Sd.Kfz.250/9装甲偵察車
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+概要
偵察車両として4×4型装輪式のSd.Kfz.222装甲偵察車を多用してきたドイツ軍であったが、東部戦線において雪融け時などの泥濘地では走行が困難になることが判明したため、急遽新型の偵察車両として半装軌式のSd.Kfz.250装甲兵員輸送車に白羽の矢を立て、オープンとなっていた戦闘室上面を装甲板で覆い、この上にSd.Kfz.222後期型と同様の、オベルンドルフ・アム・ネッカーのマウザー製作所製の55口径2cm機関砲KwK38を装備する、10角形のオープントップ式全周旋回砲塔を搭載する応急車両を1942年に開発した。
これがSd.Kfz.250/9装甲偵察車で1942年3月に30両が発注され、同年中に3両の試作車が東部戦線に送られたが、これは装輪式のSd.Kfz.222よりも、半装軌式の本車の方が路外走行性能が優れていることを実証するためで、試験の結果Sd.Kfz.250/9の路外走行性能が良好であることが実証されたため、Sd.Kfz.222の生産は1943年5月で中止され、Sd.Kfz.250/9の生産にバトンタッチされた。
Sd.Kfz.250/9は応急的に製作された車両としては能力も充分で、生産は1945年の敗戦間近まで続けられ、各戦線で多用された。
Sd.Kfz.250/9は乗員3名で初期型はA型車体を使用しており、Sd.Kfz.222用の砲塔をそのまま流用していた。
オープントップ式砲塔の上面は金網でカバーされ、弾片や手榴弾などが車内に入ることを防いでいた。
オープンとなっていた戦闘室上面は砲塔リングを持つ装甲板で塞がれ、戦闘室の前後にあった機関銃架は廃止された。
前方部の防盾付き機関銃架の跳弾板はそのまま残されており、砲塔基部に弾片などが侵入して砲塔リングを破損するのを防ぐ役目を果たした。
副武装は、2cm機関砲KwK38の同軸にマウザー社製の7.92mm機関銃MG34が1挺と、車内にエアフルトのエルマ製作所製の9mm機関短銃MP38が1挺あった。
無線機は司令部連絡用のFu.12を搭載し、アンテナは砲塔後部に基部が装着されていた。
また、初期型では後部乗降用ドアにも視察ヴァイザーが装備され、車体後面にはワイアーロープ、ジェリカン、そして乗降用ドアの外側に工具箱が標準装備されていた。
Sd.Kfz.250/9の後期型はB型車体を使用しており、KwK38機関砲と同軸機関銃は新型の38型揺動砲架に装備され、砲塔もより大型の6角形のものに変更された。
これは8×8型装輪式のSd.Kfz.234/1装甲偵察車や、装軌式の38(t)偵察戦車(Sd.Kfz.140/1)に搭載されたものと同じである。
KwK38機関砲と同軸機関銃の俯仰角は、−10〜+85度であった。
なおB型車体のSd.Kfz.250/9では、後部乗降用ドアの視察ヴァイザーは廃止されていた。
B型車体のSd.Kfz.250/9でも初期においては、10角形の旧型砲塔を搭載した車両もあったと伝えられているが、今のところ写真は確認されていない。
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<Sd.Kfz.250/9装甲偵察車A型>
全長: 4.56m
全幅: 1.95m
全高: 2.16m
全備重量: 6.02t
乗員: 3名
エンジン: マイバッハHL42TRKM 4ストローク直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 100hp/2,800rpm
最大速度: 60km/h
航続距離: 320km
武装: 55口径2cm機関砲KwK38×1 (100発)
7.92mm機関銃MG34×1 (1,100発)
装甲厚:
6〜14.5mm
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<Sd.Kfz.250/9装甲偵察車B型>
全長: 4.61m
全幅: 1.95m
全高: 2.16m
全備重量: 6.02t
乗員: 3名
エンジン: マイバッハHL42TUKRM 4ストローク直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 100hp/2,800rpm
最大速度: 60km/h
航続距離: 300km
武装: 55口径2cm機関砲KwK38×1 (100発)
7.92mm機関銃MG34またはMG42×1 (1,100発)
装甲厚:
6〜14.5mm
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<参考文献>
・「パンツァー2007年11月号 ドイツ陸軍のワークホース Sdkfz.250シリーズ」 久米幸雄 著 アルゴノート社
・「ピクトリアル ドイツ軍ハーフトラック」 アルゴノート社
・「グランドパワー2012年6月号 ドイツ装甲兵員輸送車写真集(1)」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(3)
装軌/半装軌式戦闘車輌:1918〜2000」 デルタ出版
・「SdKfz250」 山本敬一 著 デルタ出版
・「ジャーマン・タンクス」 ピーター・チェンバレン/ヒラリー・ドイル 共著 大日本絵画
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