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スターストリーク対空ミサイル・システム





●開発

イギリス陸軍は1970年代前半にレイピア対空ミサイル・システムを実用化したが、やがて航空機、特に奇襲性に優れた攻撃ヘリの発達から次世代の前線対空ミサイルの必要性が高まり、その要求項目が提示された。

1.暴露時間の短縮
2.ミサイルの飛翔時における高い機動性
3.高い目標破壊能力
4.敵の攻撃ヘリの武装をアウトレンジできる射程(旧ソ連のMi-24ハインドを基準に設定し、ハインドの対戦車ミ
  サイルの射程を5〜6kmと見積もっている)

これらの要求を受けてRARDE(Royal Armament Research and Development Establishment:王立武器研究開発局)が検討を重ねた結果、およそマッハ4の飛翔速度を有するミサイルならば前述の要求を満たすことが明らかとなったのである。
同じ頃、ショーツ・ミサイル・システムズ(SMS)社では次世代の対空ミサイル・システムの模索を続けており、1982年から「S14」と命名した技術試験用ミサイルを用いて試験を重ねていた。

同社は奇しくもイギリス陸軍と同様に将来の脅威を攻撃ヘリと位置付けており、先の陸軍の要求に合ったシステムを提示することができたわけである。
イギリス国防省はSMS社の技術的提案に興味を示し、1984年に新世代前線対空ミサイル・システムの開発を「スターストリーク」として承認し、SMS、ブリティッシュ・エアロスペースの2社と研究契約を交わした。
そして1986年の終わりにSMS社のプランが採用され、開発が正式にスタートすることになった。

1995年10月に、アルヴィス社(現BAEシステムズ・ランド&アーマメンツ社)製のストーマー装軌式装甲車の車体にスターストリークのターレットが搭載され、運用試験のためにイギリス陸軍に引き渡されたが、その結果問題点を解決した上1997年から本格的な配備が開始された。
明らかにされた問題点とは、本来レーザー・ビームに乗るはずの3本のダーツが1本しか誘導できなかったことと、ストーマー装甲車の車体とターレットとの統合に不具合が生じたことだったとされている。


●構造

「スターストリーク」というのは輸出用の商品名で、イギリス軍での本ミサイルの名称は「SP HVM」(Self-Propelled High Velocity Missile:自走式高速ミサイル)である。
高速ミサイルというだけあって、ミサイルの最大飛翔速度はマッハ3.5に達する。
ミサイル本体は、2段式の固体燃料ロケット・モーターから成っている。

ミサイル発射機から発射される時に使用される1段目モーターは、ミサイルが発射機のチューブから出た段階で直ちに切り離され、その後2段目のTITUSブースト・モーターが点火、短時間で最大速度にまでミサイルを持っていく。
ミサイルの最大有効射程は、約7,000mとされている。
誘導方式はレーザー・ビーム・ライディングで、レーザー照射機はミサイル発射機に装備されている。

射手は照準機で目標を捕捉し、ジョイスティックを操作して視界内の目標に照準を合わせてロックオンすることになる。
発射されたミサイルはレーザー・ビームを捉え、それに乗って(つまりライディングして)目標に向かっていく。
ミサイルの先端は、3本のダーツ状の飛翔物が剥き出しで取り付けられている。

俗称「スティング」(Sting:針・毒牙)と呼ばれるこのダーツは長さ45cm、直径2cmの小さいものだが、内部にジャイロや遅延信管、レーザー・レシーバー、そしてHE弾頭までが収められており、さながらミサイルの縮小版である。
ミサイルが目標に接近しモーターの燃焼が治まると、この3本のダーツが分離し目標に命中する仕組みである。
それぞれのダーツには推進装置は装備されておらず、切り離された後の慣性で飛翔するようになっている。


●派生型

スターストリークは車両搭載用のターレット・システムとなっており、イギリス陸軍ではストーマー装軌式装甲車の車体に搭載されている。
このため前線運用のために必要な装甲防御力が得られ、かつ非常に高い機動力を発揮することができる。
ターレットは中央部にパッシブ赤外線サイトがあり、左右に4発ずつ計8発のミサイルが装備されている。

車体には独立した射手用の光学サイトが装備されており、車内に予備ミサイル12発を収容している。
スターストリーク・ターレットはストーマー装甲車だけでなく、同規模の車両なら何にでも搭載可能である。
ストーマー車体を用いた自走型スターストリークは現在、イギリス陸軍砲兵の第12(防空)連隊に配備されており、今後も配備部隊は増える予定である。

SMS社はこの他にも歩兵携帯用の肩撃ち式と、3発のミサイルを収めた軽量携帯型も提案しているが、開発の重点は装軌式AFVや、ソフトスキンも含めた装輪式車両をプラットフォームにした自走型に移している。
さらに目標の探知・追尾・交戦の過程を完全に自動化した艦載型スターストリークを、艦艇の近接防御兵器として提案している。

一方攻撃ヘリの自己防御能力向上の一環として、アメリカ陸軍もスターストリークの試験を1995年より開始し、1996年にはアリゾナ州のユマ試験場でAH-64アパッチからの発射試験を行った。
しかし、この時の試験結果からヘリとスターストリークに統合上の問題が確認されたとして、以降の試験を中止とする決定を下している。


<スターストリーク対空ミサイル>

全長:       1.397m
直径:       0.127m
翼幅:       0.25m
発射重量:    20kg
最大飛翔速度: マッハ3.5
誘導方式:    レーザー・ビーム・ライディング
有効射程:    300〜7,000m


<参考文献>

・「パンツァー2012年6月号 ロンドン・オリンピックに参加する対空ミサイル スターストリーク」 大竹勝美 著
 アルゴノート社
・「パンツァー1999年9月号 対空ミサイル スターストリーク」 小林直樹 著  アルゴノート社
・「パンツァー2002年12月号 サトリ2002に展示された英独車輌」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2018〜2019」  アルゴノート社
・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著  三修社
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社
・「最新陸上兵器図鑑 21世紀兵器体系」  学研
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「ミサイル事典」 小都元 著  新紀元社


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