しかし、弾丸と装薬合わせて60.7kgという重量は人力での装填が難しく、このため、1947年7月24日に自動弾薬押し込み・排除装置の開発要求が出された。
この装置がいつ完成したかは不明だが、いずれにせよ改修車は「T30E1」と呼称を改め、同様に砲は「T7E1」、砲架は「T124E1」と変更され、改修後は砲塔後面に自動的に薬莢を排出する円形のハッチが新設された。
このため、この部分を見れば改修前か後かを確認することが可能である。
T30E1重戦車の砲弾の装填は、以下のようなサイクルで行われた。
まず主砲を発射して砲身が後座し、駐退装置により前方に戻る。
続いて、装填装置の前方に設けられた装填用の弾薬トレイと、砲尾が一直線となるよう自動的に砲身が俯仰し、弾薬トレイが前方に伸びて薬莢をキャッチすると、同時に砲塔後面の薬莢排出ハッチが開いて薬莢を後方に引き出し、車外に排出する。
排出後、ブリーチ・ブロックは開放したままの位置に留まり、装填手が押し出してトレイに次弾と装薬が詰まった薬莢を載せ、自動的にラマーにより薬室内に弾薬が押し込まれ、ブリーチが閉鎖される。
そしてトレイは元の位置に戻り、砲身は先の射撃が行われた角度に自動的に復帰するという、サイクルを繰り返して射撃が行われた。
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<T30重戦車>
全長: 10.90m
車体長: 7.38m
全幅: 3.81m
全高: 3.223m
全備重量: 64.682t
乗員: 6名
エンジン: コンティネンタルAV-1790-3 4ストロークV型12気筒空冷ガソリン
最大出力: 810hp/2,800rpm
最大速度: 35.4km/h
航続距離: 161km
武装: 40口径155mmライフル砲T7×1 (34発)
12.7mm重機関銃M2×2 (2,200発)
7.62mm機関銃M1919A4×1 (2,500発)
装甲厚: 12.7〜279.4mm
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兵器諸元(T30重戦車)
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<参考文献>
・「パンツァー2013年5月号 アメリカのTシリーズ試作戦車(15) T29/30/32重戦車シリーズ、T34重戦車、T31デ
モリション戦車、T33火焔放射戦車」 大佐貴美彦 著 アルゴノート社
・「パンツァー2004年4月号 アメリカ陸軍 T29/T30試作重戦車」 白石光 著 アルゴノート社
・「グランドパワー2014年5月号 最後のアメリカ重戦車 M103シリーズ」 箙浩一 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2005年3月号 第2次大戦後のアメリカ軍重戦車」 箙浩一 著 ガリレオ出版
・「第2次大戦 米英軍戦闘兵器カタログ Vol.3 戦車」 ガリレオ出版
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
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