+概要
第2次世界大戦の終結に伴う軍事予算縮減の中、アメリカ海兵隊は装軌式上陸用車両アムトラックについては、ストック品やその改良型のLVT4、LVT3等をアムトラック大隊の主要装備として位置付ける一方で、海軍艦艇局の支援の下、アムトラックの開発・生産に携わってきた各メーカーにより、次世代型のアムトラック開発の試みが1946年以来継続されていた。
アメリカ陸軍は終戦後ほどなくして、アムトラック大隊やアムタンク(武装型アムトラック)大隊を解体し、装備はスクラップにするか同盟諸国に引き渡してしまったのに対して、アメリカ海兵隊は引き続き上陸作戦用としてのアムトラックの価値に確信を持っていたからである。
大戦時にLVTシリーズの開発・生産の中心を担ってきた、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアのFMC社(Food Machinery Corporation:食品・機械企業)は1946年に、次世代型LVT開発プラン「LVTPX3」をスタートさせた。
1947年に完成したLVTPX3の最初の試作車は、片側6個の転輪を持つトーションバー(捩り棒)式サスペンションで懸架された足周りと、3/8インチ(9.53mm)〜3/4インチ(19.05mm)厚の圧延鋼板の溶接構造車体を持つ大型のLVTで、ジェネラル・モータース社の子会社である、インディアナ州インディアナポリスのアリソン変速機製のV-1710-E32
V型12気筒液冷ガソリン・エンジン(出力850hp)と、M26パーシング中戦車用の900F2トルクマティック式変速機(前進3段/後進1段)、二重差動式操向機でパワープラントを構成していた。
後に、アラバマ州モービルのコンティネンタル発動機製のAV-1790-5B V型12気筒空冷ガソリン・エンジン(出力810hp)と、アリソン社製のCD-850-4クロスドライブ式変速・操向機(前進2段/後進1段)を組み合わせたものにパワープラントが交換され、このタイプの試作車は平坦地での最大速度30マイル(48.28km)/h、最大浮航速度5.5マイル(8.85km)/hの機動性能を発揮した。
LVTPX3の固有の乗員は3名(車長、操縦手、副操縦手)で、車体重量は約24t、人員・貨物の搭載重量は約4.5tに及んだ(1950年に完成した試作車)。
これは、大戦時に開発されたLVTよりも相当に大きな能力を持つものといえた。
また、大型ながら全密閉式のスマートな外観は、戦時中のLVTとは全く一線を画したものだった。
しかしながらLVTPX3は、1950年まで試作車の改良が行われたが結局採用には至らなかった。
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