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+概要
オランダ陸軍は1970年代後期に、当時運用していたイギリス製のセンチュリオン中戦車369両と、フランス製のAMX-13軽戦車130両の後継として、西ドイツ製のレオパルト2戦車を導入することを決め、1979年3月2日に第2生産バッチのレオパルト2A1戦車と同じ仕様の車両を、「レオパルト2NL」(”NL”はNederland:オランダの略)の呼称で445両発注した。
これらは、西ドイツのクラウス・マッファイ社(現クラウス・マッファイ・ヴェクマン社)と、MaK社(Maschinenbau Kiel:キール機械製作所、現ラインメタル・ラントジステーム社)で生産されたが、コンポーネントの60%はオランダ企業が生産を担当した。
レオパルト2NL戦車の引き渡しは1982年7月から開始され、1986年7月までに全車がオランダ陸軍に納入された。
オランダ陸軍は、レオパルト2NL戦車以外にレオパルト2操縦訓練戦車20両と、レオパルト2戦車ベースの「ビュッフェル」(Büffel:水牛)戦車回収車25両も導入している。
レオパルト2NL戦車は、基本的には西ドイツ陸軍のレオパルト2A1戦車と同じ車両であったが、発煙弾発射機や操縦手用の暗視装置付きペリスコープ、無線機などをオランダ製のものに変更しており、車載機関銃も西ドイツのラインメタル社製の7.62mm機関銃MG3から、ベルギーのFN社製の7.62mm機関銃FN-MAGに変更していた。
また後に、ドイツのディール社製の570FT履帯への換装、砲塔左側面の給弾用ハッチの廃止、主砲への砲口照合装置の追加など、ドイツ陸軍のレオパルト2A4戦車と同じ仕様に改修されている。
後にドイツ陸軍が「KWS」(Kampfwertsteigerung:戦闘能力向上)と呼ばれる、レオパルト2戦車の近代化改修を計画した際、レオパルト2戦車を運用していたオランダ陸軍とスイス陸軍もKWSの開発に参加した。
最初に実用化されたKWS-IIは、主に装甲防御力の向上に重点が置かれた改修計画で、特に砲塔前面の装甲を強化することが主眼となっていた。
ドイツ陸軍はレオパルト2戦車にKWS-IIを導入した車両を、「レオパルト2A5」の呼称で制式採用し、保有するレオパルト2戦車の内350両をA5型に改修した。
オランダ陸軍も、保有するレオパルト2NL戦車の内230両をA5型に改修し、改修車には「レオパルト2A5NL」の呼称を与えた。
1991年末にソヴィエト連邦が崩壊したことで東西冷戦が終結したため、オランダ陸軍は戦車の定数を削減することになり、残りのレオパルト2NL戦車の内114両が、1993年1月にオーストリア陸軍に売却されている。
一方、レオパルト2戦車の攻撃力を強化する近代化改修の研究も継続され、主砲を55口径120mm滑腔砲に長砲身化するKWS-Iと、ラインメタル社が新規開発した140mm滑腔砲NPzK-140に換装するKWS-IIIの、2種類の改修プランの試作車が既存のレオパルト2戦車を用いて製作され、性能試験が実施された。
140mm滑腔砲は、装甲貫徹力で55口径120mm滑腔砲を上回っていたが、大重量の140mm砲弾を人力で装填するのは困難なため、自動装填装置もしくは装填補助装置を導入する必要があり、改修コストが高騰した。
東西冷戦の終結により、140mm滑腔砲の必要性が薄れたこともあって、最終的に、55口径120mm滑腔砲を搭載するKWS-Iが採用されることになり、ドイツ陸軍はこの改修を実施したレオパルト2戦車に、「レオパルト2A6」の制式呼称を与えた。
ドイツ陸軍では、KRK(Krisenreaktionskrafte:危機対応部隊)に所属する225両のレオパルト2A5戦車を、2001~07年にかけてA6規格に改修した。
オランダ陸軍も、保有するレオパルト2A5NL戦車の内188両をA6型に改修し、改修車には「レオパルト2A6NL」の呼称を与えて、2003年2月から運用を開始した。
しかし、東西冷戦の終結と政府の財政難から、オランダ陸軍の戦車定数は年々削減されていった。
2008年にはポルトガル陸軍に37両のレオパルト2A6NL戦車、2009年にはカナダ陸軍に100両のレオパルト2NL戦車が売却されている。
こうして2010年の段階で、オランダ陸軍の戦車定数はレオパルト2A6NL戦車60両にまで規模が縮小された。
さらに2011年4月に、オランダ政府は深刻な財政難のため、軍隊の規模を大幅に縮小することを決定し、オランダ陸軍は同年5月に戦車部隊を廃止し、保有するレオパルト2A6NL戦車を全て海外に売却することになった。
当初はインドネシア陸軍への売却が予定されていたが、オランダ議会の反対によりこれは実現しなかった。
