イギリス陸軍の主力IFVとして運用されているFV510ウォーリア歩兵戦闘車を開発したGKNディフェンス社が、プライヴェート・ヴェンチャーとして、ウォーリア歩兵戦闘車のコンポーネントを流用した偵察車両の開発に取り掛かったのは1995年のことであった。 翌96年半ばには試作車が完成したが、クウェートへの輸出向けとして生産されていたデザート・ウォーリア歩兵戦闘車の生産ライン上で製作されたため、装備等はウォーリアよりもデザート・ウォーリアとの共通点が多い。 ウォーリア装甲偵察車の車体は防弾アルミ板の溶接で作られているが、車体長の短縮が図られた結果第4転輪が廃止され、転輪数は片側5個に減じている。 さらに車体各部には最新型の追加装甲パッケージが装着され、運動エネルギー弾、化学エネルギー弾の双方に対する防御力の向上が図られている。 また不整地走行能力の向上を図ってトーションバーが延長され、ダンパーも強化型に換装された。 本車の最大の特徴は何といっても電波や赤外線、それに音響の発生や反射を抑えた車体形状にあり、このうち電波の反射を抑える新機軸が稲妻状の断面を持つ分厚い側面の追加装甲板である。 これは戦場におけるレーダーによる探知の可能性を極小化するものだが、その下方にはゴム製のサイドスカートも取り付けられていて、走行音の発生をも抑制できる仕組みになっている。 車体前部の左側に操縦室、右側に機関室を配置したレイアウトはウォーリア歩兵戦闘車と同じだが、操縦手用のペリスコープに広視野型を採用する等、改良点も散見できる。 なおこの広視野型ペリスコープの中央部は、パッシブ式の夜間視察ペリスコープに交換することも可能である。 車体の後面には偵察用の小型レーダーや赤外線暗視装置、ビデオカメラ、レーザー測遠機を搭載する着脱式のセンサー・マストが装備され、車内にはIBIS(Integrated Battlefield Intelligence System:統合型戦場情報システム)の車両用端末が導入されており、友軍の車両間や指揮所との間で双方向の迅速な情報のやり取りが可能になっている。 砲塔はデザート・ウォーリア歩兵戦闘車と同じく、アメリカのデルコ・ディフェンス・システムズ社製のLAV-25砲塔が搭載されており、ボーイング社製の87口径25mm機関砲M242ブッシュマスターと7.62mm機関銃M240を同軸に備え、砲塔の左右側面にはTOW対戦車ミサイルの発射機が各1基ずつ装着されている。 25mm機関砲用の弾薬は500発が砲塔内部に収容され、同様にTOW対戦車ミサイルも4発の予備弾が収められているが、この予備のミサイルを再装填するには車外に出る必要がある。 25mm機関砲M242は水平・垂直の2軸が安定化されており、走行中でも高い命中精度を誇っている。 砲塔内には右に車長、左に砲手がそれぞれ位置し、いずれも独立したハッチが備えられ車長用には7基、砲手用には1基のM27ペリスコープが装着されている。 砲手用のペリスコープには熱映像照準機が追加されており、車長用ハッチの前にはM36E1主砲照準機が設けられ、熱映像装置のモニターも備えられている。 乗員は3名で車体後部の兵員室は廃止されているが、捜索用の機材等の搭載の便を考慮して動力式の後部ドアは作動機構と共に残されている。 |
<ウォーリア装甲偵察車> 全長: 6.43m 全幅: 3.66m 全高: 2.728m 全備重量: 27.0t 乗員: 3名 エンジン: パーキンス・コンドーCV8-650TCA 4ストロークV型8気筒液冷ディーゼル 最大出力: 650hp/2,300rpm 最大速度: 90km/h 航続距離: 700km 武装: 87口径25mm機関砲M242×1 (500発) 7.62mm機関銃M240×1 TOW対戦車ミサイル発射機×2 (6発) 装甲厚: |
<参考文献> ・「パンツァー1999年6月号 新装備トピックス」 アルゴノート社 ・「世界の最新兵器カタログ 陸軍編」 三修社 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー |