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MLVM歩兵戦闘車





MLVM歩兵戦闘車は、ルーマニアが国産開発した完全オリジナルなIFV(歩兵戦闘車)である。
本車の詳しい開発経緯は不明であるが1980年代中期に開発され、1986~88年にかけて生産が行われたようである。
ちなみに名称の「MLVM」は、「Mașina de Luptă a Vânătorilor de Munte:山岳猟兵用歩兵戦闘車」の頭文字を採ったものである。

本車は世界的にも珍しい山岳地帯専用のIFVとして設計されており、他国のIFVより一回り小型軽量となっているのが特徴である。
基本的には旧ソ連製のBMP-1歩兵戦闘車を小型化したものと考えて良さそうで、全体的なデザインはよく似ている。

ルーマニアは国土の中央にカルパティア山脈という国土の1/3を占める険しい山岳地帯が存在するため、このような車両が開発されたものと思われる。
MLVM歩兵戦闘車の車体はBMP-1歩兵戦闘車と同じく圧延防弾鋼板の全溶接構造で、デザインも同様の低平な舟型をしているが、若干装甲板が切り立っているのは収容能力の関係からと思われる。

本車の装甲厚は不明であるがBMP-1歩兵戦闘車に比べると薄く、防御力は全周に渡って7.62mm機関銃弾の直撃に耐えられる程度といわれている。
車内レイアウトもBMP-1歩兵戦闘車と同様で車体前部左側が操縦室、前部右側が機関室、車体中央部が砲塔を搭載した戦闘室、車体後部が兵員室となっている。

エンジンは、装輪式のTABC-79装甲偵察車と同じ出力154hpのディーゼル・エンジンを搭載しているが、重量は同等ながら装軌式のMLVM歩兵戦闘車にとってはややアンダーパワーで、路上最大速度は48km/hに留まっている。
MLVM歩兵戦闘車の砲塔は装輪式のTAB-71M装甲兵員輸送車に装備されているのと同じもので、武装は旧ソ連製の14.5mm重機関銃KPVTと7.62mm機関銃PKTを同軸に装備している。

砲塔の左側面には大型の照準機が設けられており、これが外観上の特徴となっている。
車体後部の兵員室には背中合わせに6名分の座席が用意されており、兵員室上面に設けられている2枚のハッチと、車体後面に設けられている左開き式の大型ドアから乗降を行うようになっている。
兵員室の左右側面には各3基ずつ、および車体後面ドアにも2基の計8基のガンポートが設けられており、搭乗歩兵は携行火器を用いて車外を射撃することができるようになっている。

MLVM歩兵戦闘車は1999年の時点で88両がルーマニア陸軍で運用されており、輸出はされていない。
本車はすでに旧式化しているため、MLI-84M歩兵戦闘車に準ずる近代化改修を実施することが提案されている。
この近代化改修プランでは、MLVM歩兵戦闘車の砲塔をイスラエルのラファエル社製の遠隔操作式武装ステイションOWS-25Rに換装して、武装をスイスのエリコン社製の80口径25mm機関砲KBAと、イスラエル製のスパイクLR対戦車ミサイルの組み合わせに強化する。

またパワーパックをドイツのダイムラー社製もしくはドゥーツ社製の出力400hpのディーゼル・エンジンと、自動変速機の組み合わせに変更して機動性能が改善される。
現在のところこの近代化改修プランは実施されておらず、2005年に首都ブカレストで開催された兵器展示会に試作車が出展されたのみである。

MLVM歩兵戦闘車の派生型としては、砲塔を撤去して車内に120mm迫撃砲M1982を搭載したMLVM AR自走迫撃砲、砲塔を撤去して車内を2.1t分の弾薬収容スペースとしたMLVM ABAL弾薬運搬車、MLVM ABALと同様の構造を持ち、車内を負傷兵の収容スペースとしたMLVM MEDEVAC野戦救急車が存在する。
MLVM AR自走迫撃砲は120mm迫撃砲を後ろ向きに搭載しており、そのまま車内から射撃を行うことができる他、120mm迫撃砲を車外に降ろして使用することもできる。


<MLVM歩兵戦闘車>

全長:    5.85m
全幅:    2.71m
全高:    1.95m
全備重量: 9.0t
乗員:    2名
兵員:    7名
エンジン:  サヴィエム798-05M2 4ストローク直列6気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル
最大出力: 154hp
最大速度: 48km/h(浮航 15km/h)
航続距離: 700km
武装:    14.5mm重機関銃KPVT×1 (600発)
        7.62mm機関銃PKT×1 (2,500発)
装甲厚:


<参考文献>

・「世界のAFV 2021~2022」  アルゴノート社
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社


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