その後ペルー陸軍が、オランダ陸軍のレオパルト2A6NL戦車の購入を一時検討したがこれは見送られ、最終的に2014年に、フィンランド陸軍に100両のレオパルト2A6NL戦車を売却することが決定した。
フィンランド陸軍への納入は2015~2019年にかけて実施されたが、その後オランダ政府は、最低限の戦車を保有する必要があると考えを改め、ドイツ陸軍から18両のレオパルト2A6戦車をリースし、ドイツ・オランダ合同第414戦車大隊で運用している。
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レオパルト2NL戦車
全長: 9.67m
車体長: 7.72m
全幅: 3.70m
全高: 2.79m
全備重量: 55.15t
乗員: 4名
エンジン: MTU MB873Ka-501 4ストロークV型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 1,500hp/2,600rpm
最大速度: 68km/h
航続距離: 340km
武装: 44口径120mm滑腔砲Rh120×1 (42発)
7.62mm機関銃FN-MAG×2 (4,750発)
装甲: 複合装甲
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レオパルト2A5NL戦車
全長: 9.67m
車体長: 7.72m
全幅: 3.76m
全高: 3.03m
全備重量: 59.5t
乗員: 4名
エンジン: MTU MB873Ka-501 4ストロークV型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 1,500hp/2,600rpm
最大速度: 68km/h
航続距離: 340km
武装: 44口径120mm滑腔砲Rh120×1 (42発)
7.62mm機関銃FN-MAG×2 (4,750発)
装甲: 複合装甲
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レオパルト2A6NL戦車
全長: 10.97m
車体長: 7.72m
全幅: 3.76m
全高: 3.03m
全備重量: 61.7t
乗員: 4名
エンジン: MTU MB873Ka-501 4ストロークV型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 1,500hp/2,600rpm
最大速度: 68km/h
航続距離: 340km
武装: 55口径120mm滑腔砲Rh120-L55×1 (42発)
7.62mm機関銃FN-MAG×2 (4,750発)
装甲: 複合装甲
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参考文献
・「世界の戦車イラストレイテッド24 レオパルト2主力戦車
1979~1998」 ウーヴェ・シネルバッハー/ミヒャエル・
イェルヒェル 共著 大日本絵画
・「グランドパワー2006年1月号 LEOPARD2A6NL 2A5NLから2A6NLへの改修工程を見る」 一戸崇雄 著
ガリレオ出版
・「グランドパワー2006年6月号 レオパルト2A5NL:マニュアル」 一戸崇雄 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2005年4月号 レオパルト2
(3)」 一戸崇雄 著 ガリレオ出版
・「パンツァー2012年2月号 輸出によってバリエーションが増す最近のレオパルト2戦車」 アルゴノート社 ・「パンツァー2020年1月号 特集 レオパルト2配備40周年(2)」 竹内修/藤井岳 共著 アルゴノート社
・「パンツァー2011年2月号 レオパルト2 その30年に渡る発展の軌跡(1)」 竹内修 著 アルゴノート社
・「パンツァー2011年3月号 レオパルト2 その30年に渡る発展の軌跡(2)」 竹内修 著 アルゴノート社
・「パンツァー2014年2月号 世界に拡散するレオパルト2戦車」 荒木雅也 著 アルゴノート社
・「パンツァー2000年2月号 最初の第3世代MBT レオパルト2」 小林直樹 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年9月号 オランダ軍AFVの半世紀」 城島健二 著 アルゴノート社
・「パンツァー2016年10月号 オランダ軍のレオパルト2戦車」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021~2022」 アルゴノート社
・「戦車ものしり大百科 ドイツ戦車発達史」 齋木伸生 著 光人社
・「新・世界の主力戦車カタログ」 三修社
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