第1世代の対戦車ミサイルSS-11を装備して開発されたRJPz.2駆逐戦車は、それなりにまとまった対戦車車両であったがミサイルの誘導方式に難があり、熟練者でなければ命中させるのが難しいという問題があった。 このため、より操作が簡単で装甲貫徹力も大きい新世代対戦車ミサイルHOTへの換装が行われることになり、名称も新たにRJPz.3(Raketenjagdpanzer 3:ミサイル装備型駆逐戦車3型)「ヤグアル」(Jaguar:ジャガー)と変わった。 換装計画は1975年に西ドイツ政府に承認され、RJPz.2駆逐戦車の生産車の内316両に対してHOT対戦車ミサイルへの換装作業を行うことが決められた。 1978年にはヘンシェル社の手で改造されたヤグアル駆逐戦車の試作車が完成しており、1983年までに改造作業を完了している。 その後ヤグアル駆逐戦車は90両がオーストリア陸軍に売却され、さらにKJPz.4-5駆逐戦車にTOW対戦車ミサイルを装備した改造車が登場したため、HOT対戦車ミサイル装備車は「ヤグアル1」、TOW対戦車ミサイル装備車は「ヤグアル2」と名称が改められた。 ヤグアル1駆逐戦車はRJPz.2駆逐戦車からの改造車のため車体、戦闘室共に同一だが、それまで戦闘室上面左右に設けられていたミサイル発射機は、戦闘室上面中央にコンテナ兼用式となったミサイル発射機1基を装備するレイアウトに改められ、以前と同じ昇降式とされたが、対戦車ミサイルの装填は戦闘室内で自動装填装置を用いて行うように変更されている。 ヤグアル1駆逐戦車の自動装填装置は8発のHOT対戦車ミサイルを収容し、3発/分と比較的早い発射速度を持つ。 戦闘室内には、計20発のHOT対戦車ミサイルが収容されている。 また装甲防御力の強化のために戦闘室前面と左右側面には、基本装甲の上にゴムの緩衝材を挟んで増加装甲がボルト止めされている。 ヤグアル1駆逐戦車の主武装であるHOT対戦車ミサイルは、フランスのエアロスパシアル社と西ドイツのメッサーシュミット・ベルコウ・ブローム社の両社によって、SS-11対戦車ミサイルの後継として開発が進められた第2世代の対戦車ミサイルで、名称の「HOT」は”High subsonic, Optically guided, Tube launched:卷音速・光学式遠隔誘導・チューブ発射”の頭文字を採ったものである。 誘導方式としては有線を用いるのはSS-11対戦車ミサイルと同じだが、照準機と同軸装備された赤外線測角機がミサイルから放出される赤外線を検知し、コンピューターを介して自動的に目標に指向する方式に改められている。 HOT対戦車ミサイルはSS-11対戦車ミサイルに比較して命中率が高く、最大有効射程は4,000mと倍に伸びている。 |
<ヤグアル1駆逐戦車> 全長: 6.46m 全幅: 3.12m 全高: 2.54m 全備重量: 25.5t 乗員: 4名 エンジン: ダイムラー・ベンツMB837Aa-500 4ストロークV型8気筒液冷ディーゼル 最大出力: 500hp/2,200rpm 最大速度: 70km/h 航続距離: 400km 武装: HOT対戦車ミサイル発射機×1 (20発) 7.62mm機関銃MG3×2 (3,200発) 装甲厚: 12〜50mm |
<参考文献> ・「パンツァー2017年1月号 大戦後ドイツ初のAFV ヤークトパンツァー・シリーズ」 鈴木達也 著 アルゴノート 社 ・「パンツァー2008年3月号 ドイツの戦後最初のAFV ヤークトパンツァー」 佐藤慎ノ亮 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2000年6月号 ドイツ陸軍 ヤークトパンツァー・シリーズ」 アルゴノート社 ・「パンツァー2017年9月号 西ドイツ軍戦車概史(後)」 古峰文三 著 アルゴノート社 ・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」 デルタ出版 ・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著 三修社 ・「世界の装軌装甲車カタログ」 三修社 ・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー ・「世界の最新陸上兵器 300」 成美堂出版 |