HOME研究室(第2次世界大戦後~現代編)装軌/半装軌式装甲車装軌/半装軌式装甲車(西ドイツ/ドイツ)>SPz.11-2クルツ装甲偵察車

SPz.11-2クルツ装甲偵察車





第2次世界大戦が終了して間もなく、フランスのオチキス社は偵察を主目的とした装軌式の多目的軽装甲車両の開発に着手した。
この車両は「TT6-52」、「CC2-52」としてフランス陸軍が試験を行ったが採用には至らなかった。
しかし1950年代半ばに再編された西ドイツ陸軍が本車に興味を持ち、試験を実施した後、オチキス社に同車の改良を要求した上で購入を決定した。

生産は1958年からパリのオチキス社の工場で開始され、1962年までに2,400両が完成したが、この中の一部は西ドイツのKHD(クレックナー・フンボルト・ドゥーツ)社でノックダウン生産が行われている。
基本型である「SPz.11-2」(Schützenpanzer 11-2:歩兵戦闘車11-2型)「クルツ」(Kurz:短い)は偵察型として生産されたもので、圧延防弾鋼板の溶接構造の車体の前部左側に操縦室が設けられ、前部右側にはオチキス社製ガソリン・エンジン(出力164hp)と変速機などが収められた機関室が配されていた。

車体中央部にはフランスのイスパノ・スイザ社製の86口径20mm機関砲HS820を装備する、2名用の全周旋回式砲塔が搭載されており、20mm機関砲は-20~+75度の俯仰角を有し、旋回と俯仰は手動で行われた。
乗員は車長、砲手、操縦手、無線手、小銃手の5名で、車体後面には観音開き式のドアが設けられていた。
サスペンションはトーションバー(捩り棒)方式が採用され、足周りは片側5個の転輪と3個の上部支持輪、前方起動輪、後方誘導輪の組み合わせとなっていた。

SPz.11-2装甲偵察車はその後、装輪式のSPz.2ルクス装甲偵察車の実戦化に伴い1978年に現役を退いた。
なお、本車には81mm迫撃砲を搭載したSPz.51-2自走迫撃砲、SPz.22-2砲兵観測車、SPz.2-2装甲救急車、SPz.クルツ装甲輸送車の4種類の派生型が存在した。
SPz.51-2自走迫撃砲は砲塔を外して車体中央に81mm迫撃砲を装備し、自衛用として7.62mm機関銃を装備していた。

81mm迫撃砲は左右各30度ずつの旋回角、+45~+90度の俯仰角を備え、車内に50発の弾薬を収容していた。
SPz.22-2砲兵観測車は砲塔を外して車内に無線機を2基追加しており、乗員はSPz.11-2装甲偵察車と同じく5名となっていた。
SPz.2-2装甲救急車は車内に担架2床を装備しており、乗員は看護兵2名と操縦手の3名となっていた。
武装は無く、必要に応じて車体上面に担架2床を装着することも可能であった。

SPz.クルツ装甲輸送車は、車体長を縮めて転輪を片側4個として操縦室のみに装甲を施したもので、車体後部に貨物類を搭載する車両であったが、これら各型の個別の生産数は不明で先の生産数2,400両の中に含まれている。
また90mm戦車砲を搭載した対戦車型や、フランス製のクロタル対空ミサイルを装備する対空型も試作されたが、採用には至っていない。


<SPz.11-2装甲偵察車>

全長:    4.51m
全幅:    2.28m
全高:    1.97m
全備重量: 8.2t
乗員:    5名
エンジン:  オチキス 直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 164hp
最大速度: 58km/h
航続距離: 390km
武装:    86口径20mm機関砲HS820×1 (500発)
装甲厚:   8~15mm


<参考文献>

・「パンツァー2014年7月号 西ドイツ Spz11-2装甲偵察車」 城島健二 著  アルゴノート社
・「パンツァー2014年6月号 創世記の西ドイツ軍AFV」 前河原雄太 著  アルゴノート社
・「パンツァー2017年9月号 西ドイツ軍戦車概史(後)」 古峰文三 著  アルゴノート社
・「パンツァー2018年6月号 幻の東部戦線(15)」 古峰文三 著  アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート9 レオパルト1と第二世代MBT」  アルゴノート社
・「世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車輌:1918~2000」  デルタ出版
・「戦車名鑑 1946~2002 現用編」  コーエー
・「世界の戦車・装甲車」 竹内昭 著  学研
・「世界の戦車完全図鑑」  コスミック出版


HOME研究室(第2次世界大戦後~現代編)装軌/半装軌式装甲車装軌/半装軌式装甲車(西ドイツ/ドイツ)>SPz.11-2クルツ装甲偵察車