+概要
レオパルト2戦車シリーズの生産メーカーである、ミュンヘンのKMW(クラウス・マッファイ・ヴェクマン)社は、レオパルト2A5戦車の市街戦への対応能力を強化した、レオパルト2PSO(Peace
Support Operations:平和支援活動)戦車を自己資金で開発し、2006年6月にフランスで開催された兵器展示会「ユーロサトリ2006」で発表している。
当時の最新型であるレオパルト2A6戦車ではなくA5型をベースにしたのは、A6型が装備する55口径120mm滑腔砲の長い砲身が、市街地での活動において邪魔になるためではないかと推測される。
レオパルト2PSO戦車の外見で最も目を引くのは、ドイツ陸軍のレオパルト2戦車シリーズに採用されているグリーン、ブラウン、ブラックの3色迷彩に代えて、市街地用の3色迷彩が施されている点である。
これはグリーン、サンドイエロー、ホワイトの長方形パターンを組み合わせた独特のもので、市街地の建造物や瓦礫に溶け込んで視認性を低下させる効果がある。
レオパルト2PSO戦車は防御力を強化するために、車体前面上部、砲塔左右側面後部、サイドスカートに増加装甲が装着されており、機関室周辺の開口部には火炎瓶対策のメッシュ装甲が追加されている。
車体前部には、瓦礫やバリケード等を除去するためのドーザー・ブレイドが装着されている。
このドーザー・ブレイドは、車体前面を保護する増加装甲としての役割も兼ねており、4分割式になっているため必要に応じてサイズを変更することも可能である。
また視察能力を強化するため、車長用キューポラの後方に360度の視察が可能なマスト式サイトが装備されており、従来装備されていた車体後面の監視カメラに加えて、車体左右側面にも監視カメラが追加装備されている。
装填手用ハッチの後方には、車内から遠隔操作できるKMW社製のFLW200武装ステイションが装備されており、7.62mmおよび12.7mm機関銃や、40mm自動擲弾発射機を搭載することができる。
主砲防盾上の砲手用補助サイトの左側には小型のサーチライトが追加装備されているが、これはレオパルト2A5戦車のデンマーク陸軍仕様である、レオパルト2A5DK戦車に装備されているのと同じもので、敵対的な態度を取る群衆や敵歩兵に向けてサーチライトを照射して威嚇し、戦意を喪失させるためのものである。
この方法は、ユーゴスラヴィア内戦におけるPKO活動で高い効果を示したといわれている。
これらの改良によって、レオパルト2PSO戦車はオリジナルのレオパルト2A5戦車(戦闘重量59.7t)よりかなり重量が増加し、70t近くに達しているといわれる。
これに対応して、レオパルト2PSO戦車では足周りも強化が図られており、起動輪と履帯が新型のものに換装され、トーションバーとブレーキも改良されている。
またユーロサトリ2006で公開された車両では、従来レオパルト2戦車シリーズに搭載されていたパワーパック(フリードリヒスハーフェンのMTU社(Motoren
und Turbinen Union:発動機およびタービン連合企業)製の、MB873
Ka-501 V型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジンと、アウクスブルクのレンク社製のHSWL354/3自動変速・操向機の組み合わせ)に代えて、MTU社製のMT883
V型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジンと、レンク社製のHSWL295自動変速・操向機を組み合わせたユーロ・パワーパックが搭載されていた。
ユーロ・パワーパックは、かつて旧西ドイツ陸軍が「Pzkw.2000」(Panzerkampfwagen 2000:2000年代型戦車)の呼称で、1980年代に開発を進めていた新型MBT(主力戦車)への搭載を前提に開発されたもので、レオパルト2戦車のパワーパックに比べて非常にコンパクトに設計されているため多くのMBTに搭載することができ、イスラエルのメルカヴァMk.IV戦車やイギリスのチャレンジャー2E戦車、フランスのトロピック・ルクレール戦車に採用されている。
MT883エンジンは、MB873エンジンと同じ1,500hpの出力を発揮するが重量は600kgも軽く、排気量もMB873エンジンの47.6リットルに対して、MT883エンジンは27.4リットルと大幅に小さく燃費効率が大きく向上している。
レオパルト2PSO戦車は、ユーロ・パワーパックを搭載したことで機関室のスペースに余裕ができたため、余ったスペースに容量約400リットルの増加燃料タンクを搭載しており、航続距離が大きく延伸している。
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