アメリカ陸軍は当時開発を進めていたT113装甲兵員輸送車(後のM113装甲兵員輸送車)のファミリー車両として、車体後部に81mm迫撃砲を搭載する自走迫撃砲型の開発を1956年5月にFMC社(Food Machinery and Chemical Corporation:食品・機械・化学企業)に発注した。 この自走迫撃砲型は後にT257の試作名称が与えられFMC社は1957年8月から開発に着手し、1958年3月に早くも試作第1号車を完成させた。 T257自走迫撃砲のベース車体となったT113装甲兵員輸送車は元々デトロイト戦車工廠の手で開発が始められた装軌式装甲兵員輸送車で、1956年5月に他のファミリー車両と共にFMC社が開発を引き継ぐことになった。 T113装甲兵員輸送車は防弾アルミ板を用いた車体や転輪配置など、後に制式化されるM113装甲兵員輸送車と基本的に同様のものであったが、車体前面の形状は少々異なり誘導輪も接地型となっているなど一部に変化も見られ、当然ながらT257自走迫撃砲も同じ形状となっていた。 T113装甲兵員輸送車で兵員室となっている車体後部を81mm迫撃砲M29もしくはM29A1を搭載する戦闘室としたため、T257自走迫撃砲では兵員室上面のハッチが3分割された円形ハッチに改められ、また戦闘室の床面にはビームが渡されて射撃時の反動に車体が耐えるよう考慮されていた。 81mm迫撃砲はこのビームの上に溶接されて、全周旋回が可能な円形の台座の上に搭載された。 この迫撃砲は、必要に応じて車外に持ち出して射撃することもできた。 開発中にベース車体となったT113装甲兵員輸送車がT113E2に発展したため、これに合わせてT257自走迫撃砲も新型車体に変更され、試験中に判明した問題点を改良したT257E1に発展した。 T257E1 81mm自走迫撃砲の試作車はXM106 107mm自走迫撃砲の試作車と合わせて3両が発注され、1961年7月より試作車を用いた運用試験が実施された。 さらにM113装甲兵員輸送車のディーゼル・エンジン装備に合わせてT257E1自走迫撃砲もディーゼル・エンジン装備のT257E2に発展し、1964年10月にT257E1は「M125 81mm自走迫撃砲」、T257E2も「M125A1 81mm自走迫撃砲」として制式化されたが、M125自走迫撃砲は結局生産は行われずM125A1自走迫撃砲のみがFMC社のサンタクララ工場で生産され2,252両が完成した。 この内アメリカ陸軍に引き渡されたのは460両で、M106A2 107mm自走迫撃砲と同様にM113A2装甲兵員輸送車の規格に改修された車両は「M125A2 81mm自走迫撃砲」に名称が変更されている。 |
<M125A1 81mm自走迫撃砲> 全長: 4.864m 全幅: 2.686m 全高: 2.496m 全備重量: 11.104t 乗員: 6名 エンジン: デトロイト・ディーゼル6V-53 2ストロークV型6気筒液冷ディーゼル 最大出力: 212hp/2,800rpm 最大速度: 64.37km/h 航続距離: 483km 武装: 10.3口径81mm迫撃砲M29またはM29A1×1 (114発) 12.7mm重機関銃M2×1 (600発) 装甲厚: 28.58〜44.5mm |
<M125A2 81mm自走迫撃砲> 全長: 4.864m 全幅: 2.686m 全高: 2.521m 全備重量: 11.526t 乗員: 6名 エンジン: デトロイト・ディーゼル6V-53 2ストロークV型6気筒液冷ディーゼル 最大出力: 212hp/2,800rpm 最大速度: 64.37km/h 航続距離: 483km 武装: 10.3口径81mm迫撃砲M29またはM29A1×1 (114発) 12.7mm重機関銃M2×1 (600発) 装甲厚: 28.58〜44.5mm |
<参考文献> ・「グランドパワー2018年2月号 戦後の米軍装甲兵員輸送車」 後藤仁 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2022年12月号 M113装甲兵員輸送車」 後藤仁 著 ガリレオ出版 ・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」 デルタ出版 ・「パンツァー2000年4月号 ベストセラーAPC M113シリーズ」 後藤仁 著 アルゴノート社 |