MAV-5装甲車はイヴェコ社が価格と運用コストの低減を図って、同社製の市販トラックであるM40.10トラックのシャシーを流用してプライヴェート・ヴェンチャーで開発した4×4型の装輪式装甲車である。 エンジンや足周りには市販車でも定評のあるパーツを使用しており、安価でありながら性能面では不安は無い。 また本車は装甲車両としては珍しく、ボンネットがあるセミ・フォワード・キャブ方式を採用しており、エンジンへのアクセスが良く整備性が高くなっている。 外形からも分かるようにMAV-5装甲車は本格的な戦闘車両というよりは、明らかに治安任務やPKO向きの車両といえる。 被空輸性も配慮されており、C-130輸送機に2両搭載することができる。 車体の装甲防御力は、全周に渡って7.62mm機関銃弾の直撃と榴弾の破片に耐える程度である。 車内レイアウトは車体最前部が機関室、その後方が操縦室、車体後部が兵員室となっている。 パワーパックはイヴェコ社製の8142 直列4気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(排気量2.5リットル、出力103hp)と、前進5段/後進1段の手動変速機の組み合わせとなっており、路上最大速度100km/h、路上航続距離600kmの機動性能を発揮する。 操縦室内には3名分の座席が用意されており、一番左側に操縦手が位置する。 操縦室の前面と左右側面には防弾ガラスがはめ込まれた大きめの窓が設けられており、視界が広く操縦し易い。 この防弾ガラスは38mmの厚さがあり、車体装甲と同等の防御力を持っている。 車体後部の兵員室には6名の完全武装歩兵を収容することができ、それぞれに回転可能な独立した座席が用意されている。 兵員の乗降は、車体の左右側面と後面右側に設けられたドアから行う。 兵員室の左右側面と後面には視察用ブロックとガンポートが各2基ずつ設けられており、搭乗歩兵が車外を射撃できるようになっている。 また操縦室の前面右側と左右側面にも、ガンポートが各1基ずつ設けられている。 兵員室の上面には円形のハッチが設けられており、リング・マウントに7.62mm機関銃を装備することができる。 その他にも、このハッチには対戦車ミサイル発射機や無反動砲を搭載することもできるとされている。 オプションではあるがエアコンも装備できる等、本車は居住性が良く、広い前方視界で操縦疲労も軽減されて、長距離のコンボイ・エスコート任務等にも向いている。 MAV-5装甲車は「VM90」の名称でイタリア陸軍に200両、警察特殊部隊用に12両が採用されている。 またPKOでの戦訓から、地雷に対する防御力を強化した発達型のMAV-5MP(Mine Protection:地雷防御)装甲車も開発されている。 |
<MAV-5装甲車> 全長: 4.66m 全幅: 2.00m 全高: 2.15m 全備重量: 4.45t 乗員: 3名 兵員: 6名 エンジン: イヴェコ8142 直列4気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 103hp/3,800rpm 最大速度: 100km/h 航続距離: 600km 武装: 7.62mm機関銃MG42/59×1 (1,000発) 装甲厚: |
<参考文献> ・「パンツァー2002年2月号 DSEi2001の装輪戦闘車」 二木巌 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2007年3月号 アフガンにおけるイタリア軍車輌」 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年10月号 イタリア軍AFVの40年」 アルゴノート社 ・「新・世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の軍用4WDカタログ」 三修社 ・「世界の軍用4WD図鑑PART2」 スコラ |