+概要
「サフィール(Safir:使者)74」戦車は、イラン軍が装備している旧ソ連製のT-54、T-55中戦車、および中国製の59式、69式戦車に対して、テヘランのDIO(Defense
Industries Organization:防衛産業機構)が独自の近代化改修を施したMBT(主力戦車)である。
本車は1996年初めに、イスラム革命防衛隊による試験が終了したことが公表されたが、性能諸元等の詳細は明らかにされていない。
サフィール74戦車の主砲には、オリジナルの56口径100mm戦車砲(D-10Tもしくはその改良型)に替えて、イギリスの王立造兵廠製のL7系51口径105mm戦車砲が搭載されている。
これは、イラン軍が装備するアメリカ製のM60戦車およびM48A5戦車に、L7のアメリカ版であるウォーターヴリート工廠製の51口径105mm戦車砲M68が搭載されており、イラン国内で105mm砲弾の生産も行われていたことによる。
サフィール74戦車ではFCS(射撃統制装置)も新型のものになり、走行間射撃能力が向上しているという。
また装甲防御力も強化され、新型の消火システムと相まって生残性が向上しているとされている。
パワーパックは、旧ソ連製のT-72戦車と同系列のV-46-6 V型12気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル・エンジン(出力780hp)と、国産のSPAT1200自動変速・操向機の組み合わせに変更されており、路上最大速度は65km/hに達するという。
その後1996年末には、サフィール74戦車と同じくT-54中戦車系列の近代化改修型として、「タイプ72Z」と呼ばれる戦車をイランが開発したことが明らかになったが、現在、タイプ72Z戦車とサフィール74戦車は同一の車種であるとする説が有力になっている。
タイプ72Z戦車は主砲に105mm戦車砲M68、FCSにスロヴェニアのフォトナ社製のEFCS-3-55システムを採用しており、高い初弾命中率を誇っているという。
またパッシブ式暗視装置の装備により、夜間戦闘能力も向上しているという。
なおイランでは、保有するT-54中戦車系列の射程不足を補うため、100mm戦車砲の砲腔から発射できる旧ソ連製の9M117-1「バスチオン」(Bastion:砦)対戦車ミサイルのライセンス生産を行っているが、これはL7系105mm戦車砲の砲腔からも発射できるため、サフィール74/タイプ72Z戦車は最大射程5,500mでの交戦が可能である。
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