Sd.Kfz.221装甲偵察車
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+開発
Kfz.13装甲偵察車/Kfz.14装甲無線車は、通常の乗用車シャシーを流用していたため不整地走破性能が悪く、戦闘車両としての耐久性にも不安があった。
そこでドイツ陸軍兵器局第6課は、装甲車両に適合するシャシーを新規に開発することとした。
これが1934年のことであった。
このシャシーは重兵員輸送車と共通化を図った統制型で、同一仕様で開発を進めるものとされた。
開発主旨の1つは、信頼性が高く堅牢であることだった。
具体的にはメンテナンスフリーで、オクタン価の低いガソリンを使用しても性能があまり低下しないことや、シンプルな軽量構造と部品の共通化により、修理や整備が容易にできることが要求された。
もう1つの開発主旨は、高性能ということである。
全ての駆動系/操作系に改良が要求され、安定した高い走行性能(特に不整地での)が求められた。
また、低燃費であることも条件の1つであった。
これらの条件はこの後さらに具体的に絞り込まれ、全輪駆動であること、全ての車輪はシングルタイヤであること、車軸にはゴムクッションが装備されていること、前輪と後輪の駆動は共通であること等が決定された。
シャシーの開発はツヴィッカウのアウト・ウニオン社ホルヒ部門で行われ、装甲車用シャシーのI型と重兵員輸送車用シャシーのII型が同時進行で設計された。
このI型とII型の違いは、エンジンおよびラジエイター等の機関部の配置が異なっているだけで、その他の仕様は全く同一であった。
II型は通常型車両用なので機関部は前方にあったが、装甲車用のI型はそれが後部に配置されていた。
このI型シャシーを使用した最初の装甲車両として開発されたのが、偵察任務を目的としたSd.Kfz.221装甲偵察車であった。
また、これに続くSd.Kfz.222/223/260/261も同じI型シャシーを用いて開発されているため、駆動/走行系の仕様はSd.Kfz.221装甲偵察車とほとんど変わっていない。
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+車体
Sd.Kfz.221装甲偵察車の装甲ボディの製作は、バド・オーエンハウゼンのヴェーザー精錬所により行われた。
全体が表面硬化型圧延装甲板による多面体溶接構造である点はKfz.13装甲偵察車と同じであったが、全体的に上下部に大きく2分割されており、上部は下側に、下部は上側に大きく装甲板を傾斜させたデザインとしていたため、乗用車のイメージから逸脱できていないKfz.13装甲偵察車とはこの点が大きく違っていた。
また本車には上面装甲があり、さらに回転銃座に連動する7角形の銃塔が存在した(動力は無い)。
Kfz.13装甲偵察車の場合、機関銃手は前方以外は半身が無防備であったが、Sd.Kfz.221装甲偵察車ではこの点が大きく改良されたといえよう。
ただしこの銃塔の上部は開放式で、手榴弾避けの左右開き式メッシュネット型のドアが前方部のみに装備されていた。
装甲板の厚さは全体的に8mmで、後部および車体上部のみ5mmだったとされているが、車体前面14.5mm、中間部上面6mm、後部および側面8mm、上面6mm、床5mm、銃塔は前面8mm、それ以外は5.5mmとする資料もある。
視察ヴァイザーは操縦手用に大型のものが車体前方に1つあり、左右に小型のものが1対あった。
その後方には方向指示器が取り付けられており、左側のヴァイザーの下にはスコップが標準装備されていた。
その他、視察ブロックが銃塔側面と側面後部に左右合計4個装備されていた。
また、視察ヴァイザーは当初圧延装甲板により製作されていたが、後にこれは鋳造製に変更されている。
同様に後期型では、銃塔の視察ブロックが装甲板に直接スリットを開けるタイプに変更され、装備箇所も両側面の2カ所のみとなった。
フェンダーは生産性を考慮した角型で、車内スペースが無いせいかフロント、リア共に後部に収納ボックスを装備していた。
フロント・フェンダー直後の車体側面には乗降用のドアが左右に装備されていたが、ここにも外側に収納ボックスが装備されていた。
ドアの後方は右側が予備タイヤを装備し、左側は大型の雑具箱を取り付けていた。
この箱の後ろには消火器が取り付けられ、直後のリア・フェンダーに通常はジャッキが装備されていた。
車体前面にはパイプ型の大きなバンパーがあり、その直後の車体にゲルリンゲンのロバート・ボッシュ社製の丸型前照灯(RKC130/12-825)が2個と、左側にホーンが装備されていた。
また後に、フェンダー上にノーテクライト(防空型前照灯)を追加装備した車両も多く見られる。
尾灯は、リア・フェンダーに取り付けられていた。
車体後部は、ラジエイター用通気のためにスリットグリルになっていた。
後部上面にはエンジン点検用ハッチがあり、側面にも通気用のハッチが装備されていた。
両側面ハッチの後方からはエンジン排気管が出ており、下部にある排気マフラーに接続されていた。
このマフラーの排気口は前方に向いており、排気煙が再び吸気されないように工夫されていた。
その他、機関室前の車体上面後方は格子状に組まれたグリルになっており、ラジエイターの配置からしておそらくここが吸気口で、後部が排気口と思われる。
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+駆動および走行装置
Sd.Kfz.221装甲偵察車のエンジンは、ホルヒ社製のV8-108 V型8気筒液冷ガソリン・エンジンを搭載した。
このエンジンは出力75hp/3,600rpm、排気量は3,517ccであった。
変速機のギアは前進5段/後進1段であったが、この他不整地走行用に低速切り替えギアが装備されていた。
