イタリア陸軍は1980年代に、高速機動部隊用の装輪式装甲車ファミリーの開発計画を進めた。 こうして1990年代に相次いで誕生したのが8×8型のチェンタウロ戦闘偵察車と、4×4型のプーマ装甲車である。 プーマ装甲車は火力支援を主任務とするチェンタウロ戦闘偵察車と共に行動し、兵員輸送の他、連絡、偵察などの任務にも使用できる汎用小型装輪式装甲車として開発された。 本車の開発はチェンタウロ戦闘偵察車と同じくイヴェコ社が担当し、最初の試作車は1988年に完成した。 翌89年には2番目の試作車が完成し、2両を使用して試験が行われる一方、1990年代半ばにはより実用型に近い試作車3両が製作された。 試作車を用いた試験の結果に満足したイタリア陸軍は、1999年末に580両のプーマ装甲車をイヴェコ社に発注し、2003年中頃から引き渡しが開始されている。 プーマ装甲車の車体は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、非常に良好な避弾経始のデザインが全体に施されている。 車体の防御力は全周に渡って7.62mm機関銃弾の直撃と、至近距離で炸裂した榴弾の破片に耐えることができる。 車内レイアウトは車体前部が機関室、その後方左側が操縦手席、車体後部が兵員室(戦闘室)となっている。 操縦手席の上面には、3基のペリスコープを備えたスライド式ハッチが設けられている。 兵員室の上面には中央部に5基のペリスコープを備えた車長用キューポラが設けられており、後部にも後ろ開き式のハッチが設けられている。 乗降用のドアは車体の左右側面と後面にあり、各ドアには視察用ブロックとガンポートが設けられているので車内からの射撃が可能となっている。 車体のサイズは戦闘重量5.7t、全長4.65mとコンパクトで、乗員は操縦手以外に後部兵員室に完全武装歩兵を6名まで収容できる。 パワーパックはイヴェコ社製の8042.45 直列4気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力180hp)と、イヴェコ社がドイツのレンク社と共同開発したReco全自動変速機(前進5段/後進1段)の組み合わせとなっている。 出力/重量比は31.57hp/tとAFVとしては驚異的な数値で、路上最大速度105km/h、路上航続距離800kmという高い機動性能を発揮する。 タイアは、11.00×16のランフラット・タイアを履いている。 サスペンションは油気圧ストラットとトーションバーを組み合わせた4輪独立懸架方式で、不整地においても高い機動性能を発揮できる。 武装は基本型であるAPC(装甲兵員輸送車)ヴァージョンの場合、車長用キューポラの前部に設けられたマウントに7.62mm機関銃または12.7mm重機関銃を搭載する。 その他にも、このキューポラ部分にTOW対戦車ミサイルやミラン対戦車ミサイルの発射機を搭載した戦車駆逐車ヴァージョン、ミストラル対空ミサイルの発射機を搭載した対空車両ヴァージョン、後部兵員室に81mm迫撃砲を搭載した自走迫撃砲ヴァージョン、装甲救急車ヴァージョン、装甲指揮車ヴァージョンなどが開発されている。 また1990年に入って、車体を少し延長した6×6型のプーマ装甲車が開発された。 車体を延長したことで搭載能力が向上したため、6×6型では後部兵員室に完全武装歩兵を8名まで収容できるようになった。 また4×4型の場合、地雷等で1つでもタイアが損傷すれば移動力を喪失するが、6×6型ではタイアを1つぐらい失っても何とか走行することが可能という利点もある。 6×6型のパワーユニットは、4×4型と同じものが使用されている。 これにより運用コストが低く抑えられる反面、機動性能は4×4型よりやや低下しており路上最大速度100km/h、路上航続距離700kmとなっている。 イタリア陸軍の計画では4×4型のプーマ装甲車330両を山岳部隊や空挺部隊に配備し、6×6型のプーマ装甲車250両をチェンタウロ戦闘偵察車と共に騎兵部隊に配備することになっている。 |
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<プーマ装甲車 4×4型> 全長: 4.65m 全幅: 2.085m 全高: 1.67m 全備重量: 5.7t 乗員: 1名 兵員: 6名 エンジン: イヴェコ8042.45 直列4気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 180hp/3,000rpm 最大速度: 105km/h 航続距離: 800km 武装: 7.62mm機関銃MG42/59または12.7mm重機関銃M2×1 装甲厚: |
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<プーマ装甲車 6×6型> 全長: 5.00m 全幅: 2.30m 全高: 1.70m 全備重量: 7.5t 乗員: 1名 兵員: 8名 エンジン: イヴェコ8042.45 直列4気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 180hp/3,000rpm 最大速度: 100km/h 航続距離: 700km 武装: 7.62mm機関銃MG42/59または12.7mm重機関銃M2×1 装甲厚: |
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<参考文献> ・「パンツァー2011年8月号 不正規戦のホープとして脚光を浴びるイタリアのプーマ装甲警備車」 三鷹聡 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2005年12月号 ピューマ装輪APC その開発と特徴・現状」 野崎透 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2000年11月号 サトリ2000に展示された装輪装甲車輌」 アルゴノート社 ・「パンツァー2007年3月号 アフガンにおけるイタリア軍車輌」 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年10月号 イタリア軍AFVの40年」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2006年10月号 ユーロサトリ2006 (2)」 伊吹竜太郎 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2004年9月号 EUROSATORY 2004」 ガリレオ出版 ・「世界の最強陸上兵器 BEST100」 成美堂出版 ・「最新陸上兵器図鑑 21世紀兵器体系」 学研 ・「新・世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の軍用4WDカタログ」 三修社 ・「世界の軍用4WD図鑑PART2」 スコラ |
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