シュナイダー突撃戦車
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+シュナイダーCA1突撃戦車
イギリス陸軍のE.D.スウィントン大佐がイギリス戦争省に戦車を提案していたのと時を同じくして、アメリカのホルト製作所製の装軌式牽引車ホルト・トラクターの実験を見学したフランス陸軍のJ.E.エスティエンヌ大佐(後の将軍)も、戦車の開発を計画していた。
エスティエンヌ大佐はフランス陸軍総司令官ジョフレ大将の合意を得て、ル・クルーゾのシュナイダー社に装軌式装甲車両の開発を開始させた。
フランスにとって初の戦車の設計はアメリカ製のホルト・トラクターを基に、シュナイダー社のウージェーヌ・ブリエとエスティエンヌ大佐が共同で行った。
1915年の初めにシュナイダー社はホルト製作所からホルト・トラクター2両を購入して、1両はハーフトラックに、もう1両は車体を小型化して不整地での機動性を高めた車両にそれぞれ改装作業を行った。
この車両は完成後、時のフランス大統領レイモン・ポアンカレの前でその走行性能を披露した。
これに感銘したポアンカレ大統領は車両に装甲を施すことを命じ、さらにシュナイダー社自身もすでに膠着状態となっていた塹壕戦において有効な行動を可能とすべく、車体前部にワイアー・カッターを装着し、車体後部には尾橇を付けて塹壕を容易に越えられるようにするなどの改良が盛り込まれた。
製作された2両の試作車は1916年2月にフランス陸軍関係者に公開されたが、試作車の内1両には機関銃が装備されていた。
この公開試験において試作車は高い能力を見せ付け、早速400両が「シュナイダーCA1突撃戦車」として発注されることとなった。
この際同年11月までに全車を納入すべしという但し書きが付けられ、続いて400両が追加発注された。
さらに生産前に機関銃よりも75mm砲の方がより強力という判断が下され、生産型ではシュナイダー社製の9.5口径75mm加農砲を装備して完成させることとなった。
しかしシュナイダー突撃戦車の生産は遅々として進まず、1916年10月にようやく最初の生産型1両がフランス陸軍に引き渡され、実戦に参加したのは1917年4月16日のセミ・ド・ダムの戦いが初陣であった。
この戦闘には132両のシュナイダー突撃戦車が投入されたが、 少なくとも57両が撃破されたようである。
シュナイダー突撃戦車は装甲が薄く材質も粗悪だったため、ドイツ軍の対戦車銃に容易に撃ち抜かれてしまい、さらに車体の加熱によって燃料タンクが自然発火してしまう重大な欠点も抱えていた。
シュナイダー突撃戦車はホルト・トラクターの足周りをそのまま踏襲し、上部にボート型の小型装甲車体を設けるという単純な構造であり、車体後部には観音開き式のハッチがあり、車体前部左側にシュナイダー社製の直列4気筒液冷ガソリン・エンジン(出力76hp)、前部右側に操縦手席が配されていた。
車体後部には前進3段/後進1段の変速・操向機が置かれており、エンジンの動力は推進軸を介して変速・操向機に伝達され、後部に配置された起動輪を駆動させるようになっていた。
乗員は車長兼操縦手、副車長、砲手、装填手、機関銃手2名の計6名となっていた。
シュナイダー突撃戦車の車体前部右側には段差が付けられており、75mm加農砲が限定旋回式に装備されていた。
この砲は旋回角が20度と非常に小さく、実用性に問題があった。
俯仰角は−10〜+30度となっており、車内には138発の砲弾が搭載されていた。
また車体左右側面の中央部にはそれぞれボールマウント式銃架が設けられて、サン・ドニのオチキス社製の8mm空冷重機関銃M1914が1挺ずつ装備されており、車内には40,000発の機関銃弾が搭載されていた。
シュナイダー突撃戦車の装甲厚は車体前面と側面が11.5mm、上面が5.5mmとなっていたが、後にドイツ軍の対戦車銃に対処するため、装甲が薄い部分に5.5mm厚の増加装甲板が40mmのスペースを空けて取り付けられた。
後期型では燃料タンクが増量されると共に装甲も強化され、戦闘室上面に設けられているヴェンチレイターの能力向上が図られた。
シュナイダー突撃戦車は当初よりコイル・スプリング(螺旋ばね)を使用したサスペンションを備えるなど、イギリス陸軍の菱形戦車よりはるかにまとまりは良かったものの、初陣での戦車運用に失敗したため戦車無用論を生むに至ったのは本車にとっては災難であった。
また車体右側面の機関銃架の隣に設置された燃料タンクが被弾し易く、視界の悪さなどの問題が指摘されたが結局この問題は最後まで解決されず、生産も最初に発注された400両に留まり、追加発注分は生産されること無く終わった。
シュナイダー突撃戦車のフランス陸軍への引き渡しは1918年8月に終了し、第1次世界大戦終了と同時に現役を退いている。
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+シュナイダーCA2突撃戦車
本車はシュナイダーCA1突撃戦車の車体右側に限定旋回式に装備されていた75mm砲を廃し、車体上面に47mm砲を搭載する旋回式砲塔を設けた改良型である。
1917年に試作車が1両製作されたが生産は行われず、訓練に用いられた。
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+シュナイダーCA3突撃戦車
本車はシュナイダーCA1突撃戦車の車体上面にキューポラを2基装備し車体前面に機関銃を2挺追加、車体後部を延長した改良型である。
50両が発注されたが生産には至らなかった。
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<シュナイダーCA1突撃戦車>
全長: 6.32m
車体長: 5.86m
全幅: 2.06m
全高: 2.30m
全備重量: 13.5t
乗員: 6名
エンジン: シュナイダー 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
最大出力: 76hp/1,200rpm
最大速度: 8km/h
航続距離: 20〜30km
武装: 9.5口径75mm加農砲×1 (138発)
8mm重機関銃M1914×2 (40,000発)
装甲厚: 5.5〜11.5mm
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兵器諸元(シュナイダーCA1突撃戦車)
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<参考文献>
・「パンツァー2010年9月号 第一次大戦のフランス戦車(前) シュナイダー突撃戦車」 坂本雅之 著 アルゴノー
ト社
・「パンツァー2014年10月号 第一次大戦の戦車総覧 初登場した地上戦の主役達」 荒木雅也 著 アルゴノー
ト社
・「パンツァー2004年11月号 フランス最初の戦車 シュナイダー」 城島健二 著 アルゴノート社
・「パンツァー2016年4月号 シュナイダー&サン・シャモン戦車」 高橋昇 著 アルゴノート社
・「パンツァー2000年4月号 初期のフランス塹壕戦用戦車」 古是三春 著 アルゴノート社
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」 ガリレオ出版
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版
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