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Sd.Kfz.234/1装甲偵察車




Sd.Kfz.234シリーズの開発
Sd.Kfz.234シリーズの生産
Sd.Kfz.234シリーズの部隊配備

●Sd.Kfz.234シリーズの構造特徴

ビューシンクNAG社製の8輪重装甲偵察車(Tp)=Sd.Kfz.234シャシーは、搭載武装の型式に関係なく生産の最後まで同一のものが使用された。
全体の構成はSd.Kfz.231とほぼ同じで後部にエンジンがあり、戦闘室内は前方に操縦手席、後方に副操縦手席が装備されていた。

タトラ社製のV型12気筒空冷ディーゼル・エンジン「103型」は出力210hp(200~220hp説あり)、排気量は14,825ccであった。
動力はクラッチ、6段変速機(主は3段、副により6段となる)、最終減速機を通して8輪全てのホイールに動力を与えたが、これもSd.Kfz.231と同じ構成である。

各ギアの到達速度は1段が7km/h、2段が12km/h、3段が20km/h、4段が27km/h、5段が49km/h、6段が80km/h(最大速度は90km/h説もある)になっていた。
このギアは前進/後進がリバースで使用でき、後部の副操縦装置でも全く同様に扱えた。
サスペンションはSd.Kfz.231と同形式だが、同一ではない。

ホイール間隔も違っていて第1と第2および第3と第4ホイール間は1.3mで、第2と第3ホイール間は1.4mであった。
操向は8輪全てができ、旋回半径は通常で14.5m、最小で7.45mであった。
携行燃料は360リッターで整地で1,000km、不整地で600kmの航続距離があった。
超壕幅は2m、渡渉水深は1.2m、登坂力は30度、超堤高は0.35mであった。

タイアは防弾仕様ではない一般的なチューブ式で、Sd.Kfz.231よりも大きい270×20というサイズのものが使用された。
装甲車体のデザインはSd.Kfz.231をリファインした溶接構造で、ボディパーツは戦闘室後部で2分割されており、ボルトで結合されていた。

車体前面には表面硬化型圧延装甲板が使用されており、2cm徹甲弾に対する防御ができる設計であった。
側面および後面は、7.92mm機関銃弾に対しての防御しか考慮されていない。
各装甲板の厚みと構成角度は戦闘室上面5.5mm/90度、戦闘室前面30mm/35度、15mm/70度、車体前面30mm/55度&30度、車体側面8mm/30度、車体後面10mm/22度&40度、機関室上面5.5mm/88度、下面5mm/90度となっている。

ヴィジョン・ヴァイザーの構成はSd.Kfz.231の後期型と全く同一で、乗員用ハッチも車体前上面と両側面にあるのみであった。
ただし、側面ハッチはフェンダーの下になってしまったので脱出用ハッチとして使用され、1枚式となった。
機関室には上部前方にほぼ車幅分の吸気グリルがあり、これには左右2ブロックに分かれた整流板3枚が取り付けられていた。

その後方は中央に排気用グリルがあり、これにも整流板10枚が取り付けられていたが、いずれの整流板も取り付け角度が変更でき、閉めることもできた。
排気用グリルの両側には点検用ハッチがあり、これでエンジンの点検を行った。
点検用ハッチは車体後面上部にもあったが、Sd.Kfz.231のように通気グリルは設置されていなかった。
大掛かりな点検が必要な時は、機関室の上面がボルト止め構造になっていたのでこれを取り外して行った。

車体後部下面にはエンジン始動用クランクシャフトの差し込み口ハッチがあり、その両サイドにはエンジン付き始動機を使うためのジョイントバーが装備されていた。
フェンダーは車体の上下接合線に合わせた大型のものとなり、側面にハッチを取り付けた雑具箱も兼ねていた。
形状は全ホイールをカバーする一体型だが、車体の前後分割線のところでやはり2分割されている。

車体前方にはパイプ製のバンパーが装備され、通常の丸型ライトおよびノテックライトは全て廃止され、両側(後に左側のみ)のフロント・フェンダーにボッシュ社製の管制ライトが装備された。
また発煙装置がフェンダーに装備されなくなり、代わりに燃料用ジェリ缶が多数装備されるようになった。
排気マフラーは新型となり、防熱カバーは装備されなくなった。
また右側フェンダー上面には機関室側面に、車体形状にフィットした工具箱が標準装備されていた。


