M4A3E2突撃戦車
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+概要
アメリカ陸軍は歩兵の突撃を支援できる戦車の必要性を認識しており、その任務に充てるための重戦車を実用化することが構想されていたが、幾つかの試みはどうしてもものにならなかった。
このため1944年初め、ジェネラル・モータース社傘下のミシガン州のグランドブランク工廠において、重装甲の歩兵支援突撃戦車の開発が始められた。
しかしアメリカ陸軍には適当な重車体が無かったため、広く使用されていたM4A3中戦車の車体をベースに開発されることになった。
M4A3中戦車の改造は、突破のための重装甲の付与が中心となった。
車体は前面および左右側面に1.5インチ(38.1mm)厚の増加装甲板が追加され、ディファレンシャル・カバーも最大5.5インチ(139.7mm)の厚さを持つものに改められた。
砲塔はT23中戦車用に開発されていたものを基本にして、装甲厚を6インチ(152.4mm)に増したものが採用された。
主砲防盾は76.2mm戦車砲M1用のM62防盾に追加装甲を施したT110と呼ばれるもので、厚さは7インチ(177.8mm)に達した。
この装甲強化の結果、戦闘重量はM4A3中戦車より約8t増加して38.1tに達した。
エンジンは変更されなかったため、路上最大速度はM4A3中戦車の26マイル(41.84km)/hから22マイル(35.41km)/hに低下した。
ただし、接地圧を下げるため履帯の両端に幅を広げるアタッチメントが取り付けられたため、行動能力はある程度確保されていた。
本車はM4A3E2「ジャンボ」(Jumbo:巨漢、巨獣)の呼称で1944年3月より限定制式化され、同年5月からグランドブランク工廠で生産が開始されたが、すぐにミシガン州ウォーレンのデトロイト工廠で開発が進められていたM26パーシング重戦車の生産開始が決定されたため、1944年7月までの3カ月間にわずか254両が完成しただけで生産は打ち切られた。
ジャンボ突撃戦車は大急ぎでヨーロッパに送られたが、1944年秋に実戦投入された時点で将兵たちには非常に評判が高かった。
重量増加が路上速度の低下に繋がったとはいえ、防御力の強化はそれを埋め合わせて余りあるものと受け取られたのである。
ジャンボ突撃戦車は、対戦車砲が待ち伏せしていそうな道路を進む縦隊の先導役に活用された。
本車の主砲は原型のM4A3中戦車と同じ37.5口径75mm戦車砲M3が搭載されていたが、一部の車両では現地改造で、破壊されたM4中戦車シリーズから取り外された52口径76.2mm戦車砲M1に換装された他、車体前部に火焔放射機が装着された車両もあった。
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<M4A3E2突撃戦車>
全長: 6.274m
全幅: 2.936m
全高: 2.954m
全備重量: 38.102t
乗員: 5名
エンジン: フォードGAA 4ストロークV型8気筒液冷ガソリン
最大出力: 500hp/2,600rpm
最大速度: 35.41km/h
航続距離: 161km
武装: 37.5口径75mm戦車砲M3×1 (104発)
12.7mm重機関銃M2×1 (300発)
7.62mm機関銃M1919A4×2 (4,750発)
装甲厚: 12.7〜177.8mm
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兵器諸元(M4A3E2突撃戦車)
兵器諸元(M4A3E2突撃戦車 76.2mm砲搭載型)
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<参考文献>
・「パンツァー2015年9月号 防禦力と火力でシャーマン戦車の究極を目指したジャンボとファイアフライ」 加賀屋
太郎 著 アルゴノート社
・「パンツァー2015年1月号 第二次大戦時の直援用車輌列伝」 久米幸雄 著 アルゴノート社
・「パンツァー2003年4月号 M4シャーマン戦車シリーズ(3)」 白石光 著 アルゴノート社
・「世界の戦車イラストレイテッド5 シャーマン中戦車 1942〜1945」 スティーヴン・ザロガ 著 大日本絵画
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「グランドパワー2002年3月号 M4A3シャーマン(105mm&ジャンボ)」 遠藤慧 著 デルタ出版
・「第2次大戦 イギリス・アメリカ軍戦車」 デルタ出版
・「グランドパワー2020年1月号 M4シャーマン戦車シリーズ(2)」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「第2次大戦 米英軍戦闘兵器カタログ Vol.3 戦車」 ガリレオ出版
・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 斎木伸生 著 光人社
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版
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