+概要
アメリカ海兵隊は第2次世界大戦終結後すぐに、海軍艦艇局の支援の下で次世代型LVTの開発に着手した。
まず1946年に、大戦中LVTシリーズの開発・生産の中心を担ってきた、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアのFMC社(Food Machinery
Corporation:食品・機械企業)に対して、「LVTPX3」の呼称で新型LVTの開発要求が出された。
LVTPX3の最初の試作車は1947年に完成し、1950年まで試作車の改良が続けられた。
1940年代末期には、FMC社の他にも海軍艦艇局から指名を受けた数社が次世代型LVTの開発に参入した。
この時期になるとソ連を盟主とした東側陣営と、米英を中心とする西側陣営の冷戦が顕在化し、アジア情勢も中国共産党の台頭で緊迫したことから、アメリカ軍の装備更新予算も追加計上されて俄然、新型LVTの開発競争が活発化した。
コンティネンタル発動機の子会社である、オハイオ州トレドのCAE社(Continental Aviation and Engineering:コンティネンタル航空産業)は、海軍艦艇局の発注仕様に基づいて非装甲型の浮航運搬車両を試作した。
この車両は兵員・貨物輸送の効率と海上の航行能力を重視して、車体を全て軽量なアルミニウムで構成し、なおかつ従来のLVTよりも大型化することが求められた。
1950年にCAE社が完成させた試作車は基本構造物がアルミニウム製で、車体が大柄な割に空荷状態の重量は11.8tと軽く、最大3.6tの人員・貨物を搭載可能であった。
車体後部に大型のランプドアを設ける関係でエンジンは車体前部に搭載されており、浮航能力を高めるために車体の床と両側面、ランプドアがエアタンクの役割を果たすようになっていた。
足周りは戦時中のLVTと同様で、トーションバー(捩り棒)とゴムを併用したトーシラスティック式サスペンションに懸架された、片側12個の小直径転輪と幅広の履帯を持っていた。
なお軽量化のために、転輪や履帯もアルミニウム製のものが用いられた。
パワープラントは、ミシガン州ディアボーンのフォード自動車製のGAA V型8気筒液冷ガソリン・エンジン(出力500hp)と、前進3段/後進1段のトルクマティック式変速・操向機を組み合わせており、路上最大速度25マイル(40.23km)/h、路上航続距離250マイル(402km)、最大浮航速度8マイル(12.87km)/h、浮航航続距離100マイル(161km)の機動性能を発揮した。
この車両は通常の海上航行の性能が良く、操縦手席の位置が高いため視界も良好だったが、アルミニウム製の車体はやや強度が不足しており、これが問題点として指摘された。
結局、この強度不足が理由で本車のアメリカ海兵隊への採用は見送られることになり、試作車1両のみの製作に終わっている。
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