+概要
PT-85「新興」(シンフン)水陸両用軽戦車は、中国製の63式装甲兵員輸送車をベースに北朝鮮が拡大改良した、VTT-323(M1973)装甲兵員輸送車のコンポーネントを流用して、1980年代初期に開発されたと考えられている軽戦車である。
本車の存在が最初に西側に確認されたのが、1985年に平壌で挙行された軍事パレードだったことから、本車には「M1985」の識別番号が与えられている。
PT-85水陸両用軽戦車の車体は新設計で、圧延防弾鋼板の溶接構造が採られ、水上浮航能力を有している。
水上浮航能力を付与するために、車体前部は凌波性を持たせるため尖った平面により構成されている。
また車体と砲塔は避弾経始を考慮して、全体的に良好な傾斜角が与えられており、装甲の薄さを補っている。
車体前部左側には操縦手が位置し、前部右側には主砲弾薬庫が設けられている。
車体中央部は全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室とされ、車体後部には機関室が設けられている。
PT-85水陸両用軽戦車の砲塔は2名用で、防弾アルミ板の溶接構造となっており、旧ソ連製のPT-76水陸両用軽戦車の砲塔と酷似した円錐形の形状をしている。
北朝鮮軍は旧ソ連から輸入したPT-76を多数保有しているので、PT-85はPT-76を参考にして開発されたものと思われる。
砲塔の左右側面には手摺が設けられており、兵士の車外乗車が考慮されている。
PT-85水陸両用軽戦車の主武装は、国内開発されたと思われる85mm戦車砲で、PT-76水陸両用軽戦車の装備する48口径76.2mm戦車砲D-56Tよりも強力である。
この砲は、旧ソ連から導入したT-34-85中戦車が装備していた54.6口径85mm戦車砲ZIS-S-53をベースに開発されたものと思われ、砲身の中間やや前寄りに排煙機が装着されているのが特徴である。
PT-85水陸両用軽戦車の乗員は、PT-76水陸両用軽戦車と同じく車長、砲手、操縦手の3名であると推測されているが、主砲が大型化しているため、装填手が追加されて4名になっているという説もある。
副武装は、旧ソ連製の7.62mm機関銃PKTを主砲と同軸に装備している他、主砲防盾の上には、旧ソ連製の9M14「マリュートカ」(Malyutka:赤ん坊)対戦車ミサイルの発射機を装備している。
また対空用として、砲塔上面に12.7mmもしくは14.5mm重機関銃を装備することも可能である。
PT-85の足周りはPT-76とよく似ており、起動輪は後方配置とされ、片側6個のゴム縁付き大直径転輪を採用して上部支持輪を未装備とし、サスペンションにはトーションバー(捩り棒)方式が採用されている。
PT-85の生産はすでに終了したと見られており、輸出も行われていないようである。
北朝鮮軍におけるPT-85の装備数は1998年末の時点で、旧ソ連から導入したPT-76と合わせて540両と伝えられている。
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