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ピラーニャ装甲車





「ピラーニャ」(Piranha:ピラニア、南米原産の肉食淡水魚で群れを成して人獣をも食い殺すことがある)装甲車は元々、モヴァーク社が1970年代に輸出用の装輪式APC(装甲兵員輸送車)として開発したもので、初期型の段階から4×4、6×6、8×8の3タイプが作られた。
1977年にカナダ陸軍が同車を発注して以来、採用国は西側先進国と開発途上国で次第に増え続け、これまでにライセンス生産車を含めて数多くの派生型・発達型が開発・生産されている。

初期型のシリーズは現在「カテゴリーI」と呼ばれ、基本型のAPCタイプは4×4型が全備状態で7.8t、乗員数は最大10名、6×6型は10.5tで乗員が最大14名、8×8型が12.3tで乗員最大15名とされていた。
車体は圧延防弾鋼板の全溶接構造で前部左側が操縦室、その右側が機関室、中央部が砲塔を搭載した戦闘室、後部が兵員室となっており、現代の装輪式APCの基本的な構造を確立したものといえる。

このピラーニャ装甲車はその後チリやカナダでもライセンス生産され、1980年代にはジェネラル・モータース・オブ・カナダ社が開発した改良型ピラーニャ8×8型が、アメリカ海兵隊のLAV(Light Armoured Vehicle:軽装甲車両)計画のベース車体として採用されたことで、ピラーニャ装甲車は一躍世界的なベストセラー車両として知られるようになった。

一方、本家のモヴァーク社でもピラーニャ装甲車の改良・開発が続けられ、1990年代になって機動力と装甲防御力を向上させた改良型のピラーニャ・カテゴリーIIが発表された。
このピラーニャ・カテゴリーIIではさらに車体を大型化し搭載能力を向上させた、10×10型のモデルも新たに用意された。

続いて1996年には搭載能力、機動力、装甲防御力の全てを一新したピラーニャ・カテゴリーIIIが登場した。
カテゴリーIIIは6×6、8×8、10×10の3タイプが開発されており、特に8×8型と10×10型では総搭載量がそれぞれ6t、7.5tと、それまでに実用化された装輪式APCの中で最も大きなものとなった。
搭載能力の向上に伴ってカテゴリーIIIは車体サイズも従来より大型化し、全備状態の重量は6×6型が12.5t、8×8型が16.5t、10×10型は20tに達している。

装甲防御力は専用に開発された追加装甲パッケージを装着することで強化される仕組みで、これによってピラーニャ・カテゴリーIIIは車体前面で30mm機関砲弾の直撃に対して、全周でも14.5mm重機関銃弾に対する防御力を得ている。
重量の増加に合わせてカテゴリーIIIには高出力の新型エンジンが搭載されるが、設計上の柔軟性によってユーザーの要求に応じて4種類のパワーパックから選択できるようになった。

このピラーニャ・カテゴリーIIIはアメリカ陸軍のストライカー計画のベース車体として採用され、ジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズ社によってAPC型の他にTOW対戦車ミサイル搭載型、105mm戦車砲搭載型など様々な用途のストライカー装甲車が開発されている。
さらにモヴァーク社(2010年にジェネラル・ダイナミクス・ヨーロピアン・ランドシステムズ社に改組)では2007年に、ピラーニャ装甲車の最新型であるピラーニャ・カテゴリーIVを開発している。

カテゴリーIVではモジュール式の追加装甲システムが採用され、想定される脅威に応じて容易に装甲防御力を変更できるようになったのが特徴である。
このピラーニャ・カテゴリーIVはイギリス陸軍の次期装輪式装甲車のベース車体として採用されることになり、同軍向けの車体は現在「カテゴリーV」の名称で開発が進められている。


<ピラーニャ装甲車 カテゴリーIII>

全長:    6.25m(6×6)、6.93m(8×8)、7.45m(10×10)
全幅:    2.66m
全高:    2.17m
全備重量: 12.5t(6×6)、16.5t(8×8)、20t(10×10)
乗員:    14名(6×6)、16名(8×8)、18名(10×10)
エンジン:  デトロイト・ディーゼル6V-53TA、MTU 6V-183-TE22、カミンズ6CTAA8.3-T350、キャタピラー3126よ
        り選択
最大速度: 100km/h(浮航 10km/h)
航続距離: 800km
武装:
装甲厚:


<参考文献>

・「パンツァー2004年3月号 現在最も注目されている装輪AFV ピラーニャ8×8シリーズ」 林磐男 著  アルゴ
 ノート社
・「パンツァー2013年3月号 AFV比較論 96式装輪装甲車 vs ピラーニャ8×8」 竹内修 著  アルゴノート社
・「パンツァー2004年7月号 ストライカー/LAV-III装輪APC」 城島健二 著  アルゴノート社
・「パンツァー2006年7月号 変化する世界情勢と最近のAFV」 林磐男 著  アルゴノート社
・「パンツァー2004年9月号 ピラーニャ装輪装甲車シリーズ」 三鷹聡 著  アルゴノート社
・「パンツァー2015年5月号 世界の現用装輪装甲車輌」 平田辰 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年8月号 ピラーニャIIIとLAV-III」 竹内修 著  アルゴノート社
・「パンツァー2011年11月号 モワク・ピラーニャの40年」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021〜2022」  アルゴノート社
・「決定版 世界の最強兵器FILE」 おちあい熊一 著  学研
・「世界の主力軍用車」 ジェイソン・ターナー 著  三修社
・「世界の最新兵器カタログ 陸軍編」  三修社
・「世界の最強陸上兵器 BEST100」  成美堂出版
・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」  ガリレオ出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー

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