
|
+概要
「Sタンク」の通称で知られる「Strv.103」(Stridsvagn 103:103型戦車)は、スイスと並び長く中立を保ってきたスウェーデンが国内開発したMBT(主力戦車)である。
スウェーデンは強武装中立政策を採り、国内に多数の有力武器メーカーを持つが、Sタンクは機関砲などで有名なカールスコーガのボフォース社(現在はミサイル部門がサーブ社、重火器部門がイギリスのBAEシステムズ社に分割吸収されている)のリーダーシップで開発された。
1958年から部分試作が始められ、1963年から試作車の試験が行われた。
最初の生産型であるStrv.103A戦車の量産は1966年から始まり、1971年6月までに300両が生産された。
さらに改良型のStrv.103B戦車が生産されたが、これはStrv.103A戦車のガスタービン・エンジンを新型に換装し、浮航用のフロート・スクリーンとドーザー・ブレイドを装着できるようにしたもので、前に生産されたStrv.103A戦車にも同じ改良が施された。
Sタンクは、諸外国に例を見ないユニークな戦車であった。
これは、スウェーデンの地理的特性や防衛ドクトリンを考慮した結果で、森と湖、岩のごろごろした荒地で敵の侵攻軍を迎え撃つ、待ち伏せ戦闘に特化した戦車となっていた。
その最大の特徴は、砲塔を廃止したことである。
一般に戦車は車体の上に砲塔を装備し、全周砲火を発揮するように作られているが、そうなると当然車体は大型化し車高は高くなる。
敵を待ち伏せるだけでこれを不要とすれば、より小型で安価に戦車をまとめる、あるいは、より大きな主砲と高価な装備を同じ車体に搭載できることになるわけである。
Sタンクのユニークさは、それだけではない。
これまでも第2次世界大戦中の旧ドイツ陸軍の突撃砲などで、限定旋回式に主砲を装備した例はあったが、Sタンクの場合はさらに徹底していた。
突撃砲型の戦車では、主砲は車体に限定旋回式に固定されるのが普通だが、Sタンクでは主砲を車体に直接固定装備していたのである。
この装備方法のメリットは、主砲の旋回・俯仰機構を省略できることと、主砲が動かないことで自動装填装置が採用し易く、それによって発射速度の向上と装填手が廃止でき、車体の小型化が可能となることであった。
照準のためには主砲の微調整が必要だが、左右の照準は車体を旋回させて行い、主砲の俯仰は、特殊な油気圧式サスペンションにより転輪アームを上下させ、車体を前後に傾けて行った。
油気圧姿勢制御による主砲の俯仰は、−10〜+12度の範囲で可能であった。
Sタンクの車体は、圧延防弾鋼板を溶接した低平な箱型構造で、特に車体前面は避弾経始を考慮し、鋭利な楔形にデザインされていたのが特徴であった。
車内レイアウトは車体前部が機関室、車体中央部が主砲を装備した戦闘室、車体後部が自動装填装置と主砲弾薬庫となっており、一般的な戦車の配置と異なっていた。
これは車体前部に置いたエンジンも、被弾の際には乗員を守る装甲の一部として活用しようという発想であった。
エンジンはStrv.103A戦車では、イギリスのロールズ・ロイス社製のK60 直列6気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力240hp)と、アメリカのボーイング社製の502-10MA
ガスタービン・エンジン(出力330hp)を組み合わせて搭載し、通常はディーゼル・エンジンのみ、路外ではガスタービン・エンジンを加えて走行した。
これにより、航続距離と加速性を両立させていた。
変速・操向機はヨーテボリのヴォルヴォ社製の、FBTV2Bトルク変換機付き手動変速・操向機(前進2段/後進1段)が採用されていた。
Strv.103B戦車ではガスタービン・エンジンが、アメリカのキャタピラー社(開発はボーイング社)製の553 ガスタービン・エンジン(出力490hp)に換装され、後期生産車では変速・操向機も、ヴォルヴォ社製のDRHIMトルク変換機付き自動変速・操向機(前進2段/後進2段)に換装された。
車内の乗員配置は、主砲を挟んで右側に車長、左側に操縦手、それと背中合わせに無線手が搭乗していた。
