SIDAM25対空自走砲は、イタリア陸軍の要求に沿ってオート・メラーラ社が開発した近接対空火器システムである。 試作システムの技術試験が開始されたのは1983年のことで、1986年には最終試験へと進んでいる。 生産型砲塔の製作は1988年から始められ、1989年には最初の生産型システムがイタリア陸軍に配備されている。 現在までに、275両のSIDAM25対空自走砲がイタリア陸軍向けに生産されたと見られている。 システムのメインとなる砲塔は、防弾アルミ板の溶接構造で1名が搭乗する。 搭載される機関砲はエリコン・イタリアーナ社製の80口径25mm対空機関砲KBA-Bで、砲塔の左右に各2門ずつ合計4門を外装式に搭載する。 機関砲カバーの側面には排莢用のハッチが設けられており、射撃時にはこれを開いて排莢を行うようになっている。 25mm対空機関砲の発射速度は1門当たり600発/分で、4門合計で2,400発/分にも達する。 射撃モードは単発、連発、そして15発または25発のバースト射撃を選択できる。 最大射程は約2,500m、有効射程は2,000mとされている。 砲塔は全周旋回が可能で、旋回速度は最大で120度/秒となっている。 機関砲の俯仰角は−5〜+87度となっており、俯仰速度は最大で100度/秒となっている。 即用弾として、2秒バースト8回分に相当する600発のHEI(焼夷榴弾)を搭載している。 また4門の機関砲の内2門にはデュアル・フィード機構が備えられており、地上目標用のAPDS(装弾筒付徹甲弾)とHEIの給弾切り替えが可能となっている。 このため、HEIとは別にAPDSの即用弾30発を搭載している。 砲塔には低光量TVによる照準装置が備えられており、目標を自動的に追尾する能力を持っている。 この他にディジタル射撃統制コンピューターに接続されたレーザー測遠機を装備しているが、全天候能力は持っていない。 イタリア陸軍ではこのSIDAM25砲塔システムを、アメリカ製のM113装甲兵員輸送車の車体に搭載して運用している。 車体のレイアウトは基本的にM113装甲兵員輸送車のものが踏襲されており、車体上面中央部に25mm機関砲4門を装備する全周旋回式砲塔が搭載されている。 乗員は3名で車長は砲塔に、砲手は車体後部の兵員室に設けられた砲手席に乗る。 車体前部左側には操縦手席があり、前部右側にはパワーパックが収められている。 操縦手席の後方、車体左側には補助動力装置が搭載され、右側には射撃統制コンピューター、TV追尾用電子装置、無線機等が置かれており、一番後ろ寄りには砲手用コンソールが置かれている。 もちろんM113装甲兵員輸送車だけではなく、国産のVCC-80歩兵戦闘車やC13装甲兵員輸送車といった車両にも容易に搭載することができる。 |
|||||
<SIDAM25対空自走砲> 全長: 5.041m 全幅: 2.686m 全高: 1.828m 全備重量: 15.1t 乗員: 3名 エンジン: デトロイト・ディーゼル6V-53T 2ストロークV型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 275hp/2,800rpm 最大速度: 64.37km/h(浮航 5.79km/h) 航続距離: 550km 武装: 80口径25mm対空機関砲KBA-B×4 (630発) 装甲厚: 28.58〜38.1mm |
|||||
<参考文献> ・「パンツァー2011年4月号 AFVの主力火器 エリコンの車載機関砲」 加藤聡 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2009年7月号 対空自走砲の歴史と現状」 坂本雅之 著 アルゴノート社 ・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」 デルタ出版 ・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー |
|||||