+概要
Sd.Kfz.263装甲無線車は、Sd.Kfz.231装甲偵察車/Sd.Kfz.232装甲無線車と並行開発された指揮通信専用の8輪装甲車で、同じ特殊車両番号を持つ6輪装甲車に代わって部隊配備された。
この車両はSd.Kfz.231/232と異なり砲塔を装備しておらず、代わりに車体上部に固定式の戦闘室を取り付けていた。
戦闘室のデザインは、Sd.Kfz.231/232の砲塔基部の装甲板をそのまま上に延長したような形になっており、装甲厚は前面18mm、側/後面8mm、上面5.5mmとなっていた。
Sd.Kfz.263装甲無線車の生産当初は、Sd.Kfz.231/232用の装甲車体の砲塔基部上面を切り欠いて、その上に戦闘室の部分を溶接するようになっていたが、生産途中から車体側面と一体化した装甲板が用いられるようになった。
追加された戦闘室部分には上面と後面に左右開き式のハッチがあり、武装は前面右側にオーベルンドルフ・アム・ネッカーのマウザー製作所製の7.92mm機関銃MG34が1挺装備されているのみで、MGの上には照準孔ハッチ付きのヴァイザーが装備されていた。
この他、車内装備として7.92mm機関銃MG34が1挺と、エアフルトのエルマ製作所製の9mm機関短銃MP38またはMP40が1挺あり、携行弾薬数はMG用が1,050発でMP用が192発であった。
戦闘室の左右側面には、それぞれ前後に回転スライド式のガンポートが装備されていた。
Sd.Kfz.263装甲無線車は、Sd.Kfz.232装甲無線車と同じく車体上部にフレーム・アンテナを装備していたが、その形状はSd.Kfz.232装甲無線車のものとは異なっており、また車体後部デッキの右側に9mのウィンチマスト式アンテナが装備されていたのも大きな特徴の1つである。
Sd.Kfz.232装甲無線車と同様に、後にフレーム・アンテナは星型アンテナに換装されている。
無線機はFu.G.m.Pz.Fu.Tr.a(mot)が搭載されたが、この機材についての仕様は明らかではない。
会議などを行えるように、車内には折り畳み式の地図机なども収容されていた。
Sd.Kfz.263装甲無線車の全体寸法はSd.Kfz.232装甲無線車と同じで、全長5.85m、全幅2.20m、全高2.90m、乗員は1名追加されて5名となっていた。
重量と速度は資料によって異なっており、戦闘重量8.1t、路上最大速度100km/hとする資料や、戦闘重量8.68t、路上最大速度85km/hとする資料もある。
エンジンはSd.Kfz.231/232と同じく、ベルリン・オーバーシャイネヴァイデのビューシンクNAG社製のL8V V型8気筒液冷ガソリン・エンジンだが、シリンダー径を110mmに増加させた出力向上型が搭載されていた。
製造コストは、Sd.Kfz.232装甲無線車が52,980ライヒスマルクであったのに対しわずかに高く、57,000ライヒスマルクであった。
Sd.Kfz.263装甲無線車の生産は、キールのドイツ製作所とエルビンクのシッヒャウ社で1938年4月から開始され、1938年中に64両、1939年に20両、1940年は0で1941年に8両、1942年に108両、1943年は3月までに40両と合計240両が製作された。
Sd.Kfz.263装甲無線車の車体製造番号は、Sd.Kfz.231/232の中に含まれている。
形態変化はSd.Kfz.231/232に準ずると思われるが、全く同じ変化ではなかったようである。
いずれにしろ、今のところ本車における後期生産車の確認例は無い。
Sd.Kfz.263装甲無線車は、機甲師団の本部通信小隊や機甲通信大隊へ主に配備された。
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