M13/40,M14/41中戦車
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+概要
イタリア陸軍初の本格的な中戦車として開発されたM11/39中戦車は、主砲を戦闘室前面右側に装備したために旋回角が充分に取れないなど多くの問題があった。
これらの問題点を解消するためすぐに新型中戦車の開発が決定され、この計画の具体化と共にM11/39中戦車の量産は100両で打ち切られている。
新型中戦車の開発はM11/39中戦車同様、フィアット・アンサルド社でM11/39中戦車の開発とほぼ並行して進められた。
1939年に試作車が完成し、翌40年には「13/40中戦車」(Carro Armato Medio 13/40)として制式採用されており、同年半ばには早くも生産型の引き渡しが開始されている。
M13/40中戦車のシャシーはM11/39中戦車のものを拡大延長して使用しているが、サスペンションの基本構造などはM11/39中戦車のものがそのまま用いられており、開発期間の軽減に寄与している。
M11/39中戦車では戦闘室上面に8mm機関銃を連装で装備する小型砲塔が搭載されていたが、M13/40中戦車ではこれに代えて新たに開発された大型の全周旋回式砲塔が搭載された。
戦闘室前面右側に主砲を限定旋回式に装備していたM11/39中戦車とは異なり、M13/40中戦車の主砲である47mm戦車砲はこの全周旋回式砲塔の防盾に装備された。
これによってM13/40中戦車は主砲の全周射撃を行うことが可能になり、M11/39中戦車に比べて戦闘力が大幅に向上した。
これは、M13/40中戦車で初めて動力旋回式砲塔が採用された結果である。
M13/40中戦車の砲塔は油圧で駆動され、故障時や微調整用に手動の旋回装置も装備されていた。
主砲の32口径47mm戦車砲M35は、オーストリアのベーラー社が設計した47mm歩兵砲をアンサルド社でライセンス生産したもので、50mmクラスの戦車砲としては長砲身高初速の優秀な砲であり、徹甲弾を用いた場合射距離1,000mで、垂直に立った43mm厚のRHA(均質圧延装甲板)を貫徹する能力があった。
副武装としては主砲と同軸に8mmブレダM38機関銃を1挺、対空用にも8mm機関銃を1挺、戦闘室前面右側にも8mm機関銃を連装で装備していた。
砲塔に主砲を装備したことによって、砲塔内の乗員数は車長兼装填手に砲手が加わって2名となり、車体の2名と合わせてM11/39中戦車より1名増えて乗員は合計4名となっている。
M13/40中戦車のエンジンはM11/39中戦車と同様、フィアット社製のV型8気筒液冷ディーゼル・エンジンを採用していたが、戦闘重量の増加に対応してM11/39中戦車の105hpから、125hpに出力が向上した8T-M40エンジンに変更され機動性の低下を防いでいる。
M13/40中戦車の生産開始は1940年7月からで、1943年の生産終了までに799両が製作されている(710両目以降はM14/41中戦車として生産されたという説もある)。
M13/40中戦車が制式となった翌1941年半ば、M13/40中戦車の最大の問題点であったエンジンの出力不足を解決するため、新たに開発された出力向上型の15T-M41
V型8気筒液冷ディーゼル・エンジンをM13/40中戦車に搭載することが決定され、「M14/41中戦車」(Carro Armato Medio
M14/41)という制式呼称が与えられることとなった。
M14/41中戦車で新たに採用された15T-M41エンジンは、M13/40中戦車の8T-M40エンジンの125hpから145hpに出力が向上している。
M13/40中戦車とM14/41中戦車の外観上の違いはラジエイター・グリルのレイアウトが変更された程度で、ほとんど見分けが付かない。
M13/40中戦車は1940年12月にリビアにおいて初めて実戦に参加したが、砂漠での作戦を考えて設計されていなかったため故障車が続出し、戦訓としてエアフィルターおよび他の熱帯用装備が必要であることが判明した。
このため、M14/41中戦車ではこの改修が施されている。
M13中戦車シリーズは第2次世界大戦時のイタリア陸軍機甲部隊の中核であり、各型合計で1,960両が生産されたが、この中には同じシャシーを用いて生産された突撃砲セモヴェンテも含まれている。
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<M13/40中戦車>
全長: 4.92m
全幅: 2.17m
全高: 2.25m
全備重量: 13.7t
乗員: 4名
エンジン: フィアットSPA 8T-M40 4ストロークV型8気筒液冷ディーゼル
最大出力: 125hp/1,800rpm
最大速度: 30.5km/h
航続距離: 200km
武装: 32口径47mm戦車砲M35×1 (87発)
8mmブレダM38機関銃×4 (3,048発)
装甲厚: 6〜40mm
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<M14/41中戦車>
全長: 4.92m
全幅: 2.17m
全高: 2.25m
全備重量: 14.5t
乗員: 4名
エンジン: フィアットSPA 15T-M41 4ストロークV型8気筒液冷ディーゼル
最大出力: 145hp/1,800rpm
最大速度: 33.0km/h
航続距離: 200km
武装: 32口径47mm戦車砲M35×1 (87発)
8mmブレダM38機関銃×4 (3,048発)
装甲厚: 6〜40mm
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兵器諸元(M13/40中戦車)
兵器諸元(M14/41中戦車)
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<参考文献>
・「パンツァー2005年4月号 イタリア中戦車 M13/40,M14/41,M15/42 その開発・構造・バリエーション」
稲田美秋 著 アルゴノート社
・「パンツァー2022年5月号 イタリア軍写真集(9) M13/40とM14/41」 吉川和篤 著 アルゴノート社
・「パンツァー2022年9月号 イタリア軍写真集(11) M13/M14/M15中戦車シリーズ戦場写真集」 吉川和篤 著
アルゴノート社
・「パンツァー2020年5月号 イタリア戦車 その誕生と苦難の歩み」 吉川和篤 著 アルゴノート社
・「パンツァー2001年7月号 地中海戦域におけるイタリア中戦車」 白石光 著 アルゴノート社
・「パンツァー2000年9月号 北アフリカにおけるイタリア軍AFV」 白石光 著 アルゴノート社
・「パンツァー1999年8月号 一式中戦車 vs M13/40」 白石光 著 アルゴノート社
・「グランドパワー2020年9月号 博物館の九五式軽戦車とイタリア軍戦車」 齋木伸生 著 ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」 ガリレオ出版
・「グランドパワー2000年4月号 イタリア陸軍(1) イタリア軍の軍用車輌」 嶋田魁 著 デルタ出版
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」 洋泉社
・「戦車名鑑 1939〜45」 コーエー
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