M60戦車
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+概要
M60戦車はM46、M47、M48の一連のパットン戦車シリーズの後継として、ソ連陸軍の新型中戦車T-54Aに対抗するために、1956年11月に急遽開発が決まったものである。
このため開発期間を短縮するために、M48パットン戦車の基本設計を流用し、これに改良を加えることで新型MBT(主力戦車)の開発を進めることになった。
当初はM48A2戦車の車体を用いて、エンジンをガソリンからディーゼルに変更し、変速・操向機や冷却装置と一体化してパワーパック形式とする機関系の改良と、新型の主砲を備える新砲塔の開発の2本立てで作業が行われることが決まった。
エンジンをディーゼルに変更したのは、ガソリン・エンジンはパワーに優れているが燃費が非常に悪く、被弾時には誘爆の危険も高かったためである。
新しいエンジン(アラバマ州モービルのコンティネンタル自動車製の、AVDS-1790-P V型12気筒空冷スーパーチャージド・ディーゼル・エンジン、出力650hp)をM48A2戦車に搭載した車体は、1957年夏には完成して試験に供され、1958年2月にはパワーパックを搭載し、車体もより単純な溶接式の新型に改めた試作車、「M48A2E1」が3両改造されることになり、完成後に「XM60」と呼称も変更されている。
一方、主砲の方も様々な戦車砲を射撃試験した結果、イギリスの王立造兵廠が開発した、51口径105mmライフル砲L7A1が最良という結論が1958年11月に出され、このL7A1の砲身に、アメリカの手になるT254E2砲尾部を組み合わせた戦車砲を新たに開発し、「105mm戦車砲M68」として制式化され、XM60戦車への搭載が決まった。
パットン戦車シリーズは、これまで国産の戦車砲を使い続けてきたが、ここに至っても自前の新型大口径砲を完成できなかったため、やむなく外国製戦車砲を主砲に採用したわけである。
XM60戦車の主砲の原型となったイギリス製の105mmライフル砲L7は、非常に低伸弾道性(曲がらず直進すること)と装甲貫徹力に優れ、XM60戦車だけでなく旧西ドイツのレオパルト1戦車や、日本の74式戦車に代表される西側列国の戦後第2世代MBTの主砲に採用されている。
有効射程距離は2,000m、発射速度は6〜8発/分で、APDS(装弾筒付徹甲弾)を使用した場合、砲口初速1,470m/秒、射距離1,000mで厚さ約300mmのRHA(均質圧延装甲板)を貫徹できた。
ちなみに、XM60戦車と同時期に登場したソ連陸軍のT-55中戦車が搭載していた、56口径100mmライフル砲D-10T2Sの装甲貫徹力は、同じ条件で約170mmだという。
照準装置は当時の最先端のもので、車長と砲手のサイトは昼間用の光学式照準潜望鏡で、夜間作戦の時には主砲の防盾に取り付けてある、大型の白光/赤外線キセノン・サーチライトで目標を照射して砲撃を行った(有効照射距離は白光で2,000m、赤外線で750m)。
測遠機は、対物鏡の二重の像を合致させるM17A1基線長式測遠機が装備されていた。
測定距離は500〜4,000mで誤差は±25mであり、やや精度に難はあったが操作は初心者にも容易であった。
またXM60戦車は、NBC(対核・生物・化学兵器)防護システムを逸早く搭載していた。
これは、核兵器使用後の戦場での作戦遂行能力を戦車部隊に付与するためのシステムで、車内の浄化装置と空気加圧装置によって、汚染された戦場でも長時間の行動を可能にしたのである。
XM60戦車は1959年3月に、「105mm砲戦車M60」(105mm Gun Tank M60)として制式化され、第1生産ロットとして180両が発注されて、同年4月から生産が開始された。
M60戦車には公式な愛称は与えられなかったが、アメリカ陸軍は本車をパットン戦車シリーズの発展型と位置付けており、実際に基本設計や外観はパットン戦車のものを受け継いでいたため、M60戦車は「スーパー・パットン」という通称で呼ばれるようになった。
M60戦車の生産メーカーには、ミシガン州オーバーンヒルズのクライスラー社が選定され、第1生産ロットの360両は、デラウェア州にある同社のニューアーク工場で、第2生産ロットの720両は、ミシガン州ウォーレンのデトロイト工廠でそれぞれ生産が行われた。
M60戦車シリーズの生産は1982年まで継続して行われ、アメリカ陸軍および海兵隊の他にエジプト、イスラエル、イラン、サウジアラビアなどの中東諸国や、韓国など25カ国以上に輸出された。
M60戦車シリーズの総生産数は一説では約2万両ともいわれており、戦後のアメリカ製MBTの中で最多の生産数を誇っている。
なお、M60戦車シリーズにはM60、M60A1、M60A2、M60A3の4タイプが存在するが、最初の生産型であるM60戦車は、M48A4戦車で試験された105mm砲塔を新型車体に搭載した折衷型であり、105mm戦車砲を搭載している以外はM48戦車とそっくりな外見をしていた。
M60戦車はあくまで、M48戦車の後継MBTの実用化を急ぐアメリカ陸軍の要求を満たすため、暫定的に製作された過渡期の車両に過ぎず、続いて登場した最初の本格量産型であるM60A1戦車において、シリーズの基本形が確立された。
なお、M60戦車は1,080両が新規に生産された他、M48A2戦車から230両(1958年に50両、1959年に180両)が本車に改修されている。
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<M60戦車>
全長: 9.309m
車体長: 6.947m
全幅: 3.632m
全高: 3.213m
全備重量: 46.27t
乗員: 4名
エンジン: コンティネンタルAVDS-1790-2 4ストロークV型12気筒空冷スーパーチャージド・ディーゼル
最大出力: 750hp/2,400rpm
最大速度: 48.28km/h
航続距離: 483km
武装: 51口径105mmライフル砲M68×1 (57発)
12.7mm重機関銃M85×1 (900発)
7.62mm機関銃M73×1 (5,950発)
装甲厚: 12.7〜177.8mm
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<参考文献>
・「パンツァー2008年3月号 M60戦車の40年」 佐藤慎ノ亮/竹内修 共著 アルゴノート社
・「パンツァー2004年6月号 74式戦車 vs M60A1戦車」 小野山康弘 著 アルゴノート社
・「パンツァー2012年11月号 各国の第二世代MBT」 柘植優介 著 アルゴノート社
・「パンツァー2012年11月号 ベル・エポックのMBT」 城島健二 著 アルゴノート社
・「パンツァー2001年4月号 M60戦車シリーズ」 古是三春 著 アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート8 パットン戦車シリーズ」 アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート9 レオパルト1と第二世代MBT」 アルゴノート社
・「世界AFV年鑑 2005〜2006」 アルゴノート社
・「グランドパワー2014年4月号 M60主力戦車の開発と構造」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版
・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後〜現代編」 デルタ出版
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」 洋泉社
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー
・「世界の最新陸上兵器 300」 成美堂出版
・「新・世界の主力戦車カタログ」 三修社
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