ルノーR35軽戦車
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+概要
ルノーR35軽戦車は、フランス陸軍が1933年8月に開始した新型軽戦車整備計画に沿ってブローニュ・ビヤンクールのルノー社が開発した歩兵用軽戦車であり、同時期にサン・ドニのオチキス社が開発したオチキスH35~H39軽戦車と共に、第2次世界大戦時のフランス陸軍の主力軽戦車の座を担った車両である。
フランス陸軍は1932年頃より隣国ドイツの再軍備に脅威を感じ、ようやく軍の近代化に重い腰を上げ始めた。
新型軽戦車はルノー社とオチキス社による競争試作となり、1935年7月に行われた審査の結果、ルノー社が設計したZM型の方が優秀であると判定されて歩兵部隊用の次期軽戦車として採用が決定されており、早速「R35軽戦車」(Char
léger Modèle 1935R)として制式化され、300両を超える大量発注がなされている。
1934年8月に完成した試作車は、騎兵部隊用に開発されたAMC35軽戦車とほぼ並行して開発されている。
また重量もAMC35軽戦車とほぼ同じであったため、ほとんど同じ水平コイル・スプリングを持つシザーズ式サスペンションが採用されている。
操向機にはクレトラック式差動歯車システムを採用しており、操縦性が非常に優れていた。
R35軽戦車の車体は一見全鋳造製のように見えるが車体下部は圧延鋼板製で、これに3分割された鋳造製の車体上部をボルト止めして組み立てるようになっていた。
この構造は当時のフランス戦車では多用された方法で、ライバルとなったH35軽戦車も採用している。
装甲板を鋳造製としたのは生産の簡易化を図ったためで、従来の装甲板をボルトで結合して組み立てる方式よりもはるかに製造工程が簡略化され、生産効率が向上するという大きなメリットがあった。
しかも従来の、鋼板をリベット接合したものよりも構造強度が向上していた。
しかし実戦に投入されてから判明した事実と思われるが、被弾時の衝撃によって装甲板が撓んだ場合装甲板を結合しているリベットが剪断されてしまい、戦闘力を失ってしまうようなことも多々あった。
R35軽戦車の砲塔は試作車では生産型と全く異なったものが装備されていたが、生産型ではAPX社(Atelier de Construction
de Puteaux:ピュトー工廠)で製作された鋳造製のAPX-R 1名用砲塔を搭載している。
武装は、試作車ではMAC社(Manufacture d'armes de Châtellerault:シャテルロー造兵廠)製の7.5mm機関銃M1931を2挺装備していただけであったが、生産型ではAPX社製の37mm戦車砲1門と同軸機関銃1挺に強化されている。
R35軽戦車の初期生産車はAPX社製の21口径37mm戦車砲SA18を装備していたが、すぐに改良型であるSA18 M37に変更され、後期生産車ではH39軽戦車と同じ33口径37mm戦車砲SA38が搭載されている。
1939年9月の第2次世界大戦勃発時にはすでに1,070両ものR35軽戦車が実戦配備されていたが、ドイツ軍のフランス侵攻が開始される1940年5月までにさらに541両が追加されている。
R35軽戦車は主に、歩兵師団直協の戦車大隊に配備された。
また戦前、ポーランドやルーマニア、ユーゴスラヴィア、トルコなどにも輸出されている。
R35軽戦車は砲塔部の最大装甲厚が45mmと、当時の軽戦車としては異例の防御力を誇っていた。
しかし33口径37mm戦車砲SA38を装備した後期生産車以外は、ルノーFT軽戦車以来の短砲身37mm戦車砲を装備しており対装甲威力が大変に低く、分散して使用されたこともありドイツ軍機甲部隊を阻止する力にはならなかった。
1940年6月22日のフランス降伏後多くのR35軽戦車がドイツ軍に接収され、さらに一部はイタリア軍にも供給されている。
ドイツ軍では接収したR35軽戦車の砲塔のキューポラを外してハッチに改修し、装備をドイツ軍仕様に改めた上で二線級戦車として使用したが、46口径7.5cm対戦車砲PaK40や28口径10.5cm軽榴弾砲leFH18などを搭載する自走砲に改造された車両も多く、西部戦線で連合軍と対峙している。
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<R35軽戦車 初期型>
全長: 4.02m
全幅: 1.85m
全高: 2.11m
全備重量: 9.8t
乗員: 2名
エンジン: ルノー447 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
最大出力: 82hp/2,200rpm
最大速度: 20.5km/h
航続距離: 138km
武装: 21口径37mm戦車砲SA18×1 (116発)
7.5mm機関銃M1931×1 (2,400発)
装甲厚: 12~45mm
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兵器諸元
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<参考文献>
・「パンツァー2010年7月号 フランス軍軽戦車 ルノーR35とオチキスH35/39 (1)」 吉田直也 著 アルゴノート
社
・「パンツァー2010年8月号 フランス軍軽戦車 ルノーR35とオチキスH35/39 (2)」 吉田直也 著 アルゴノート
社
・「パンツァー2002年8月号 AFV比較論 III号突撃砲/ルノーR35戦車」 白石光 著 アルゴノート社
・「パンツァー2000年1月号 1940年におけるフランス戦車」 古是三春 著 アルゴノート社
・「パンツァー2013年8月号 フランス ルノー軽戦車シリーズ」 平田辰 著 アルゴノート社
・「パンツァー2001年4月号 大戦初期のフランス戦車」 斎木伸生 著 アルゴノート社
・「パンツァー2003年11月号 第2次大戦フランス戦車 インカラー」 アルゴノート社
・「パンツァー2013年2月号 フランス戦車の辿った一世紀」 アルゴノート社
・「パンツァー2020年6月号 ルノーR35」 吉村誠 著 アルゴノート社
・「グランドパワー2000年5月号 フランス軍軽戦車 ルノーR35/オチキスH35~39」 嶋田魁 著 デルタ出版
・「グランドパワー2017年12月号 ドイツ軍捕獲戦闘車輌」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次~第2次世界大戦編」 ガリレオ出版
・「世界の戦車 1915~1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「ビジュアルガイド WWII戦車(1) 電撃戦」 川畑英毅 著 コーエー
・「戦車名鑑 1939~45」 コーエー
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