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マンバ装甲車





1970年、南アフリカ陸軍は兵員の輸送、物資の輸送、後方警備などのために、不整地走行性能に優れた西ドイツのダイムラー・ベンツ社製の4×2型汎用トラック、ウニモグ416・162を採用した。
これは1975年にナミビア北部やアンゴラなどでの作戦で使用され、その機動力は高い評価を受けたが、ソフトスキンであったため地雷やゲリラの待ち伏せなどで少なくない損害を受けた。

南アフリカ陸軍は新型のサミル汎用トラック・シリーズの採用に伴い、不要となったウニモグ416・162汎用トラックの駆動系を流用した、パトロールなどを主たる任務とした分隊が搭乗できる4×2型の軽耐地雷装甲車の開発を、開発専門のメカム社(当時はアームスコー社傘下だったが、その後設立されたデネル社の一事業部となった)に担当させた。

当初、試作にはトヨタ自動車のダイナ4×2トラックが使用された。
メカム社は「モダバイク」と呼ばれる試作車をわずか31日で製作し、慎重なトライアルの後に「マンバ」(Mamba:南アフリカ産のコブラ科の大型毒ヘビ)と命名され、南アフリカ陸軍に採用された。
マンバ装甲車の生産は、トラックやバスを生産していた大型車両メーカーTMF社の装甲車両部門(同部門は後にロイメック・サンダック社に吸収された)が担当した。

南アフリカ陸軍はさらなる路外踏破性能を要求したため、1993年に駆動方式を4×2から4×4に改めたマンバMk.II装甲車が開発された。
マンバMk.II装甲車の生産はサンダック・アストラル社の装甲車両部門、ロイメックOMC社が担当した。
TMF社の装甲車両部門を吸収していた同社は、1999年にイギリスのヴィッカーズ・ランドシステムズ社の傘下に入り、ヴィッカーズOMCと社名を変更している。

マンバMk.II装甲車の車体は圧延防弾鋼板の全溶接モノコック構造で、装甲防御力は小銃弾と榴弾の破片程度と標準的である。
特徴的なのが南アフリカ製装甲車両に共通する地雷防御で、全体に戦闘室が腰高でグラウンド・クリアランスが大きく、地雷の爆風を左右に逃がすようにV字型の断面形状をしている。

メーカーによれば車輪の下での2個の対戦車地雷の爆発、車体下での1個の対戦車地雷の爆発でも安全が確保できるという。
車内レイアウトは一般的なもので車体最前部が機関室、その後方が操縦室、最後部が兵員室という通常の乗用車型となっており、乗員2名+兵員9名が定員である。

前述したような地雷防御の秘策が盛り込まれているものの、見た目はそれほど違和感の無い形にまとめられている。
V字型車体の左右はうまく形状を合わせた雑具箱に使用されており、スペース的な無駄も省かれている。
操縦室内には並列に2名分のシートが設けられており、右側のシートに操縦手、左側のシートに車長が座る。

右ハンドルなのは、イギリス式だからである。
もちろん、海外市場向けには左ハンドル・ヴァージョンが用意されている。
後部の兵員室内には左側に5名、右側に4名分のシートが設けられている。
後部の兵員を含めて、各シートにはしっかりしたシートベルトが用意されている。

これはもちろん地雷対策で、例えば爆発で車体が横転した時など車体が無事でも、内部の人間に被害が及ぶようなことを避けるためである。
乗降口は車体後面に大型のドアがあるが、車体左右側面には構造的に設けることができず、操縦手と車長はそれぞれに設けられた天井のハッチから出入りすることになる。
車長用ハッチの前方には銃架が設けられており、必要があれば機関銃を装備することができる。

なお天井ハッチは兵員室にも片側3個ずつ計6個用意されていて、それぞれ兵員が身を乗り出して射撃用に使用することが可能である。
操縦室の前面と左右側面、および兵員室の左右側面と後面には防弾ガラスの大きな窓が設けられており、良好な視界を確保している。

これは見張り能力の向上と、兵員の疲労の軽減を図ったものである。
防弾ガラスの防弾能力は、車体と同レベルである。
また兵員室の窓には、必要に応じてガンポートを設けることができる。
近年、ボスニアなどでは成形炸薬型の対戦車地雷TRMP-6に対して防御が必要となり、車体下部にセラミックを挟んだ装甲もオプションで採用できる。

エンジンは、ダイムラー・ベンツ社製のOM352 直列6気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力123hp)を搭載しており、これは台座ごと前方に引き出すことができ、容易に修理・交換が可能である。
前輪右上部は燃料タンクでタンクはベルトで固定されており、カバーを外せば簡単に交換できる。
また、前輪左上部は100リットルの飲料水タンクとなっている。
これは、砂漠での長期行動に備えた南アフリカらしい配慮である。

高い整地、不整地機動性を誇るウニモグ汎用トラックの駆動系を使用しているため登坂力は40.8度もあり、路上最大速度は102km/hと高速である。
マンバMk.II装甲車の生産は1993年に開始され、第1ロットとして1994年3月までに151両が生産された。
さらに輸出成約も図られ、1997年までに67両が7カ国に輸出され、南アフリカ陸海軍への追加生産を合わせて合計653両が生産されており、国連のPKO活動などでも広く使用されている。

また輸出に関しては、世界中に多くの顧客と販売網を持っているイギリスのアルヴィス社やフランスのパナール社と提携を行い、アルヴィス社では「アルヴィス8/4」という独自の派生型も開発されたが、ヴィッカーズ社の傘下に入ったことで今後の販売網の変更は流動的と見られている。
マンバMk.II装甲車には、これまでに顧客の要望に応じてすでに9つの派生型が製作されている。

基本型の兵員輸送車ヴァージョンの他に救急車、指揮車、汎用車両、回収車両、VIP輸送車両、兵站輸送車両などがある。
前部を4名乗りのクローズド・キャビン、後部をオープン・カーゴとしたカーゴ・キャリア・ヴァージョンもあり、貨物輸送用の他、多連装ロケット弾発射機などの武器を搭載したウエポン・キャリアや、その他コンテナ・システム搭載車両として使用される。

また、より軽微な防御能力とした簡易ヴァージョンも提供できる。
マンバMk.II装甲車のショート・ホイールベース・ヴァージョンも開発されており、こちらは「コマンチ」(Comanche:北アメリカ先住民の1部族)と呼ばれている。
コマンチ装甲車には、7名が乗車可能である。


<マンバMk.II装甲車>

全長:    5.46m
全幅:    2.205m
全高:    2.495m
全備重量: 6.8t
乗員:    2名
兵員:    9名
エンジン:  ダイムラー・ベンツOM352 4ストローク直列6気筒液冷ディーゼル
最大出力: 123hp/2,800rpm
最大速度: 102km/h
航続距離: 900km
武装:
装甲厚:


<アルヴィス8装甲車>

全長:    5.50m
全幅:    2.20m
全高:    2.60m
全備重量: 7.5t
乗員:    2名
兵員:    9名
エンジン:  ダイムラー・ベンツOM352 4ストローク直列6気筒液冷ディーゼル
最大出力: 123hp/2,800rpm
最大速度: 110km/h
航続距離: 900km
武装:
装甲厚:


<参考文献>

・「パンツァー2005年6月号 アルビス8軽偵察装甲車」 小林直樹 著  アルゴノート社
・「新・世界の装輪装甲車カタログ」  三修社
・「世界の装輪装甲車カタログ」  三修社
・「世界の軍用4WDカタログ」  三修社
・「世界の軍用4WD図鑑PART2」  スコラ


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