軽戦車Mk.II
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軽戦車Mk.II

軽戦車Mk.IIA

軽戦車Mk.IIB

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+軽戦車Mk.II
軽戦車Mk.IIは、1930〜31年に合計16両製作された軽戦車Mk.Iシリーズの改良型であり、後のイギリス軽戦車の基本形を確立した車両となった。
エンジン、変速機、操向機は車体前部右側の機関室に収納され、前部左側には操縦室が配置された。
車体後部は戦闘室となっており、車長が潜り込んで機関銃と無線機に挟まれながら戦闘するのがやっとという砲塔が搭載されていた。
エンジンはダービーのロールズ・ロイス社製の直列6気筒液冷ガソリン・エンジン(出力66hp)が搭載され、半自動式操向機と遊星歯車式変速機を組み合わせた、SCG社(Self-Changing Gears:自己変速会社)製のウィルソン予約選択機構付き半自動変速・操向機と組み合わされていた。
このウィルソン変速・操向機は不整地走行用には手頃であったが、通常の変速・操向機より構造が複雑であるという欠点を持っていた。
なお軽戦車Mk.IIのインド陸軍向け仕様は、軽戦車Mk.Iシリーズと同じくウルヴァーハンプトンのヘンリー・メドウズ社製のEPT 直列6気筒液冷ガソリン・エンジン(出力58hp)を搭載し、普通の変速・操向機を使用していた。
軽戦車Mk.IIのサスペンションは、軽戦車Mk.IAと同じく水平コイル・スプリング(螺旋ばね)を用いたホルストマン式サスペンションを採用していた。
軽戦車Mk.IIの砲塔は「No.1 Mk.I砲塔」と呼ばれるもので、避弾経始を考慮して矩形の傾斜面で構成され、7.7mmヴィッカーズ液冷重機関銃を1挺装備していた。
なお機関銃には、車載用としての改造が施されていた。
この砲塔には換気用のルーヴァーは無く、代わりにスライド式ドアの付いた穴が天井に設けられていた。
砲塔上部の張り出しにはNo.1無線機が取り付けられていたがこれはあまり信頼性が無く、元々5kmの交信範囲を持つよう設計されていたものが実際には400mも届かなかったり、かと思えば稀に16km離れても交信できたりといった具合であった。
軽戦車Mk.IIの試作車は3両製作され、それぞれA4E13〜E15と名付けられた。
この内2両は水陸両用型とされ、防水性を高めるために各装甲板を結合するリベットの間隔を狭くする工法を採っており、車体の左右側面に浮航用のフロートを装着し、車体後部には船外機が取り付けられていた。
この水陸両用型の水上走行試験は、ポーツマスとヘイリング島で行われた。
この内の1両には、後に軽戦車Mk.IIIに採用された改良型ホルストマン式サスペンションの試作型が装着された。
軽戦車Mk.IIは第2次世界大戦初期の1939〜40年には部隊装備から外されたが、若干は1942年頃まで訓練や教育に用いられた。
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+軽戦車Mk.IIA/軽戦車Mk.IIB
1931年に軽戦車Mk.IIの改良型を生産することが決定し、同年6月と7月に王立造兵廠のウーリッジ工場に29両、軽戦車Mk.IIの開発元であるウェストミンスターのヴィッカーズ・アームストロング社に21両が発注された。
ウーリッジ工場で生産された29両は後に「軽戦車Mk.IIA」、ヴィッカーズ社で生産された21両は後に「軽戦車Mk.IIB」と名付けられた。
なお軽戦車Mk.IIAの試作車は2両(A4E16、A4E18)、軽戦車Mk.IIBの試作車は1両(A4E17)が製作された。
軽戦車Mk.IIAとMk.IIBは外観や基本構造は似ていたが、その設計は大きく異なっていた。
両車の主な相違点は燃料系統で軽戦車Mk.IIAは燃料タンクが2基設けられ、1基が右側フェンダーの上に、もう1基は戦闘室の後部に装甲で覆われて配置された。
軽戦車Mk.IIBの場合は、大容量の燃料タンクが1基側部に搭載された。
両車ともサスペンションは軽戦車Mk.IIと同じくホルストマン式サスペンションが装着されたが、上部支持輪の数は1個減らされて片側2個となった。
このサスペンションは「2組スプリング型」と呼ばれ、後に軽戦車Mk.IIIで採用された「4組スプリング型」と呼ばれる改良型サスペンションに換装された。
また軽戦車Mk.IIAとMk.IIBでは、軽戦車Mk.IIに搭載されたNo.1 Mk.I砲塔に代えて改良型のNo.1 Mk.II砲塔が採用された。
No.1 Mk.II砲塔では、Mk.I砲塔の側面装甲板の上部に非装甲の換気用ルーヴァーが追加され、側面吸気口にカバーが掛けられるようになった。
また換気力不足が指摘されたスライド式ドアを、もっと大きな2枚の折り曲げ式ドアに変更する等の改良も施されていた。
軽戦車Mk.IIA、Mk.IIBの内、少数は1940年のアフリカ戦線で実戦に投入された。
また軽戦車Mk.IIAと軽戦車Mk.IIIの一部が、1941年にアビシニア(現エチオピア)戦線の南アフリカ軍で使用されたという記録も残っている。
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<軽戦車Mk.II>
全長: 3.581m
全幅: 1.917m
全高: 2.108m
全備重量: 4.28t
乗員: 2名
エンジン: ロールズ・ロイス 4ストローク直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 66hp
最大速度: 48.28km/h
航続距離: 200km
武装: 7.7mmヴィッカーズ重機関銃×1 (4,000発)
装甲厚: 4〜11mm
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<参考文献>
・「パンツァー2012年8月号 戦間期の落とし子 イギリスの軽戦車Mk.6とそれに至るシリーズ」 三鷹聡 著 アル ゴノート社
・「パンツァー2003年4月号 1930年代のイギリス軽戦車Mk.I〜VI」 齋木伸生 著 アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート40 イギリス戦車100年史」 アルゴノート社
・「エンサイクロペディア 世界の戦車 1916〜1945」 アルゴノート社
・「戦闘車輌大百科」 アルゴノート社
・「グランドパワー2000年7月号 イギリス軍軽装軌車輌 1920〜39」 嶋田魁 著 デルタ出版
・「グランドパワー2020年5月号 戦間期のイギリス戦闘車輌」 齋木伸生 著 ガリレオ出版
・「アメリカ・イギリス陸軍兵器集 Vol.1 戦車」 後藤仁/大村晴 共著 ガリレオ出版
・「第2次大戦 イギリス軍戦車」 大村晴/山県教介 共著 ガリレオ出版
・「第2次大戦 米英軍戦闘兵器カタログ Vol.3 戦車」 ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」 ガリレオ出版
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「ザ・タンクブック 世界の戦車カタログ」 グラフィック社
・「世界の戦車パーフェクトBOOK」 コスミック出版
・「世界の戦車 完全網羅カタログ」 宝島社
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