スティングレイII軽戦車
|
|
+概要
スティングレイII軽戦車は、ルイジアナ州スライデルのテクストロン・マリーン&ランドシステムズ社(旧キャディラック・ゲージ社)が、1996年に自社資金で開発した輸出用軽戦車である。
名前からも分かるように、同社がタイ陸軍に106両(1986〜90年引き渡し)販売したスティングレイI軽戦車の改良型である。
本車は前作と同様、経済的に貧しい途上国をメインターゲットにした輸出用軽戦車という位置付けなので、既存のコンポーネントを多用して、調達コストと運用コストを低減することに努力が払われている。
ただし性能は、戦後第2世代MBT(主力戦車)を優位に撃破可能なだけの能力を秘めている。
スティングレイI軽戦車からの主な改良点は、装甲防御力の強化とFCS(射撃統制装置)の近代化にある。
車内レイアウトは車体前部が操縦室、車体中央部が全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室、車体後部が機関室というオーソドックスなもので、砲塔内には右側前部に砲手、その後方に車長、左側に装填手が位置する。
車体と砲塔は基本的に圧延防弾鋼板の全溶接構造であるが、さらに最新の2001特殊高硬度鋼板で作られた装甲パッケージが装着されている。
これが本車の目玉で、車体と砲塔の前面は旧ソ連製の23mm機関砲弾の直撃に耐えられるという(スティングレイI軽戦車の装甲防御力は、旧ソ連製の14.5mm重機関銃弾に耐えるレベル)。
さらに車体の左右側面を守るため、防弾サイドスカートも装着されている。
この状態で、戦闘重量は22.2tである。
さらに、ユーザーが市街戦用の重装甲を望むのであれば増加装甲パッケージも用意されていて、普通の工具だけで2〜4時間もあれば取り付けられる。
パッケージの総重量は約4tもあり、旧ソ連製のRPG携帯式対戦車無反動砲の攻撃にも耐えられる。
本車のFCSは、移動目標に対する高い初弾命中率を誇る、M1A1エイブラムズ戦車用のディジタルFCSが搭載されている。
砲手用サイトは2軸が安定化された、マサチューセッツ州ウォルサムのレイセオン社製のHIRE昼/夜間暗視サイト(熱線暗視装置とレーザー測遠機内蔵)で、補助サイトに倍率6.2倍の望遠鏡を備えている。
車長用サイトは、ヴァージニア州ウェストフォールズチャーチのノースロップ・グラマン社製のM36E1昼/夜間兼用サイトで、砲手用のHIREサイトの夜間映像も自身のモニターで見ることができる。
また、車長用キューポラの周囲には7基のペリスコープが備えられており、全周視察ができる。
主砲は、イギリスの王立造兵廠が軽戦車用に開発した51口径105mm低反動ライフル砲LRF(Low-Recoil Force:低反動)で、主砲用弾薬は32発(即用は8発)を搭載している。
副武装は主砲と同軸に、ベルギーのFN社のアメリカ支社製の7.62mm機関銃M240を装備しており、車長用キューポラにも対空用として、ユタ州オグデンのブラウニング火器製作所製の12.7mm重機関銃M2を装備している。
主砲と砲塔の駆動機構は、電気油圧式となっている。
機関は、ミシガン州デトロイトのジェネラル・モータース(GM)社デトロイト・ディーゼル部門製の、8V-92TA V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジンと、GM社アリソン変速機部門製の、XTG-411自動変速機(前進4段/後進2段)を組み合わせたパワーパックが採用されている。
エンジンはスティングレイI軽戦車と同じであるが、重量が増加したのに対応して出力が535hpから550hpに強化されている。
足周りは片側6個の中直径転輪と、片側3個の上部支持輪の組み合わせとなっており、改良型の独立トレイリング・アーム・サスペンションで懸架されている。
履帯は幅360mmのタイプが標準であるが、増加装甲を取り付けた時には、重くなった車体の接地圧を下げて踏破力を確保するために幅460mmの幅広タイプと交換できる。
スティングレイII軽戦車には、同じくテクストロン・マリーン&ランドシステムズ社が開発した、LAV-105砲塔を搭載したタイプも開発されている。
このタイプはニューヨーク州のウォーターヴリート工廠が開発した、自動装填装置付きの51口径105mm低反動ライフル砲M35を備え、乗員は3名で、独自のラミネイト装甲で防御力が強化されている。
この場合の戦闘重量は、25.5tになる。
|
<スティングレイII軽戦車>
全長: 9.296m
車体長: 6.446m
全幅: 2.705m
全高: 2.553m
全備重量: 22.6t
乗員: 4名
エンジン: デトロイト・ディーゼル8V-92TA 2ストロークV型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 550hp/2,300rpm
最大速度: 70.81km/h
航続距離: 450km
武装: 51口径105mm低反動ライフル砲LRF×1 (32発)
12.7mm重機関銃M2×1 (1,100発)
7.62mm機関銃M240×1 (2,400発)
装甲厚:
|
<参考文献>
・「パンツァー2010年1月号 最後の軽戦車スティングレイ AGS計画から輸出用へ」 柘植優介 著 アルゴノート
社
・「パンツァー2007年6月号 現在注目されている低反動砲」 佐藤慎ノ亮 著 アルゴノート社
・「パンツァー2013年8月号 第二次大戦後の軽戦車の展望」 大竹勝美 著 アルゴノート社
・「パンツァー2001年8月号 アメリカのAGS試作車輌」 アルゴノート社
・「世界AFV年鑑 2005〜2006」 アルゴノート社
・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後〜現代編」 デルタ出版
・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版
・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著 三修社
|