砲手がいないが、戦車を動かして主砲の照準を付ける関係で、操縦手が砲手の役割を兼務していた。
また無線手は、後部操縦手の役割も兼ねていた。
これは、待ち伏せ位置から脱出するのに車体の方向転換をせずに、一目散に後方に逃げられるようにするためであった。
また、主砲の自動装填装置が故障した場合には、無線手は手動で弾薬装填を行う装填手の役目も果たした。
操縦手/砲手用視察装置は、サルトシェ・ブーのユングナー社製のOP-1Lペリスコープおよび双眼サイトで、ノルウェイのSIMRAD社製のLV300レーザー測遠機が組み込まれていた。
車長用視察装置はユングナー社製のOPS-1ペリスコープ、および双眼完全安定化サイトで、レーザー測遠機は装備されていなかった。
車長席の上部には、周囲にペリスコープを備えたキューポラが設けられており、これを使って目標を捜索できた。
車長はハンドルバーを使って発見した目標に車体を指向させ、それから弾種を選び射撃することができた。
Sタンクの主砲は、西側諸国の戦後第2世代MBTの標準武装となった、イギリスの王立造兵廠製の51口径105mmライフル砲L7をベースに、62口径に長砲身化したものを搭載しており「L74」と呼ばれた。
この105mmライフル砲L74は、自動装填装置により最大で15発/分の発射速度を持っていた。
車体後部に設けられている自動装填装置の弾薬庫は、主砲を挟んで左右に分けられており、各25発ずつ合計50発の105mm砲弾を収容した。
弾薬庫の主砲弾薬を全て費消した場合、車体後面に設けられた2枚のハッチを使い給弾されたが、その所要時間は10分となっていた。
50発の主砲弾薬の内訳は通常、APDS(装弾筒付徹甲弾)25発、HE(榴弾)20発、発煙弾5発となっていた。
スウェーデン陸軍では後に、元々使用していたAPDSに代えて、イスラエルのIMI社(Israel Military Industries:イスラエル軍事工業)製の、M111 APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)を使用するようになった。
副武装は、ベルギーのFN社(Fabrique Nationale d'Armes de Guerre:国営造兵廠)製の、7.62mm機関銃Ksp.58B(FN-MAG)が3挺で、2挺が車体前部左側に固定装備され、1挺が車長用キューポラの左側の遠隔操作式マウントに装備されていた。
1983年遅く、スウェーデン陸軍はボフォース社との間で、Strv.103B戦車を近代化改修する契約を結んだ。
改良型は「Strv.103C」と呼ばれ、1984年に試作車が完成し、1986〜89年にかけて改修作業が実施された。
Strv.103C戦車ではK60ディーゼル・エンジンが、アメリカのジェネラル・モーターズ社デトロイト・ディーゼル部門製の、6V-53T V型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力290hp)に換装され、変速・操向機も、ボフォース社製の自動変速・操向機(前進3段/後進3段)に変更された。
砲手用サイトに装備されたレーザー測遠機は、SIMRAD社製のNd-YAG(ネオジム-イットリウム・アルミ・ガーネット)に変更され、射撃統制コンピューターは、スウェーデン陸軍のイギリス製センチュリオン戦車の改良に使われたものと同じものとなった。
さらにリラン照明弾発射機と、車体左右側面にサイドスカートを兼ねた、22リットル入り増加燃料タンクが各7個ずつ装備された。
また1992年からは車体前面に、HEAT(対戦車榴弾)や対戦車ミサイル等の成形炸薬弾対策に、柵のような格子状の増加装甲が取り付けられるようになった。
現在スウェーデン陸軍では、ドイツから導入したレオパルト2戦車シリーズが機甲戦力の主力となっており、Sタンクは1990年代末までに全車が退役した。
|
Strv.103A戦車
全長: 8.80m
車体長: 6.90m
全幅: 3.30m
全高: 2.43m
全備重量: 39.0t