サスペンションは独立懸架方式で、各ホイールにはアクスルとシャシー間に2対のコイル・スプリングが装備されており、サスペンションのスプリングの効きを抑制するためのアームが上部に追加装備されていた。
なおタイヤサイズは210×18となっており、ホイールの外側には三角おむすび型の防御装甲板がボルトで止められていた。
駆動は当初の仕様通り4輪駆動で、操向装置も前後輪に装備された。
操縦手用の操向ハンドルは、前方ヴァイザー用のスペース確保のため下向きに傾斜して取り付けられていた。
この方式は、後にSd.Kfz.250/251装甲兵員輸送車等に継承されている。
操向は2輪と4輪を切り替えることが可能で、これは操縦手席の右側にあったレバーによって操作された。
ただし4輪操向で高速走行する場合、横転する危険性があった。
これは重心が高いせいもあったが、高速性能が逆に仇となったともいえる。
このためか、後期型では4輪操向は廃止されてしまった。
いずれにしても構造・機構共に贅沢な内容で、ややオーバースペック気味であった感は否めない。
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+武装および車内装備
Sd.Kfz.221装甲偵察車の主武装は、銃塔に装備されたオーベルンドルフ・アム・ネッカーのマウザー製作所製の7.92mm機関銃MG34 1挺のみであった。
MG34は、Kfz.13装甲偵察車と同様な機関銃座に取り付けられていた。
機関銃座は円錐型の台座を床に固定しており、回転式機関銃架とサドルを装備する点はKfz.13装甲偵察車と同じであった。
機関銃架の両サイドには1対のアームが装備されていて、これを銃塔へ接続していた。
この他、副武装として車内には、エアフルトのエルマ製作所製の9mm機関短銃MP38またはMP40が1挺と、27mm信号弾発射ピストルを装備していた。
弾薬はMG用の7.92mm弾が1,050発(1,200発説もある)、MP用9mm弾が192発(350発説もある)、信号弾12発が車内に携行されており、この他に6本の手榴弾も装備されていた。
Kfz.13装甲偵察車と同じく乗員は操縦手と機関銃手(車長)の2名のみで、操縦手用シートは左側にあり、コンソールパネルは右側にあった。
無線機は搭載していないとする説と、Fu.Spr.Ger.aを搭載したとする説が存在する。
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+性能データ
Sd.Kfz.221装甲偵察車の車体サイズは全長4.80m、全幅1.95m、全高1.70m、戦闘重量は4.0tであった。
最大走行速度は路上で80km/h、不整地で40km/hとされている。
携行燃料は100〜110リットルで、最大航続距離は路上で320km、不整地で200kmであった。
7.92mm機関銃MG34の射界は360度旋回、および俯仰角は−10〜+69度であった。
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+生産
Sd.Kfz.221装甲偵察車は、1935年から1940年5月までに339両が生産された。
車体製造番号は、810001〜810800が割り当てられた。
なお、本車には武装を強化した派生型が存在したが、それらは1941年以降に改造されたもののようで、新たに生産されたものではないようである。
そのため、これらの車両数はごくわずかであった。
派生型の1つは、ヴァイマルのWGW社(Wilhelm Gustloff Werke:ヴィルヘルム・グストロフ製作所)製の、7.92mm対戦車銃PzB39を装備したもので、既存の7.92mm機関銃MG34に追加装備されたことになっているが、詳細は不明である。
もう1つは、マウザー製作所製の61.3口径2.8cm口径漸減砲sPzB41を車体上部前方に固定装備したもので、これは機関銃座を完全に撤去していた模様である。
銃塔は防御装甲として残されていたが、前方部が砲尾のために大きく切り欠かれており、旋回機能はもはや無意味だったので固定されていたものと思われる。
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<Sd.Kfz.221装甲偵察車>
全長: 4.80m
全幅: 1.95m
全高: 1.70m
全備重量: 4.0t
乗員: 2名
エンジン: ホルヒV8-108 4ストロークV型8気筒液冷ガソリン
最大出力: 75hp/3,600rpm
最大速度: 80km/h
航続距離: 320km
武装: 7.92mm機関銃MG34×1 (1,050発)
装甲厚: 5〜8mm
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兵器諸元
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<参考文献>
・「パンツァー2002年12月号 AFV比較論 Sdkfz.222 & AB41装甲偵察車」 斎木伸生 著 アルゴノート社
・「ピクトリアル
ドイツ装輪装甲車」 アルゴノート社
・「ジャーマン・タンクス」 ピーター・チェンバレン/ヒラリー・ドイル 共著 大日本絵画
・「グランドパワー2011年10月号 ドイツ4輪装甲車」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー1999年8月号 ドイツ4輪装甲車」 佐藤光一 著 デルタ出版
・「世界の軍用車輌(4)
装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版
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