M106自走迫撃砲は、M113装甲兵員輸送車の車体後部に107mm迫撃砲を搭載して自走砲化したものである。 本車の開発は、M113装甲兵員輸送車の試作型であるT113装甲兵員輸送車の開発と並行して進められたため、M113装甲兵員輸送車の派生型としては最初の型式となった。 T113装甲兵員輸送車のモックアップ審査が行われた翌月の1956年11月、まず81mm迫撃砲を装備する自走迫撃砲の開発がFMC社に対して要求され、「T257」の試作名称で開発がスタートした。 続いて81mm迫撃砲と、より大口径の107mm迫撃砲のいずれも搭載可能な発展型のT257E1自走迫撃砲の開発要求が出され、FMC社では可能な限り両型に共通性を持たせて開発を進めることとなる。 T257E1自走迫撃砲は開発要求がT257自走迫撃砲より遅れたため、最初から生産型であるM113装甲兵員輸送車の車体を用いて開発が行われた。 2種の迫撃砲を装備したことに伴い、107mm迫撃砲M30を装備する車両は「XM106」と呼ばれて開発が行われている。 XM106自走迫撃砲の試作車は、81mm迫撃砲を装備するT257E1自走迫撃砲の試作車と合わせて3両が発注された。 XM106自走迫撃砲の試作第1号車は1961年5月より試験を開始し、翌62年7月には残る2両も参加して試験が続けられたが、原型となったM113装甲兵員輸送車が、エンジンをディーゼルに統一するという方針変更に伴いM113A1に発展したのに合わせて、XM106自走迫撃砲もエンジンをディーゼルに換装し、名称も「XM106E1」に変更されている。 そして1964年10月にはXM106が「M106 107mm自走迫撃砲」、XM106E1が「M106A1 107mm自走迫撃砲」としてそれぞれ制式化された。 これに従いFMC社で生産が開始され、M106自走迫撃砲は輸出向けを含めて860両(アメリカ陸軍向けは589両)が、同様にM106A1自走迫撃砲は1,316両(アメリカ陸軍向けは982両)が完成した。 さらにM113装甲兵員輸送車がエンジンとサスペンションを強化したM113A2に発展したのに伴い、M106およびM106A1自走迫撃砲に対しても同様の改修が行われ、この改修車には「M106A2 107mm自走迫撃砲」の名称が与えられている。 M106自走迫撃砲は、M113装甲兵員輸送車で兵員室となっている車体後部を107mm迫撃砲を搭載する戦闘室としているため、兵員室上面のハッチは3分割された円形ハッチに改められており、また戦闘室の下面にはビームが渡されて、射撃時のショックに車体が耐えるよう考慮されている。 107mm迫撃砲はこのビームの上に溶接されて、全周旋回が可能な円形の台座の上に載せられている。 この迫撃砲は、必要に応じて車外に持ち出して射撃することも可能である。 |
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<M106 107mm自走迫撃砲> 全長: 4.928m 全幅: 2.864m 全高: 2.496m 全備重量: 11.25t 乗員: 6名 エンジン: クライスラー75M 4ストロークV型8気筒液冷ガソリン 最大出力: 215hp/4,000rpm 最大速度: 64.37km/h 航続距離: 322km 武装: 107mm迫撃砲M30×1 (88発) 12.7mm重機関銃M2×1 (600発) 装甲厚: 28.58〜44.45mm |
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<M106A1 107mm自走迫撃砲> 全長: 4.928m 全幅: 2.864m 全高: 2.496m 全備重量: 11.79t 乗員: 6名 エンジン: デトロイト・ディーゼル6V-53 2ストロークV型6気筒液冷ディーゼル 最大出力: 212hp/2,800rpm 最大速度: 64.37km/h 航続距離: 483km 武装: 107mm迫撃砲M30×1 (88発) 12.7mm重機関銃M2×1 (600発) 装甲厚: 28.58〜44.45mm |
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<M106A2 107mm自走迫撃砲> 全長: 4.928m 全幅: 2.864m 全高: 2.521m 全備重量: 12.21t 乗員: 6名 エンジン: デトロイト・ディーゼル6V-53 2ストロークV型6気筒液冷ディーゼル 最大出力: 212hp/2,800rpm 最大速度: 64.37km/h 航続距離: 483km 武装: 107mm迫撃砲M30×1 (88発) 12.7mm重機関銃M2×1 (600発) 装甲厚: 28.58〜44.45mm |
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<参考文献> ・「グランドパワー2018年2月号 戦後の米軍装甲兵員輸送車」 後藤仁 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2022年12月号 M113装甲兵員輸送車」 後藤仁 著 ガリレオ出版 ・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」 デルタ出版 ・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版 |
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