乗員: 3名
エンジン: ロールズ・ロイス K60 2ストローク直列6気筒液冷ディーゼル
+ ボーイング 502-10MA ガスタービン
最大出力: 240hp/3,750rpm + 300hp/38,000rpm
最大速度: 50km/h
航続距離: 390km
武装: 62口径105mmライフル砲L74×1 (50発)
7.62mm機関銃Ksp.58B×3 (2,750発)
装甲厚:
|
Strv.103B戦車
全長: 8.99m
車体長: 7.04m
全幅: 3.63m
全高: 2.43m
全備重量: 39.7t
乗員: 3名
エンジン: ロールズ・ロイス K60 2ストローク直列6気筒液冷ディーゼル
+ キャタピラー 553 ガスタービン
最大出力: 240hp/3,750rpm + 490hp/38,000rpm
最大速度: 50km/h
航続距離: 390km
武装: 62口径105mmライフル砲L74×1 (50発)
7.62mm機関銃Ksp.58B×3 (2,750発)
装甲厚:
|
Strv.103C戦車
全長: 8.99m
車体長: 7.04m
全幅: 3.80m
全高: 2.43m
全備重量: 42.5t
乗員: 3名
エンジン: デトロイト・ディーゼル 6V-53T 2ストロークV型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
+ キャタピラー 553 ガスタービン
最大出力: 290hp/2,800rpm + 490hp/38,000rpm
最大速度: 50km/h
航続距離: 390km
武装: 62口径105mmライフル砲L74×1 (50発)
7.62mm機関銃Ksp.58B×3 (2,750発)
装甲厚:
|
参考文献
・「パンツァー2012年11月号 第二世代MBTの沿革とその進化」 オイゲン・フラットフィールド 著 アルゴノート
社
・「パンツァー2003年12月号 世界で唯一の無砲塔戦車 Strv.103」 樋口好太郎 著 アルゴノート社
・「パンツァー2016年1月号 戦車100年史におけるマイルストーン」 久米幸雄 著 アルゴノート社
・「パンツァー2007年9/10月号 S戦車の開発と発展」 佐藤慎ノ亮 著 アルゴノート社
・「パンツァー2012年11月号 各国の第二世代MBT」 柘植優介 著 アルゴノート社
・「パンツァー2012年11月号 ベル・エポックのMBT」 城島健二 著 アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート9 レオパルト1と第二世代MBT」 アルゴノート社
・「世界AFV年鑑
2005〜2006」 アルゴノート社
・「グランドパワー2007年10月号 知っておこうTANKメカ(3) 変わり種のエンジン」 高松武彦 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2019年12月号 スウェーデン戦車発達史(戦後編)」 齋木伸生 著 ガリレオ出版
・「世界の戦車(2)
第2次世界大戦後〜現代編」 デルタ出版
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」 洋泉社
・「戦車名鑑
1946〜2002 現用編」 コーエー
・「世界の最新陸上兵器
300」 成美堂出版
・「新・世界の主力戦車カタログ」 三修社
|
関連商品 |
トランぺッター 1/72 スウェーデン軍 Strv.103戦車B型 プラモデル 7248 |
トランペッター 1/72 スウェーデン軍 Strv.103戦車C型 ドーザ付 プラモデル 7298 |
EASY MODEL 1/72 スウェーデン軍 Strv.103戦車B型 完成品 35094 |
タカラ 1/144 ワールドタンクミュージアム シリーズ09 Strv.103戦車B型 単色迷彩 165 |
タカラ 1/144 ワールドタンクミュージアム シリーズ09 Strv.103戦車B型 NATO迷彩 167 |