Sd.Kfz.231(8-Rad)装甲偵察車
|
|
+概要
Sd.Kfz.231/232/263の6輪装甲車シリーズを運用した結果、ドイツ陸軍兵器局は来るべき自動車化師団の偵察大隊には小型で軽快な装甲車と、車内容積の拡大を図り装備を充実することができる大型の装甲車の2種類が必要という結論に達した。
この結論に基づいて、4輪装甲車と8輪装甲車を新規開発することが決定された。
この内8輪装甲車の方は、1934年初めにベルリン・オーバーシャイネヴァイデのビューシンクNAG社に対して、「統制型国防軍重不整地用貨物車」の呼称で、新型シャシーの開発を要求したことから計画が始まった。
すでに同社は1920年代末に10輪装甲車の開発を行っており、その技術データを基に8輪操向、8輪駆動で後方にも操縦装置を備える、高度な機能を有したシャシーを1934年末に完成させた。
この新型シャシーは「GS型」と呼ばれるもので、同社製のL8V V型8気筒液冷ガソリン・エンジン(排気量7,913cc、出力150hp)を車体後部に備え、ZF社(Zahnradfabrik
Friedrichshafen:フリードリヒスハーフェン歯車製作所)製の変速機に差動装置を介して4軸全てを駆動させ、2輪一組としてリーフ・スプリングで支えることで全輪を独立懸架とし、さらに全ての車輪を操向することで、旋回半径は車体長よりわずかに長い6m前後に抑えられていた。
さらに、シャシー前部とエンジン直後にそれぞれ独立した操縦装置を設けることで、旋回すること無く後方に向けて走行することが可能であった。
このGS型シャシー開発と時を同じくして、キールのドイツ製作所に対して8輪用装甲ボディの開発が命じられ、ビューシンク社と連絡を取りながらやはり1934年には完成し、試作車は2両が発注され、それぞれ「Vs.Kfz.623」と「Vs.Kfz.624」の試作番号が与えられて1935年には完成を見た。
両車は同一の仕様であったが、Vs.Kfz.264は車内に無線機を収容した無線型というのが相違点であった。
試作車を用いた試験は1935年9月末まで続けられ、1936年末から生産が開始された。
その後、1937年にそれぞれ「Sd.Kfz.233」と「Sd.Kfz.234」の特殊車両番号が一旦与えられたが、これら8輪装甲車は従来の6輪装甲車の後継車両という位置付けのため、特殊車両番号も6輪装甲車と同じものを引き継ぐことになり、1939年10月にそれぞれ「Sd.Kfz.231」と「Sd.Kfz.232」に改称された。
上記の2社がそれぞれシャシー、装甲ボディを製作し、エルビンクのシッヒャウ社が最終組み立てを行い、1943年9月までにSd.Kfz.231/232合計で607両が生産された。
装甲ボディの装甲厚は前面15mm、側面8mm、後面10mm、上面5mmと小銃弾や弾片防御程度であったが、これは後の1940年初めに車体前/後面に増加装甲を装着して強化が行われ、さらに1942年5月からの生産車では、車体前面の装甲厚が30mmに増加されることになった。
この結果戦闘重量が増加したので、走行性能の低下を避けるため、エンジンの出力を180hpに強化した改良型エンジンが使用されることになった。
砲塔の装甲厚は前面14.5mm、側/後面8mm、上面6mmとなっていたが、装甲ボディと同様に1942年5月以降の生産車では、前面の装甲厚は30mmに強化が図られている。
砲塔防盾には、デュッセルドルフのラインメタル・ボルジヒ社製の55口径2cm機関砲KwK30(生産途中から、オーベルンドルフ・アム・ネッカーのマウザー製作所製のKwK38に変更)と、マウザー製作所製の7.92mm機関銃MG34を同軸に装備していた。
またSd.Kfz.231/232は、従来の6輪装甲車に比べて車体サイズが大型化したことで内部に余裕ができたため、ドイツ軍装甲車として初めて砲塔バスケットが採用された。
|
<Sd.Kfz.231(8-Rad)装甲偵察車 初期型>
全長: 5.85m
全幅: 2.20m
全高: 2.35m
全備重量: 8.3t
乗員: 4名
エンジン: ビューシンクNAG L8V 4ストロークV型8気筒液冷ガソリン
最大出力: 150hp/3,000rpm
最大速度: 90km/h
航続距離: 300km
武装: 55口径2cm機関砲KwK30×1
7.92mm機関銃MG34×1
装甲厚: 5.5〜14.5mm
|
<Sd.Kfz.231(8-Rad)装甲偵察車 後期型>
全長: 5.85m
全幅: 2.20m
全高: 2.35m
全備重量: 8.3t
乗員: 4名
エンジン: ビューシンクNAG L8V 4ストロークV型8気筒液冷ガソリン
最大出力: 180hp/3,000rpm
最大速度: 90km/h
航続距離: 300km
武装: 55口径2cm機関砲KwK38×1
7.92mm機関銃MG34×1
装甲厚: 5.5〜30mm
|
<参考文献>
・「パンツァー2014年1月号 AFV比較論 M8 vs Sdkfz.231装甲偵察車」 久米幸雄 著 アルゴノート社
・「パンツァー2008年5月号 ドイツ8輪重装甲車シリーズ」 久米幸雄 著 アルゴノート社
・「パンツァー2012年9月号 ドイツAFVアルバム(369)」 箙公一 著 アルゴノート社
・「ピクトリアル
ドイツ装輪装甲車」 アルゴノート社
・「グランドパワー2000年6月号 ドイツ8輪重装甲車(1)」 佐藤光一 著 デルタ出版
・「世界の軍用車輌(4)
装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版
・「グランドパワー2012年1月号 ドイツ8輪重装甲車」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「戦車名鑑 1939〜45」 コーエー
|
関連商品 |