+概要
1950年6月25日に勃発した朝鮮戦争を契機に、アメリカ海兵隊と海軍艦艇局は通常の兵員輸送用のLVTだけでなく、戦車や大型の火砲、物資などを搭載して上陸作戦を遂行する大型のLVTの開発にも着手した。
その中で、ワシントン州レントンのPCF社(Pacific Car and Foundry:太平洋自動車製造・鋳造所)が製作したLVTUX2は、実用化されたLVTとしては史上最大のものであった。
その車体の巨大さから、「ゴライアス」(Goliath:アフリカ大陸に生息する世界最大のカエル)の愛称で呼ばれた本車は、全長13.55m、全幅6.40m、全高4.13m、最大積載量55tという大型のLVTであった。
エンジンは、アラバマ州モービルのコンティネンタル発動機製の出力500hpの空冷ガソリン・エンジンを2基搭載しており、合計1,000hpの出力を発揮した。
しかし最大積載時で134tに達する大重量のため、これでもエンジン出力が不足しており、路上最大速度は21km/hに留まった。
なお大重量の車体を支えるため、LVTUX2は大戦末期に開発されたT28超重戦車のように、走行装置を片側2組ずつ備えていた。
走行装置は、トーションバー(捩り棒)とゴムを併用したトーシラスティック式サスペンションで懸架された片側8個の転輪と、91cmという幅広の履帯で構成されていた。
車体後部には油圧で操作する巨大なスクリュー2基が取り付けられており、水上を11km/hの速度で航行することが可能であった。
LVTUX2はLVTとしては破格の最大積載量を誇るため、戦車や自走砲などの重AFVの海上輸送および上陸地点間の輸送にあたることが構想されていた。
本車の研究/開発は1951年から開始され、1957年に試作車の完成に漕ぎ着けたが、結局制式採用には至らずに試作のみに終わっている。
しかしLVTUX2の開発によって、従来の戦闘車両を兼ねた兵員輸送用のLVTとは別に、海上輸送力を重視した大型で高速のLVTの開発に力が注がれるようになった。
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