M15/42中戦車
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+概要
M15/42中戦車は、イタリア陸軍が第2次世界大戦中に制式化した最後の中戦車となった車両で、M14/41中戦車から発展した火力、装甲強化型でもある。
開発はそれまでの中戦車と同じくフィアット・アンサルド社の手で行われ、1942年に制式化されたが、M11/39中戦車からM13/40中戦車に発展したのと同様に、足周りはM14/41中戦車とほぼ共通で戦闘重量の増加に対処してエンジンの出力を向上させ、その結果として車体サイズがわずかに大きくなるのも同じであった。
車体と砲塔はリベット接合構造が踏襲され形状もほとんど変化していないが、M14/41中戦車では戦闘室左側面に設けられていた脱出用ハッチが、車内レイアウトの変更により右側面に移動したのが目立つ。
車体側面にジェリカンなどを車外装備する際に用いる外部雑具ポイントが溶接されたのも、変更箇所である。
また、砲塔には電動式油圧旋回装置が装備された。
主砲はM14/41中戦車と同じく47mm戦車砲を採用しているが、M14/41中戦車の32口径長から40口径長に長砲身化され初速の増大が図られている。
この変更により砲口初速は630m/秒から820m/秒に増え、結果として装甲貫徹力が向上することになり、装甲防御力の強化と併せて戦闘力はM14/41中戦車を大きく上回った。
M14/41中戦車との最大の相違点は、戦闘重量の増加に伴ってエンジンの出力アップが求められたものの、当時の技術ではまだ大出力ディーゼル・エンジンの開発には時間を要したため、出力192hpのV型8気筒液冷ガソリン・エンジンが搭載されたことである。
このエンジンの変更によって、機動力は大幅に向上している。
車体後部は新型エンジンの搭載に伴って形状が変化し、機関室の点検用ハッチにはスリットが設けられた。
また、排気管には装甲カバーが追加されている。
M15/42中戦車の量産は1942年末に開始され、1943年から生産型の部隊への引き渡しが開始されたが、1943年3月にこのクラスの戦車は全て突撃砲として生産するという方針が決まったため、1943年9月8日にイタリアが連合軍に降伏するまでに完成したM15/42中戦車はわずか82両であった。
しかしイタリア降伏後も、ドイツ軍の管理下でM15/42中戦車は生産が続けられさらに30両が完成しており、一部の車両はドイツ軍が使用した。
M15/42中戦車の派生型としては、戦闘室前面右側の8mm機関銃を外して無線機を増設し、アンテナを追加した指揮戦車があるがこれは生産数の中に含まれている。
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<M15/42中戦車>
全長: 5.04m
全幅: 2.23m
全高: 2.39m
全備重量: 15.5t
乗員: 4名
エンジン: フィアットSPA 15TB-M42 4ストロークV型8気筒液冷ガソリン
最大出力: 192hp/2,400rpm
最大速度: 40km/h
航続距離: 220km
武装: 40口径47mm戦車砲×1 (111発)
8mmブレダM38機関銃×3 (2,640発)
装甲厚: 10〜45mm
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兵器諸元
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<参考文献>
・「パンツァー2005年4月号 イタリア中戦車 M13/40,M14/41,M15/42 その開発・構造・バリエーション」
稲田美秋 著 アルゴノート社
・「パンツァー2022年7月号 イタリア軍写真集(10) M15/42と派生型、戦場写真集」 吉川和篤 著 アルゴノート
社 ・「パンツァー2022年9月号 イタリア軍写真集(11) M13/M14/M15中戦車シリーズ戦場写真集」 吉川和篤 著
アルゴノート社
・「パンツァー2020年5月号 イタリア戦車 その誕生と苦難の歩み」 吉川和篤 著 アルゴノート社
・「パンツァー2001年7月号 地中海戦域におけるイタリア中戦車」 白石光 著 アルゴノート社
・「グランドパワー2020年9月号 博物館の九五式軽戦車とイタリア軍戦車」 齋木伸生 著 ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」 ガリレオ出版
・「グランドパワー2000年4月号 イタリア陸軍(1) イタリア軍の軍用車輌」 嶋田魁 著 デルタ出版
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」 洋泉社
・「戦車名鑑 1939〜45」 コーエー
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