アメリカ陸軍は、1920年に発布された国家防衛法により歩兵部隊のみが戦車の装備を認められていたため、騎兵部隊向けの戦車には「戦闘車」（Combat Car）という呼称が与えられた。
1930年代には幾つもの戦闘車が開発されたが、このM1戦闘車は歩兵部隊のT2軽戦車を母体として開発されたT5戦闘車から発展したものである。

T5戦闘車は1934年にイリノイ州のロックアイランド工廠で開発された車両で、車体は基本的にT2軽戦車と同じであったが、T2軽戦車がサスペンションにリーフ･スプリング（板ばね）を用いていたのに対し、T5戦闘車はより単純な垂直渦巻スプリングを採用したのが特徴であった。
履帯は、T2軽戦車と同じくラバー・ブロック式のものを装着していた。

車体上部にはユタ州オグデンのブラウニング火器製作所製の12.7mm重機関銃M2を1挺装備する砲塔と、同社製の7.62mm機関銃M1919A4を1挺装備する砲塔を左右並列に搭載しており、車体前部右側のボールマウント式銃架にも7.62mm機関銃M1919A4を1挺装備していた。
エンジンはT2軽戦車と同じく、アラバマ州モービルのコンティネンタル発動機製のW-670-7 星型7気筒空冷ガソリン・エンジン（出力262hp）を搭載していた。

なお試験用に、T5戦闘車にテキサス州ダラスのギバーソン・ディーゼル・エンジン社製のT-1020 星型9気筒空冷ディーゼル・エンジン（出力245hp）を搭載した車両も製作されており、こちらは「T5E3」と改称されている。
その後1934〜35年にかけてT5戦闘車の砲塔を廃止し、代わりに箱型の密閉式戦闘室を搭載した車両が「T5E1」の名称で試作された。

このT5E1戦闘車は戦闘室前面に12.7mm重機関銃M2と7.62mm機関銃M1919A4を各1挺ずつ、戦闘室左右側面と後面にも7.62mm機関銃M1919A4を各1挺ずつ、さらに車体前部右側にも7.62mm機関銃M1919A4を1挺と、合計6挺もの機関銃を装備していた。
さらに1936年にはT5戦闘車の車体をベースに、12.7mm重機関銃M2と7.62mm機関銃M1919A4を防盾に同軸装備する新型砲塔を搭載した車両が「T5E2」の名称で試作された。

試験の結果が良好であったため本車は「M1戦闘車」（Combat Car M1）として制式化され、その後1940年に「M1A2軽戦車」（Light Tank M1A2）に名称が変更されている。
本車は基本的には、ロックアイランド工廠がT5戦闘車シリーズと並行して開発を進めたT2軽戦車の改良型のT2E1軽戦車と同様の車両であり、後のM2軽戦車シリーズの基本形となった。