+概要
M41ウォーカー・ブルドッグ軽戦車は、第2次世界大戦中に開発されたM24軽戦車、M4中戦車、M26重戦車に代わる新型戦車トリオの一環として、アメリカ陸軍が1950年代初頭に開発した軽戦車である。
1950年代に大量のM41軽戦車をアメリカから導入したデンマーク陸軍は、1990年代までこれらの車両を使用する決定を1980年半ばに下した。
このためオーデンセのファルク・シュミット社と、アメリカと西ドイツの共同出資会社のNAPCOインターナショナル社が改良を施すことになり、試作車が試験に供されることになった。
結局、53両のM41軽戦車が「M41DK-1」として改修され、1988年に最終車両がデンマーク陸軍に引き渡された。
M41DK-1軽戦車は、オリジナルのM41軽戦車から約70カ所の点に改良が施されている。
車体は圧延防弾鋼板の溶接構造で、車内レイアウトは車体前部左側が操縦手席、前部右側が主砲弾薬庫、車体中央部が全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室、車体後部が機関室というオーソドックスなものである。
砲塔も圧延防弾鋼板の溶接構造で、砲塔内部右側前方が砲手席、その後ろが車長席となっており、反対の左側は装填手席と、こちらもオーソドックスなレイアウトとなっている。
以下、M41軽戦車からの主な変更点を列記する。
M41DK-1軽戦車では砲塔の左右に各4基ずつ、デンマーク陸軍のレオパルト1戦車が装備しているのと同型の76mm発煙弾発射機を装備している。
主砲はアメリカ製の60口径76.2mm戦車砲M32のままだが、砲弾にはイスラエルのIMI社(Israel Military Industries:イスラエル軍事工業)が開発したAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)を導入し、装甲貫徹力を向上させている。
また、主砲防盾の上部にはハロゲン・サーチライトが追加されている。
砲塔上面に装備している対空機関銃は、アメリカのブラウニング火器製作所製の12.7mm重機関銃M2から、西ドイツのラインメタル社製の7.62mm機関銃MG3に変更されている。
また、主砲と同軸機関銃の発射煙排出システムが追加されている。
砲塔後部にはNBC防護装置が追加されたため、バスルの張り出しが非常に長くなっている。
FCS(射撃統制装置)はオリジナルの直接照準サイトを、砲手用熱線暗視装置、レーザー測遠機等を組み合わせたものに換装している。
車体側面には、レオパルト1戦車のものに良く似た装甲スカートが装着され、防御力を向上させている。
エンジンは、アメリカのコンティネンタル自動車製のAOS-895-3 水平対向6気筒空冷スーパーチャージド・ガソリン・エンジン(出力500hp)から、同国のカミンズ社製のVTA-903TR
V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力465hp)に換装している。
これは、アメリカ陸軍のM2ブラッドリー歩兵戦闘車が搭載しているエンジンと同系列のものである。
このエンジンの換装と、燃料搭載量が930リットルに増加したことにより、路上航続距離はオリジナルのM41軽戦車の161kmから、750kmに大幅に延伸されている。
火災検知/消火システムも追加され、バッテリーも新しいものに交換されている。
M41軽戦車は現在では完全に時代遅れになってしまっているが、このM41DK-1軽戦車では特に夜間戦闘能力が向上しており、水陸両用戦車や空挺戦車等にはまだまだ充分通用する戦車だといえよう。
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