巡航戦車Mk.VIIIセントー (A27L)
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+概要
レイランド自動車では1941年11月から、A24キャヴァリエ巡航戦車を本格的にA27巡航戦車の仕様に改良する計画に着手した。
これは変速・操向機、サスペンションに関する改良が主体で、車体と砲塔はキャヴァリエ巡航戦車のものがそのまま用いられた。
この改良型がA27L「セントー」(Centaur:ケンタウルス、ギリシャ神話に登場する半人半馬の怪物)巡航戦車で、エンジン以外は完全にA27巡航戦車の仕様である。
なおA27Lの”L”は、NMA社(Nuffield Mechanizations and Aero:ナフィールド機械・航空産業)がライセンス生産を行っていた、アメリカ製の「リバティー」(Liberty:自由)V型12気筒液冷ガソリン・エンジンを搭載していることを表していた。
セントー巡航戦車の試作車は1942年6月に完成し、同年11月には量産が開始された。
NMA社が設計・生産したキャヴァリエ巡航戦車と比べると、変速・操向機がウィルソン遊星歯車式からメリット・ブラウン式に変更され機関室のレイアウトが手直しされた。
これらの措置は、ダービーのロールズ・ロイス社製の「ミーティア」(Meteor:流星)V型12気筒液冷ガソリン・エンジンが手に入った場合、エンジンさえ換装すればA27M「クロムウェル」(Cromwell:17世紀にイギリス共和制を擁護して戦った軍人で、後にイングランド共和国の初代護国卿となったオリヴァー・クロムウェルに因む)巡航戦車に改造できるよう狙ったものである。
セントーとクロムウェルの車体は全く共通であるから生産ラインの切り替えには支障は無く、クロムウェル巡航戦車を作るための生産準備を兼ねて暫定的に作られた車両がセントー巡航戦車である。
セントー巡航戦車は各型合計で950両が生産されたが、その内の114両(80両という説も)は18.7口径95mm榴弾砲を装備するCS(Close
Support:近接支援)タイプの「セントーMk.IV」であった。
これらのCSタイプ車両は、1944年6月の「ノルマンディー上陸作戦」(Operation Neptune:ネプチューン作戦)では上陸用舟艇に搭載されて船上からの支援射撃を行っている。
またセントー巡航戦車の派生型を製作するために車体のみ375両分が別に用意され、これを用いて砲兵観測車や72.5口径20mmポールステン機関砲を搭載する対空戦車が製作された(完成した対空戦車は95両といわれる)。
1943年以降ミーティア・エンジンの量産が軌道に乗ってからは、それまで搭載していたリバティー・エンジンからミーティア・エンジンに換装してクロムウェル巡航戦車に生まれ変わった車両も数多い。
セントー巡航戦車は開発当初から、主砲に予定されていた6ポンド(57mm)戦車砲の火力が乏しいことが問題とされ、新たに開発された75mm戦車砲が搭載されることが予定されていたが、生産当初は75mm戦車砲の供給が間に合わなかったため、やむを得ず6ポンド戦車砲を装備して完成した。
なお、この75mm戦車砲の供給不足は後にクロムウェル巡航戦車でも発生している。
6ポンド戦車砲を装備した初期型のセントー巡航戦車は「セントーMk.I」と呼ばれ、1943年に大部分が主砲を36.5口径75mm戦車砲に換装して「セントーMk.III」に生まれ変わっている(未換装車は233両とされる)。
なお「セントーMk.II」は、セントーMk.Iに幅広の履帯を装着し車体機関銃を撤去した車両で試験のみに用いられた。
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<セントーMk.I巡航戦車>
全長: 6.35m
全幅: 2.896m
全高: 2.489m
全備重量: 28.849t
乗員: 5名
エンジン: ナフィールド・リバティー 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 395hp/1,500rpm
最大速度: 43.45km/h
航続距離: 266km
武装: 43口径6ポンド戦車砲Mk.IIIまたは50口径6ポンド戦車砲Mk.V×1 (64発)
7.92mmベサ機関銃×2 (4,950発)
装甲厚: 8〜76mm
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兵器諸元(セントーMk.I巡航戦車)
兵器諸元(セントーMk.III巡航戦車)
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<参考文献>
・「パンツァー2005年9月号 対決シリーズ イタリア P40重戦車 vs イギリス クロムウェル巡航戦車」 白石光 著
アルゴノート社
・「パンツァー2014年5月号 独自の進化を模索したイギリス巡航戦車発達史(3)」 木田雅也 著 アルゴノート
社
・「パンツァー2014年11月号 歴代戦車砲ベストテン」 荒木雅也/久米幸雄/三鷹聡 共著 アルゴノート社
・「パンツァー2002年11月号 ラム vs クロムウェル巡航戦車」 白石光 著 アルゴノート社
・「パンツァー2016年9月号 イギリス軍の巡航戦車シリーズ」 白石光 著 アルゴノート社
・「パンツァー2012年7月号 クロムエル巡航戦車」 遠藤慧 著 アルゴノート社
・「グランドパワー2016年10月号 クロムウェルの開発と構造」 後藤仁 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2020年8月号 イギリス巡航戦車発達史」 齋木伸生 著 ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」 ガリレオ出版
・「第2次大戦 イギリス・アメリカ軍戦車」 デルタ出版
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「戦車名鑑 1939〜45」 コーエー
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