+概要
ドイツ陸軍の6輪装甲車シリーズの中でも、他と一線を画すのがこのSd.Kfz.263装甲無線車である。
Sd.Kfz.232装甲無線車では無線機を追加したことによる居住性の悪化が問題となったため、それに対応するために開発されたのがこのSd.Kfz.263装甲無線車で、いわば無線通信専用車として主武装の2cm機関砲を外し、砲塔を固定式として余剰スペースを稼ぎ出している。
車体上にフレーム・アンテナが設けられているのはSd.Kfz.232装甲無線車と同じだが、砲塔が固定式となったため旋回ピボットを持たない単純な支柱に変わったので、容易に識別することができる。
さらに、砲塔上面のハッチ右横に伸縮式のウィンチ・マストアンテナが装備されているのも、このSd.Kfz.263装甲無線車の特徴である。
武装は、固定式砲塔の防盾に備えられた自衛用の7.92mm機関銃MG13 1挺のみで、乗員はSd.Kfz.231/232が4名だったのに対し、1名増加した5名となっている。
Sd.Kfz.263装甲無線車の生産数は28両で自動車化通信大隊に配備され、1939年9月のポーランド侵攻作戦(Unternehmen Weiß:白作戦)から実戦に投入された古参兵だが、実戦参加前からその能力不足は明らかであった。
Sd.Kfz.263装甲無線車の後継となった8輪重装甲車が同じ特殊車両番号を与えられていることからも、本車は8輪重装甲車の実戦配備と共に退役させる計画であったと思われる。
しかし慢性的な車両不足に悩むドイツ陸軍は、低性能とはいえまだ第一線で立派に使用することのできる車両を退役させることにも抵抗があったようで、これが電撃戦の緒戦での運用に繋がったのであろう。
しかし8輪重装甲車の生産が軌道に乗ったこともあってか、1940年5~6月のフランス侵攻作戦を境に第一線を退く車両が増え、後方での任務に回されている。
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