+概要
Sd.Kfz.234装甲車は当初、Sd.Kfz.231装甲車と同じく2cm機関砲を搭載する予定で開発されていた。
しかしSd.Kfz.234シリーズで最初に生産されたのは、5cm戦車砲を搭載したこの型式である。
この車両は当初「8輪重装甲偵察車(Tp)」と呼ばれていたが、1944年3月までに「Sd.Kfz.234/2」という呼称が与えられている。
本車はよく「プーマ」(Puma:ピューマ、アメリカライオン)と呼ばれるが、これは制式呼称ではない。
ベルリン・マリーエンフェルデのダイムラー・ベンツ社ではクンゼ工学博士によって、デュッセルドルフのラインメタル・ボルジヒ社製の60口径5cm戦車砲KwK39/1と、デーベルンのMLJG社(Metall
und Lackwarenfabrik Johannes Großfuß:ヨハネス・グロースフース金属・漆器製作所)製の7.92mm機関銃MG42を防盾に同軸装備した、密閉式砲塔の設計が行われた。
ダイムラー・ベンツ社では、5cm戦車砲用砲塔を以前にルクス/レオパルト偵察戦車計画用に設計した経験があり、主砲の供給元であるラインメタル社もこの時に5cm戦車砲KwK39を開発していたので、砲塔の開発は比較的スムーズに行われた。
Sd.Kfz.234/2装甲偵察車の砲塔は溶接構造の密閉式で、装甲厚と構成角度は前面30mm/20度、側面&後面14.5mm/25度、上面10mm/90度であった。
主砲は、この砲塔用に5cm戦車砲KwK39を設計変更した5cm戦車砲KwK39/1が、前方の鋳造マウント部に取り付けられた。
防盾は、「トプフブレンデ」(Topfblende:鉢型防盾)と呼ばれる鋳造製のものが装着され、その右側には同軸機関銃として7.92mm機関銃MG42が装備されていた。
照準機は、主砲の左側にヴェッツラーのエルンスト・ライツ光学製作所製のTZF4b望遠鏡式照準機(倍率2.5倍、視野角24度)が装備され、前面装甲板の左側に照準機用の穴が開けられていた。
砲塔の側面には視察ヴァイザー等は装備されておらず、外観はかなりシンプルであった。
砲塔後部にもハッチは装備されていなかったが、右側にMPポート用の丸いハッチが設けられていた。
乗員用の装備は上面に集中しており、砲塔上面の中央左側に砲手用の楕円形ハッチがあり、その右側やや後方には車長用の円形ハッチがあった。
これらのハッチには、ボールベアリングによる360度旋回式のR型(角形位相角鏡式)ペリスコープが装備され、右側の車長用ハッチの前方には、T.Rb1.F.3という潜望鏡式の観測用ペリスコープ(倍率9倍、視野角7.7度)が常設されていた。
このペリスコープは必要に応じて400mm上に延ばすことができ、使用しない時には完全に引き込むことができた。
その際、ペリスコープ上部に取り付けられたカバーが、砲塔上面開口部の蓋になるようになっていた。
ペリスコープの頭部は360度の旋回ができ、これは下部の接眼部に取り付けられた機構で操作された。
接眼部は双眼式で、その右側には砲塔の旋回に連動する時計目盛があった。
砲塔上面の後部左側にはヴェンチレイター用の穴があり、これには装甲カバーは装備されていなかった。
砲塔内には砲の左側に砲手、右側に車長を配置しており、車長は装填手も兼ねていた。
砲塔内の後部には車内通話機と無線機が搭載されていたが、この無線機はFu.Spr.fで、これ用のアンテナ基部は砲塔上面の後部中央に装備されていた。
主砲の左側には俯仰操作ハンドルがあったが、これにはボウデンワイアーで接続された7.92mm機関銃MG42の射撃発射機構が備えられていた。
砲の俯仰角は-10~+20度で、ハンドルの回転により砲の位置角度を2.5度ずつ変更できた。
俯仰操作ハンドルの下には砲塔旋回用ハンドルがあり、これには射撃用の電気発火装置が取り付けられていた。
ハンドルからの動力はベヴェルギア、ウォームギア、円錐形の多重式クラッチ、ラック&ピニオンギアへと伝えられた。
砲塔の旋回速度は1周約1分で、旋回ハンドルを180回転させることにより砲塔が360度旋回した。
なお、旋回用ハンドルは車長用に右側にも存在していた。
Sd.Kfz.234/2装甲偵察車には、機関室の左側面にボックス型装甲カバーの付いた星型アンテナの基部が装備されており、これ用のFu.12無線機セットは操縦手席の後ろに搭載されることになっていた。
しかしこれは、機甲偵察中隊に配備された25両のSd.Kfz.234/2装甲偵察車の内、13両のみに搭載されたと記録されており全車にではなかった。
ただし、搭載されない場合でもアンテナ基部はそのまま装備されていた。
Fu.12無線機は、Mw.E.c型受信機(830~3,000kHz)と80W送信機(1,120~3,000kHz)で構成されており、移動時の通話範囲は音声送信で25km、キー送信では80kmあった。
武装は主砲の5cm戦車砲KwK39/1と、同軸機関銃の7.92mm機関銃MG42の他に、車内武装としてエアフルトのエルマ製作所製の9mm機関短銃MP40が装備されていた。
携行弾数はMG用の7.92mm弾が2,850発、MP用の9mm弾が192発で、5cm砲弾は55発(Pz.Gr.39徹甲弾が27発、Spr.Gr.38榴弾が28発)であった。
アメリカ軍の調査により、この内51発の収納場所が判明している。
それによれば戦闘室内の左右に7発ずつのラックがあり、その前方には左側に16発用、右側に21発用の収納庫があったとされている。
Sd.Kfz.234/2装甲偵察車のサイズは全長6.80m、全幅2.33m、全高2.38m、砲口中心高1.93mとなっており、戦闘重量は11.74tであった。
乗員は車長、砲手、操縦手、無線手の4名となっていた。
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