+構造
ラスカルの車体は、小火器弾の直撃や榴弾の破片に耐える程度の軽装甲が施された全装軌式車体で、極めて低平なデザインとなっている。
足周りは片側6個の転輪と3個の上部支持輪、前方の起動輪、後方の誘導輪で構成されている。
サスペンションは、一般的なトーションバー(捩り棒)式サスペンションが採用されている。
なお製造・運用コストの低減を図るため、ラスカルの転輪、誘導輪、履帯は、イスラエル陸軍に広く普及しているアメリカ製のM113装甲兵員輸送車のものが流用されている。
転輪の間隔は第1転輪だけが離れており、第2〜第6転輪の間隔が狭い独特の配置になっているが、これは車体後部に主砲と弾薬が搭載されているため、重量バランスを考慮してこのような配置になっている。
車内レイアウトは車体前部が操縦室、車体中央部左側が機関室、中央部右側が車長および操砲要員2名の搭乗スペース、車体後部が主砲と弾薬を搭載する戦闘区画となっている。
操縦手の搭乗スペースは車体前部左側に張り出しており、周囲三方に装甲シャッター付きの防弾ウィンドウが設けられているため、充分な視界が確保されている。
車長の搭乗スペースには前面に視察ヴァイザーが備えられており、車長席の頭上には、操縦手席の頭上に設けられているのと同型のスライド式ハッチが設けられている。
機関室に搭載されているエンジンは出力350hpのディーゼル・エンジンであるが、型式は不明である。
従来のイスラエル製自走榴弾砲に比べるとエンジン出力が小さいが、ラスカルは戦闘重量19.5tと非常に軽量なため、出力/重量比は17.95hp/tと充分な値で、路上最大速度50km/hの機動性能を発揮する。
ラスカルの主砲は、顧客の要望に応じて39、45、52口径の155mm榴弾砲を任意に選択できるようになっているが、イスラエル陸軍の車両はソルタム社製の39口径155mm榴弾砲M71を採用している。
主砲は車体後部の戦闘区画に砲架を設けて、剥き出しの状態で搭載されている。
前述のようにラスカルは自走榴弾砲としては非常に軽量なため、射撃プラットフォームとしての安定性が不充分であり、主砲を横向きに射撃すると反動で転倒してしまう危険が大きい。
このため本車は、主砲の旋回角が左右各30度ずつに制限されている。
一方、主砲の俯仰角については0〜+65度となっている。
主砲の俯仰と旋回は動力式であるが、155mm榴弾砲の操作には最低4名の操砲要員が必要なため、ラスカルに搭乗している2名だけでは足りず、残りの操砲要員は別の車両に搭乗して移動する。
なお、主砲の射界を制限しても軽量なラスカルは射撃時の反動を受け止めきれないため、射撃の際には、車体後部に設けられている油圧操作式駐鋤を降ろして反動を吸収するようになっている。
主砲弾薬は、主砲の左右に設けられているラックに合計36発が搭載される。
ラスカルは52口径155mm榴弾砲を搭載した場合、ロケット補助推進弾を使用した時の最大射程が40kmを超えるという。
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