巡航戦車Mk.IV (A13Mk.II)
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+概要
巡航戦車Mk.IIIがA13巡航戦車として開発中の1937年2月、イギリス陸軍の機械化局長補佐であったジファード・L・Q・マーテル少将は新型戦車に関する会合に出席しているが、この会合で使用されたテキストは1936年度の機甲旅団訓練報告書で、この報告書で主題となっていたのは1940年代の中戦車のあるべき姿であった。
報告書によると装甲は現在の8割程度増加されるべきとなっており、速度も路上で65km/h、路外で40km/h程度は必要であるとなっていた。
これらの答申により1939年には巡航戦車に対する基準が改定され、基本装甲厚は従来の14mmから30mmに増厚されることになった。
巡航戦車Mk.IIIは基準の改定直前に生産が開始されていたため、基本装甲厚は14mmのままであった。
そのため新しい基準に適合せず、車体各部に増加装甲板を装備することとなっている。
基準改定後、巡航戦車Mk.IIIの試作車の内の1両が20〜30mm程度の増加装甲板を装備して試験を実施しており、その結果性能低下は問題とされるほどのことではないと結論された。
そのため1939年1月に追加発注された65両の巡航戦車Mk.IIIは、基本装甲厚を30mmに増加して生産されることとなっている。
この基本装甲厚を30mmに増加させたタイプには、新たに「巡航戦車Mk.IV」(Cruiser Mk.IV)の制式呼称が与えられた。
巡航戦車Mk.IVは当初、巡航戦車Mk.I以来の砲塔に増加装甲板を装着して生産されていたが、製造途中に主砲防盾が鋳造製の新型のものになり、それに伴い同軸機関銃も、チェコのブルノ工廠製の7.92mm重機関銃ZB-53を国産化した7.92mmベサ機関銃となっている。
ベサ機関銃は空冷式であったため、液冷式の7.7mmヴィッカーズ機関銃に比べ銃身の過熱等の問題が心配されたが、ヴィッカーズ機関銃よりも弾丸の威力が大きいとして採用された。
このベサ機関銃を搭載したタイプは、ヴィッカーズ機関銃を搭載する従来の巡航戦車Mk.IVとは区別され、「巡航戦車Mk.IVA」の制式呼称が与えられている。
砲塔側面と後面に装着された増加装甲板は空間を設けた空間装甲になっており、巡航戦車Mk.IVの最大の特徴となっている。
巡航戦車Mk.III/Mk.IVは主として、開発したNMA社(Nuffield Mechanizations and Aero:ナフィールド機械・航空産業)のバーミンガム工場が生産にあたったが、第2次世界大戦の勃発によって量産が促進され、次第にNMA社1社では手が回らなくなり、ユーストンハウスのLMS社(London,
Midland and Scottish Railway:ロンドン・ミッドランド・スコットランド鉄道)やストランドのEEC社(English
Electric Company:イングランド電機)、レイランド自動車の手によっても生産され、合計で665両が完成した。
部隊配備は1938年から実施されており、ヨーロッパの大陸派遣軍には40両が配備されてドイツ軍と砲火を交えることとなった。
これら大陸に渡った巡航戦車Mk.III/Mk.IVは1940年6月のダンケルク撤退の際に全て放棄されており、逃げ帰った部隊は再編制され第2ラウンドを北アフリカで戦うことになる。
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<巡航戦車Mk.IV>
全長: 6.02m
全幅: 2.54m
全高: 2.591m
全備重量: 14.987t
乗員: 4名
エンジン: ナフィールド・リバティー 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 340hp/1,500rpm
最大速度: 48.28km/h
航続距離: 145km
武装: 50口径2ポンド戦車砲×1 (87発)
7.7mmヴィッカーズ機関銃×1 (3,750発)
装甲厚: 6〜30mm
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<巡航戦車Mk.IVA>
全長: 6.02m
全幅: 2.54m
全高: 2.591m
全備重量: 14.987t
乗員: 4名
エンジン: ナフィールド・リバティー 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 340hp/1,500rpm
最大速度: 48.28km/h
航続距離: 145km
武装: 50口径2ポンド戦車砲×1 (87発)
7.92mmベサ機関銃×1 (3,375発)
装甲厚: 6〜30mm
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兵器諸元
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<参考文献>
・「パンツァー2016年5月号 比較論シリーズ ロシアBT戦車シリーズ vs イギリス巡航戦車」 久米幸雄 著
アルゴノート社
・「パンツァー2014年3月号 独自の進化を模索したイギリス巡航戦車発達史(1)」 木田雅也 著 アルゴノート
社
・「パンツァー2011年10月号 北アフリカ/ヨーロッパにおけるイギリス巡航戦車」 家持晴夫 著 アルゴノート
社
・「パンツァー2001年3月号 初期の北アフリカ戦におけるイギリス戦車」 齋木伸生 著 アルゴノート社
・「パンツァー2003年8月号 イギリス巡航戦車 インアクション」 水梨豊 著 アルゴノート社
・「パンツァー2016年9月号 イギリス軍の巡航戦車シリーズ」 白石光 著 アルゴノート社
・「パンツァー2004年2月号 大戦間のイギリス巡航戦車」 白石光 著 アルゴノート社
・「パンツァー1999年4月号 初期のイギリス巡航戦車」 白石光 著 アルゴノート社
・「グランドパワー2020年8月号 イギリス巡航戦車発達史」 齋木伸生 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2012年11月号 イギリス巡航戦車(1)」 白石光 著 ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」 ガリレオ出版
・「グランドパワー1999年3月号 イギリス巡航戦車Mk.I〜V」 大村晴 著 デルタ出版
・「第2次大戦 イギリス・アメリカ軍戦車」 デルタ出版
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「戦車名鑑 1939〜45」 コーエー
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