●Sd.Kfz.234/1装甲偵察車

最初の計画通り、55口径2cm機関砲KwK38を搭載した車両がSd.Kfz.234/1装甲偵察車である。
もっともSd.Kfz.231装甲偵察車を踏襲して、最初の構想は密閉式砲塔ではなかったかと思われるが、そういう記述は見当たらない。
2cm機関砲用のオープントップ式砲塔は、Sd.Kfz.250/9装甲偵察車B型や38(t)偵察戦車に搭載されたのと同型で、これはエルビンクのシッヒャウ社によって設計された。

この砲塔は元々、Sd.Kfz.250/9装甲偵察車A型用砲塔に代わる生産向上型として開発されたもので、最大の特徴は砲架の俯仰軸が砲塔の左右に取り付けられている点にあった。
それ故、この砲架は「ヘンゲラフェッテ38」と呼ばれた。
これは直訳すれば「38型懸垂砲架」だが、一般的に「38型揺動砲架」という呼び名の方が通りが良い。

この砲架の中央に2cm機関砲KwK38が取り付けられ、左側に同軸機関銃として7.92mm機関銃MG42が装備された。
そして反対側には望遠鏡式照準機TZF3a(倍率2.5倍、視野8度)が装備されており、これは地上目標に対して1,200mまでの照準目盛が付けられていた。
この他、対空用として照準環も取り付けられていた。

砲塔の装甲厚および傾斜角は前面30mm/35度、側面8mm/35度、後面8mm/32度で、防盾は10mmであった。
砲塔内後部には左右にパイプフレームによるシートが懸架されており、右側が砲手用、左側が車長兼装填手用であった。

このフレームの間には車内通話機とFu.Spr.f無線機が取り付けられており、砲塔内の後部に無線機用のアンテナマウントがあった。
砲塔はベアリングと車輪によって砲塔リングに取り付けられており、砲手は砲架の右側にある円形ハンドルを操作し、ベヴェルギアとラック&ピニオンギアを通して砲塔を360度旋回させた。

このハンドルの後ろには右側に2cm機関砲KwK38用の、左側に7.92mm機関銃MG42用のトリガーがあった。
砲の俯仰角は、-4~+70度となっていた。
携行弾数は2cm機関砲弾が250発(10発入りマガジン)、7.92mm機関銃弾が2,400発であった。
この他9mm機関短銃MP40と、9mm機関銃弾が192発装備されていた。

Sd.Kfz.234/1装甲偵察車では小隊長または分隊長車のみにFu.12無線機が搭載されたが、Sd.Kfz.234/2装甲偵察車のように車体アンテナ基部は常設されていなかったので、この場合にのみアンテナ基部が追加装備された模様である。
Sd.Kfz.234/1装甲偵察車の全長は5.86m、幅2.33m、全高2.10mであった。
戦闘重量はSd.Kfz.234/2装甲偵察車より軽く、11.5tであった。


<Sd.Kfz.234/1装甲偵察車>

全長:    5.86m
全幅:    2.33m
全高:    2.10m
全備重量: 11.5t
乗員:    4名
エンジン:  タトラ103 4ストロークV型12気筒空冷ディーゼル
最大出力: 210hp/2,500rpm
最大速度: 80km/h
航続距離: 1,000km
武装:    65口径2cm機関砲KwK38×1 (250発)
        7.92mm機関銃MG42×1 (2,400発)
装甲厚:   5.5~30mm


兵器諸元


<参考文献>

・「パンツァー2010年9月号 ドイツ8輪重装甲車 プーマとSdkfz.234シリーズ」 久米幸雄 著  アルゴノート社
・「パンツァー2005年7月号 ドイツ8輪重装甲車 Sdkfz.234シリーズ」 稲田美秋 著  アルゴノート社
・「パンツァー2008年5月号 ドイツ8輪重装甲車シリーズ」 久米幸雄 著  アルゴノート社
・「ピクトリアル ドイツ装輪装甲車」  アルゴノート社
・「ジャーマン・タンクス」 ピーター・チェンバレン/ヒラリー・ドイル 共著  大日本絵画
・「グランドパワー2013年12月号 ドイツ8輪重装甲車(2)」 後藤仁 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2000年7月号 ドイツ8輪重装甲車(2)」 佐藤光一 著  デルタ出版
・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904~2000」  デルタ出版

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