ソ連軍は戦後の機甲部隊の装備改編にあたり、第2次世界大戦中の装備性能のスケールアップを基本に考えていたところがあり、戦時中の主力戦車だった85mm戦車砲搭載のT-34-85中戦車に対し、100mm戦車砲搭載のT-54中戦車を戦後の主力戦車として開発するといった具合だった。 これは主力戦車を支援する自走砲についてもいえることで、戦時中の100mm対戦車砲搭載のSU-100駆逐戦車に対して、戦後は主力戦車をベースとしたより強力な駆逐戦車が必要と考えた。 こうした構想の下に1949年にT-54中戦車をベースに開発されたのが、122mm対戦車砲を搭載するSU-122-54駆逐戦車で、以前には「IT-122」と西側で呼ばれていたものである。 SU-122-54駆逐戦車は1954〜56年と極めて短期間に生産されたもので、その実態はこれまであまり知られてこなかった。 本車は主力戦車を支援するため、敵戦車や硬目標に対する遠距離砲戦能力を重視して開発されたもので、主砲にはIS-3重戦車やT-10重戦車に搭載された122mm戦車砲を基に、ペトロフ砲兵設計局で新規に開発された48.7口径122mm対戦車砲M-49Sが採用されていた。 本車の製作要領は、戦時中の駆逐戦車と同じくベースとなったT-54中戦車の砲塔を取り去り、車体上部に固定式戦闘室を設けて、戦闘室前部の球状砲架に122mm対戦車砲を限定旋回式に搭載していた。 全体的なデザインはそれこそSU-100駆逐戦車をリファインしたようなもので、戦時中の駆逐戦車のコンセプトを継承していた。 主砲の右後方に位置する車長用キューポラには、当時のソ連軍の自走砲としては異例の基線長式測遠機(ステレオ・レンジファインダー)が装備され、スタジア・メトリック式照準・測遠機を持つ他のソ連軍戦車より、1,000m以上の射程において正確な距離測定が行えた。 また防盾右側の同軸と主砲左後方の電動式対空機関銃キューポラには、14.5mm重機関銃KPVTが副武装として装備されていた。 以上のような内容を持つ本車であるが、制式採用されたことが明白なのに未だにその使用実態が明らかではない。 1950年代には軍直轄の戦車駆逐連隊または旅団に装備されたという説や、1970年代に至ってもT-55中戦車を主装備とする戦車師団には、各大隊当たり1個小隊(3両程度)のSU-122-54駆逐戦車の配属がなされようとしたなどの説があるが、いずれも定かではない。 ただ後にその多くが主砲や防盾が外されて、戦車回収車に改造されて親衛戦車師団に配属されたことは写真などから明らかになっている。 |
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<SU-122-54駆逐戦車> 全長: 9.97m 車体長: 6.45m 全幅: 3.27m 全高: 2.06m 全備重量: 36.0t 乗員: 5名 エンジン: V-54 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル 最大出力: 520hp/2,000rpm 最大速度: 48km/h 航続距離: 400km 武装: 48.7口径122mmライフル砲M-49S×1 (35発) 14.5mm重機関銃KPVT×2 (600発) 装甲厚: 30〜100mm |
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<参考文献> ・「パンツァー2001年6月号 ソ連・ロシア自走砲史(9) 戦後型自走砲開発の模索期」 古是三春 著 アルゴノー ト社 ・「パンツァー2018年9月号 戦車の内部撮影(SU-122-54編)」 武宮三三 著 アルゴノート社 ・「グランドパワー2020年5月号 赤の広場のソ連戦闘車輌写真集(5)」 山本敬一 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2019年4月号 ソ連軍主力戦車(1)」 後藤仁 著 ガリレオ出版 ・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」 デルタ出版 ・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 齋木伸生 著 光人社 |
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